「未熟な金」のお話 | 【公式】日産証券の金投資コラム

「未熟な金」のお話

2023年9月19日

 

ピント川の小さな銀?それとも未熟な金?

17世紀、南米コロンビアでスペイン人のウロアという人がピント川近くで、銀のように白色をしていながら錆びない金属を発見しました。スペイン語で銀のことをplata(プラタ)と呼び、これに縮小詞を付けてplatina(プラチナ)と呼びました。platina del pinto(ピント川の小さな銀)と呼び、これが現在のプラチナの語源だと言われています。

 

プラチナはまた「未熟な金」とも呼ばれました。昔、科学が発達していない時代には、プラチナは「金になる途中の物資」と考えられたためです。その後、メンデルの周期律表が出ると別の金属と認められるようになり、今ではパラジウムなどと一緒に「プラチナ族」と認定されています。

 

プラチナの比重は21.4。金の19.3より重く、貴金属では最も重いものです。精錬期間も金(約1週間)の8倍の約8週間を要します。かつては金より高く取引されていましたが、近年、金に人気を奪われ、価格面では金を大きく下回っています。

 

プラチナは化学工業の触媒に多く使われ、主な需要は「工業用素材」として扱われています。最近では水素エネルギーのために欠かせない素材としても注目されています。一方、装飾品としては、色が金に比べて地味なうえ融点が高く、加工しにくいことで扱いにくいという面があるそうです。それでもエジプト古代王朝の第25王朝(紀元前720〜659年)に作られたといわれる小箱に大半が銀ですが一部にプラチナが使われているものがあり、現在、ルーブル美術館に飾られています。

 

そんなプラチナが日本では「ジュエリー」として扱われ、結婚指輪などによく使われています。そのきっかけとなったのが「戦前の芸者さん」という説があります。芸者さんは歳をとって色香がなくなると老後が不安になります。

 

そこでお座敷につけて出たときに派手な金より地味なプラチナのジュエリーを旦那にねだった。そうしたプラチナジュエリーが上流婦人の間で人気となり、プラチナの指輪が好まれるようになったというものです。ワビ、サビを好む日本人には「金よりプラチナ」の方がジュエリーとして肌に合っていると考えている人も多いようです。

 

そう考えると、現在、プラチナの価格が金よりも安くなっているのは日本の長期に渡る景気低迷で日本の「ジュエリー需要」が落ち込んでいるのも一因かもしれません。

新たな需要が見込める稀有な貴金属

新たな需要が見込める稀有な貴金属

しかしながらいまでも工業用資材として、化学工業で触媒や自動車の排気ガスの除去などに使われています。2023年6月下旬に中国上海で開催された「上海プラチナウィーク」では将来のプラチナ需要に影響を与えそうなものとして、持続可能な航空燃料(SAF)や中国の自動車生産見通し、燃料電池のプラチナ触媒などが紹介されました。

 
カーボンニュートラル

SAFとは、植物由来の原料を基にジェット燃料を生産し、燃焼後には二酸化炭素と水蒸気は植物が再び吸収するのでカーボンニュートラル可能な燃料です。現在生産されているSAFは微量ですが、国際航空運送協会(IATA)は、航空業界がネットゼロを実現するには2050 年までに年間3 億6000 万トンに達しなければならないとしています。

 

研究によるとこれには186.6トンものプラチナ触媒が必要とのことです。SAF生産拡大を支えるプラチナ需要は2030年代には5.3トン~11.1トンとなるとしています。

 

自動車産業 に関しては、上海の同済大学の発表によると、中国の自動車生産は現在の約3000 万台から、2030 年までには4500 万台に増え、2040 年には4500 万台~6000 万台になるとしています。

 

この実現には自動車メーカーも増えなければなりませんが、この数字は、ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)が従来3500 万台がピークとする推測を大きく超えており、高い方の数字を使って中国の自動車のプラチナ需要の予想を調整すると、WPICのベースケース予測よりも、6.2 トン〜9.3 トン多い計算になります。

 

WPICが今年公表したレポートによると、ここ数年、中国のプラチナ輸入量が同国の想定される需要を大きく上回り、世界の余剰在庫が同国に集中しているのではとの指摘がありましたが、中国ではプラチナの将来的な需要を見越しての備蓄が始まっているのかもしれません。

 
水素が次世代エネルギー

燃料電池の触媒に関して、国際水素エネルギー燃料電池協会(IHFCA) のプレゼンテーションに使われた詳細な予測によると、2030 年までに普通乗用車の燃料電池に使われるプラチナ触媒は 0.125 g/kW でした。

 

一方、大型車の燃料電池は技術改良がほぼ終わるとし、使われるプラチナ触媒の予測は 0.25g/kW でした。それぞれWPICの予測と比較すると、普通乗用車(WPIC予測0.11g/kW)は多く、大型車(同0.41g/kW)はかなり少ないというものでした。

 

IHFCA の両方の予測値を合わせると、燃料電池自動車のプラチナ需要は2030 年にはWPICのベースケース予測よりも約5.9 トン少ないことになります。

 

ただし、こうした新たな需要も生産コストの削減が普及のカギとなります。コスト削減にはより効率化して触媒のプラチナ使用量を減らすということも含まれますが、プラチナは生産国が南アとロシアで世界全体の7割以上を占め、生産量も年間200万トン程度と金の10数分の1と少ないです。

 

需給バランスは常に不安定になりやすい貴金属ですので、きっかけがあれば価格が再び金を上回る時代が来るかもしれません。

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