金準備の本国移送の動き再び強まる | 【公式】日産証券の金投資コラム

金準備の本国移送の動き再び強まる

2024年6月10日

 

再び金準備の本国移送が話題に
 
昨年8月に当欄で「各国金準備の本国移送の動き広がる」として、調査会社インベスコが実施した中央銀行、ソブリンウェルスファンド(SWF)を対象にしたアンケートを基にした金準備の本国移送を希望している国が増えていることを紹介しました。
その時の記事では、具体的な国名はほとんど出ず、中央銀行関係者のコメントも匿名がほとんどでしたが、ここにきて金市場で再び金準備の本国移送が話題になっており、エジプト、南アフリカ、ナイジェリア、ガーナ、カメルーン、セネガル、アルジェリア、サウジアラビアを含むいくつかの国は、米国から国家の金準備を引き揚げ始めている、またはその意向を示しているとして具体的な国名が上がっています。
 
中東やアフリカの主要産油国が含まれており、ガーナはアフリカ最大、世界第6位の産金国でもあります。1年前はウクライナに侵攻したロシアに対し、米国をはじめとした西側諸国が経済制裁として、ロシア国外にある外貨準備を凍結するという手段に出たことを目の当たりにして、もしかすると将来は我々の資産も同じ目に?という漠然とした不安が、新興国中心に広がっているというものでしたが、今回はより具体的かつ、より強い意志が働いているようにも見えます。

金を預けるリスクとメリット

金準備を自国に戻すということは、今後、売却する際の手間がかかることになるほか、西側の大国である米国に預けておくという安心感を失うことになります。金準備の本国送還に伴う物流上の課題や潜在的な安全上のリスクが高まることも想定されます。
 
しかしながら、これらの国は金融主権を守り、米国経済に関連する潜在的なリスクへのエクスポージャーを減らすことのメリットが大きいという戦略的判断が働いたと見られます。
これらの国は、金準備を本国に送還することで、資産を差し押さえの可能性から保護し、経済の運命に対するより大きなコントロールを確立することを目指していると考えられます。
 
今後、米国経済がスタグフレーションに突入し、米国政府の負債が35兆ドルに達し、100日ごとに1兆ドル増加することで米国の債務返済能力に対する疑問の浮上している中、BRICSが今年中にも貴金属と商品に裏付けられた通貨を導入すると見込まれていることも、南半球の多くの国が、自国の準備金と主権を守るために、米国から金準備を事前に引き上げ、同時に米国財務省へのエクスポージャーを減らしています。
世界中からの非難にもかかわらず、米国がガザでの大量虐殺を支援し続けていることも、南半球の米国に対する反感を招き、多くの国が不道徳な政権へのエクスポージャーを減らしたいと考えているようです。
 
金現物の西側先進国から東側や新興国への移動の動きは今後ますます強まりそうです。

この記事を読んだ方にお勧めの記事

  • 世界の中央銀行の金準備(買う新興国、売れない先進国)

  • 金の機能、価値の保全について

  • 金のシーズナルトレンド

他ジャンルの最新はこちら

  • スペシャル

    米利下げ開始後も、円建て金は優位性

    6月の米雇用統計を受けて米長期金利が低下。労働市場の需給緩和を示したと受け止められたことに続き、6月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、米利下げ観測の高まりから円高・ドル安が進んだ。

  • 定期レポート

    米国第2四半期GDP・個人消費、6月PCE価格指数 予想上回る小売売上高を受けアトランタ連銀GDPNow上方修正・カナダ中銀政策金利 追加利下げと利下げ一時停止で予想分かれる、インフレ鈍化の一方で賃金の伸びは加速

  • 動画

    円高ドル安傾向の市況の中、現職大統領の撤退表明した米大統領選の市況への影響について解説します。


当サイトのコンテンツは情報提供を目的としており、当社取り扱い商品に関わる売買を勧誘するものではありません。内容は正確性、 完全性に万全を期してはおりますが、これを保証するものではありません。また、当資料により生じた、いかなる損失・ 損害についても当社は責任を負いません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。 当資料の一切の権利は日産証券株式会社に帰属しており、無断での複製、転送、転載を禁じます。

取引にあたっては、必ず日産証券ホームページに記載の重要事項リスク説明等をよくご確認ください。
重要な注意事項についてはこちら