金:米大統領選挙無難通過で調整安➁|【Weekly Report】週間予定
2024年11月18日
週間展望(11/18~11/24)
このページで知れること(目次)
週間予定:植田日銀総裁の講演、エヌビデア決算、小米集団・百度決算
前週:大統領と上下両院を共和が占める「トリプルレッド」
ドル円:次期財務長官が誰になるのか?新政権の為替政策に注目
金:米大統領選挙無難通過で調整安
【米小売り売上高】
【NY州製造業指数I】
金ETF
週間予定:植田日銀総裁の講演、エヌビデア決算、小米集団・百度決算
・植田日銀総裁の講演・質疑応答 12月利上げ観測一段と高まる中、ドル円反転のきっかけとなるか否か
・英消費者物価指数、タカ派マン英中銀委員の講演 ラムスデン副総裁が金融政策について講演
・豪中銀議事録とブロック総裁の講演 豪中銀はインフレ上振れリスクに引き続き警戒姿勢
・ラガルド総裁らECB当局者の講演 ユーロ圏妥結賃金や製造業PMI、ECB金融安定報告
・米半導体大手エヌビディアの決算 世界的な生成AI(人工知能)ブームを牽引する同社は20日、2024年8〜10月期決算を発表予定
前週:大統領と上下両院を共和が占める「トリプルレッド」
【トリプルレッド】
接戦と報道されていた米大統領選挙は、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が圧勝した。激戦7州全てがトランプ氏の勝利となった。全米で獲得した選挙人の数が固まり、初当選した2016年に獲得した選挙人の数を上回った。
米主要メディアで報じられてきた「ハリス旋風」なるものは虚構だったと明らかになった格好だ。トランプ氏が大統領になることを恐れたエリート層が「ハリス旋風」を引き起こしたとも言えるが、外交・安全保障に関して「この人に外交や核のボタンを委ねても大丈夫なのだろうか?」という米国の根本を揺るがしかねない強い懸念もハリス回避の一因だっただろう。
他方、トランプ氏を支持する人々の大多数は庶民層だ。米国の国力低下と社会的分断の拡大から「このままだと私たちは生き残れなくなる」という多くの米国人が抱く潜在的な不安・危機感が、政治エリートではないトランプ氏への投票を促した。
また、11月5日の米大統領選と同時実施された連邦議会選で上院に続き、下院でも共和党が多数派となるのが確実になった。 大統領職と上下両院の多数派を共和が占める「トリプルレッド」となる。
下院は2年ごとに全議席を改選する仕組みで、共和が25年1月開会の新議会でも多数派を維持する。米CNNによると、米東部時間13日午後3時半時点で共和が過半数となる218議席に達した。
上院(定数100)は共和が4年ぶりに多数派を奪還。上院議員の任期は6年間で、今回は3分の1の改選と補選1議席の合計34議席を争った。
トランプ銘柄の一つである暗号通貨(ビットコイン)は、過去最高値を更新中だ。昨年末比で10割高と、2割高の世界株(MSCI)や、3割高の金を上回る。暗号資産(仮想通貨)全体の時価総額も12日、過去最大となった。
ドル円:次期財務長官が誰になるのか?新政権の為替政策に注目
【今週見通し・戦略】
米大統領と上下両院を共和党が支配する「トリプルレッド」が確実となったことで、 トランプ次期大統領が減税や関税の引き上げなどの政策を実現しやすくなるとの見方が広がり、米インフレ加速が警戒されて、米10年債利回り上昇。トランプトレードが続くとみられ、ドル高、米株高、米長期金利高となっている。ドル円は156円台に乗せている。
4月に本邦当局が為替介入に動いたのが157〜160円台と見られ、「介入警戒ライン」が意識され始めている中、「行き過ぎた動きには適切に対応する」。加藤勝信財務相は15日午前の閣議後記者会見で発言した。
ただし、介入には米当局との連携が不可欠で、政権移行期で介入を実行し難いと見られることも口先介入が効かない一因だ。
為替報告書
米財務省は14日、半期ごとの外国為替政策報告書を公表した。為替操作をしていないか注視する「監視リスト」に日本を引き続き含めた。リスト入りの基準としている3条件のうち、国内総生産(GDP)比3%以上の経常黒字と大幅な対米貿易黒字の2つが該当した。日本のほか、中国、韓国、シンガポール、台湾、ベトナム、ドイツがリスト入りした。前回からマレーシアが抜け、韓国が新たに加わった。制裁の検討対象となる「為替操作国」はなかった。
トランプ氏は第1次政権時代を含めて、大統領選挙中も円安牽制発言(4月:円安は大惨事だ。7月円と人民元は、信じられないほど乖離している)を繰り返してきた。安い輸入品から自国産業を守る観点から、ドル安志向とみられている。
トランプ政権になれば、インフレ圧力が高まるとの見方から、米金利が高止まりし、円安ドル高が進むと言うのが足元の市場コンセンサスだが、トランプ次期大統領の発言次第で、ドル円の反転リスクがある点には注意したい。次期財務長官が誰になるのか?新政権の為替政策に注目したい。 テクニカル面からは、200日移動平均線の攻防が焦点。
金:米大統領選挙無難通過で調整安
【今週見通し・戦略】
米大統領選と同時実施された連邦議会選で上院に続き、下院でも共和党が多数派となるのが確実になった。大統領職と上下両院の多数派を共和が占める「トリプルレッド」となったことで、トランプトレード加速から、金相場は調整継続となった。
これまで、金とビットコインは、既存通貨に対する代替資産として、値動きの相関が高まる時期と、代替資産同士の中での資金シフトで逆相関の動きとなるケースがあったが、足元はトリプルレッドを受けて、ビットコインに金から資金が流れている(11/15付け「市場分析レポート」参照)。
ただし、証券化した商品(金価格)ではなく、実物としての金へのニーズも大きく、過去の経験則通り、トランプトレードで急速に走り過ぎたポジションの巻き戻しには注意したい。
調整安の目途
NY金(12月限)は、ダブルトップをネックライン(10/10安値)割れで完成。現段階で、チャート上の底打ちパターンは確認できない状況だ。
6月安値~10月高値までの上昇に対する61.8%押し(2522.5ドル)水準は、価格帯別出来高の厚い下値支持だ。200日移動平均線~同水準への押し目形成時に、出来高を伴って長い下ヒゲや長大陽線などで引けると、買いのタイミングとなる可能性もありそうだ。
日柄からは、金相場が安値の節目を付けやすい満月が11月16日。メリマンの重要変化日は、11月15~18日。一目均衡表(基本数値・対等数値)から、変化の起こりやすいのは、11月19日・20日、12月4日・12日・16日などだ。JPX金は、9月安値~10月高値までの上昇に対する38.2%押し(12903円)達成。半値押しは12620円、61.8%押しは12337円。
【米小売り売上高】
【NY州製造業指数】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。