金準備の本国移送の動き再び強まる
再び金準備の本国移送が話題に
昨年8月に当欄で「各国金準備の本国移送の動き広がる」として、調査会社インベスコが実施した中央銀行、ソブリンウェルスファンド(SWF)を対象にしたアンケートを基にした金準備の本国移送を希望している国が増えていることを紹介しました。
その時の記事では、具体的な国名はほとんど出ず、中央銀行関係者のコメントも匿名がほとんどでしたが、ここにきて金市場で再び金準備の本国移送が話題になっており、エジプト、南アフリカ、ナイジェリア、ガーナ、カメルーン、セネガル、アルジェリア、サウジアラビアを含むいくつかの国は、米国から国家の金準備を引き揚げ始めている、またはその意向を示しているとして具体的な国名が上がっています。
中東やアフリカの主要産油国が含まれており、ガーナはアフリカ最大、世界第6位の産金国でもあります。1年前はウクライナに侵攻したロシアに対し、米国をはじめとした西側諸国が経済制裁として、ロシア国外にある外貨準備を凍結するという手段に出たことを目の当たりにして、もしかすると将来は我々の資産も同じ目に?という漠然とした不安が、新興国中心に広がっているというものでしたが、今回はより具体的かつ、より強い意志が働いているようにも見えます。
金準備を自国に戻すということは、今後、売却する際の手間がかかることになるほか、西側の大国である米国に預けておくという安心感を失うことになります。金準備の本国送還に伴う物流上の課題や潜在的な安全上のリスクが高まることも想定されます。
しかしながら、これらの国は金融主権を守り、米国経済に関連する潜在的なリスクへのエクスポージャーを減らすことのメリットが大きいという戦略的判断が働いたと見られます。
これらの国は、金準備を本国に送還することで、資産を差し押さえの可能性から保護し、経済の運命に対するより大きなコントロールを確立することを目指していると考えられます。
今後、米国経済がスタグフレーションに突入し、米国政府の負債が35兆ドルに達し、100日ごとに1兆ドル増加することで米国の債務返済能力に対する疑問の浮上している中、BRICSが今年中にも貴金属と商品に裏付けられた通貨を導入すると見込まれていることも、南半球の多くの国が、自国の準備金と主権を守るために、米国から金準備を事前に引き上げ、同時に米国財務省へのエクスポージャーを減らしています。
世界中からの非難にもかかわらず、米国がガザでの大量虐殺を支援し続けていることも、南半球の米国に対する反感を招き、多くの国が不道徳な政権へのエクスポージャーを減らしたいと考えているようです。
金現物の西側先進国から東側や新興国への移動の動きは今後ますます強まりそうです。