金の機能、価値の保全について | 【公式】日産証券の金投資コラム

金の機能、価値の保全について

2023年8月21日

 

今回は金の持つ特徴のひとつである「価値の保全」機能について、iPhoneを例にして紹介したいと思います。

 

現在では、ほとんどの人が利用しているスマートフォン。その中で代表的な製品のひとつがアップル社のiPhoneシリーズですが、米国で販売が開始されたのは2007年、日本では2008年に3Gから販売が開始されました。今年の秋、早ければ9月にもiPhone15が発売されると噂されている人気シリーズです。その過去の販売価格について、日米発売開始時の販売価格とその月末の金価格をもとにどのくらいの量の金があれば、最新のiPhoneが購入できていたか(iPhone/Goldレシオ)を調べてみました。それをまとめたものが表になります。

 
iPhone/Goldレシオ 米国&日本

まず、米国から見ますと、開始の2007年iPhoneは599ドルでした。

 

この金額は当時のレートでは金0.92トロイオンス(1トロイオンス=31.1035グラム)に相当しました。その翌年発売のiPhone3Gは100ドル値上がりの699ドル。この価格は2010年のiPhone4まで3シリーズ据え置かれました。その間の金必要量は0.56~0.75トロイオンスでした。その後4S~2016年の7まで6シリーズが849ドルで固定されました。2010年から比べると150ドルの値上げでしたが、この間の金必要量は0.48~0.74トロイオンス、平均すると0.53トロイオンス。これは2008年~2010年までの0.68トロイオンスよりも少なく、金を通貨として見ると、実質値下げといえます。

 

米国での販売価格はその後、2020年の12Proの値下げ(50ドル)を除き、据え置きまたは値上げで昨年2022年発売の14Proの価格は1499ドル、シリーズ開始の2007年から比較すると価格は900ドル、率で150%上昇の2.5倍の価格になりました。

 

しかし、表にあるとおり、2018年に唯一金の必要量が1トロイオンスを越えましたが(1.13トロイオンス)、その年を除くと発売開始時の2007年の0.92トロイオンスを上回ることはありませんでした。平均で0.75トロイオンス、最新の2022年では0.87トロイオンスでした。

 

7月中旬現在、ネット等で今年発売の15の予想発売価格が出始めていますが、100ドル程度の値上げ予想が有力視されているようです。現在の金価格1950ドルで計算すると、0.82トロイオンス程度と想定されます。金必要量は平均よりは多くなりますが、昨年の14よりは多少少なく済みそうです。金1トロイオンス持っていれば、いつの時代でも最新のiPhoneを購入できる。それは今年も当てはまりそうです。

 
金1トロイオンス持っていれば、いつの時代でも最新のiPhoneを購入できる

一方、国内販売を見てみますと、日本は2008年の3Gからとなりますが3Gの発売価格は23040円でした。当時の米国価格が699ドル、ドル円レートが1ドル108円台だったことを考えると、日本向け新製品投入ということでかなり割安な価格での発売開始に見えます。翌年発売の3GSは69120円へと一気に3倍近くに値上げしました。その後、2011年に戦後の円の最高値を付けるまで円高ドル安が進行したことで日本の販売価格は値下がりする年もありましたが、2022年の14Proは149800円にまで上昇しています。発売開始の2008年は例外としても2010年、2011年の46080円と比較して率で225%の値上がり、3倍以上の価格に上昇しています。

 

3倍以上の価格になったとはいえ、14Proの日本の販売価格は、1ドル140円で計算すると1000ドルちょっと。米国の販売価格の1499ドルと比べると3割以上割安設定で海外の方は日本で買う方が割安ということになります。

 

コロナ禍では見られませんでしたが、移動制限が緩和されて海外の旅行客が日本への旅行を再開、インバウンド需要で観光業や小売業が活気づくというニュースの中で、国内のアップルショップで海外旅行客が大量にiPhoneを購入というニュースをご覧になった方も多いのではないでしょうか?

 

では、我々日本に住む日本人はどうしたら安くiPhoneを購入できるでしょうか?もうお分かりですね。先ほどの米国での販売価格を金の必要量で考えるのと同様、日本国内販売価格を金の必要量で計算してみましょう。

これを見ると2008年の7.28グラムは例外としてもおおむね10~25グラムで購入できています。直近の2022年モデルが国内歴代最高値ですが、金の必要量でみると19.39グラム。2008年の国内発売以来の15年間では上から7番目必要量です。近いところでは2015年(20.21グラム)の86800円、2013年(20.43グラム)の85680円よりも若干少ない金の量で購入できました。

これが金を保有することによる価値の保全機能です。金25グラム前後保有していれば、いつの時代でもiPhoneの最新機種を購入できるのです。米国においても若干日本よりは高めの値段設定ですが、1トロイオンス(31.1035グラム)の金を持っていればほとんどの年で最新機種を購入できました。

 

今回はiPhoneを例にしましたが、日本の食糧自給率は40%を下回り、お米以外はほとんど輸入に頼っています。エネルギー自給率は13%でG7の中で最低レベルにあります。円の力が弱まれば加速度的にインフレが高まってもおかしくない国といえます。最近米国では落ち着きを見せ始めたとはいえ、米中対立、新型コロナウイルスパンデミック、ロシアのウクライナ侵攻により、世界中に急速にインフレの波は広がりました。

しかし、その以前から、日本のデフレと世界の安定的な物価上昇で日本と海外との物価格差は広がっていたのです。ただ、日本国内だけで生活しているとその世界との差は感じにくいものでした。

 

現在は、ようやく日本でも物価上昇が現れ始めています。しかし、世界中の金融当局が金利引き上げを行い物価抑制に注力する中、それでもなお日本は安定的に2%を超える物価上昇にしたいという金融当局の真逆の姿勢から、世界で唯一ゼロ金利政策を維持しています、これは、常に円安のリスクは付きまとうということです。通貨下落のリスクのある円に代わりアンカー(錨)役の通貨と呼ばれる金を持つことでインフレ対策、価値保全を実現できるのではないでしょうか。

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