Weekly Report 2023年9月4日(月) | 【公式】日産証券の金投資コラム

Weekly Report 2023年9月4日(月)

NSトレーディング 菊川弘之
2023年9月4日

週間展望(9/4~9/10)

週間予定:中国貿易収支、中国CPI・PPI

【週間スケジュール(9月4日~9月10日)】

8月末に、中国当局が15年ぶりに株式取引にかかる印紙税の引き下げ、9月1日には中国工商銀行など国有銀行が預金金利を引き下げた。中国の景気対策を受けて、中国関連銘柄が動意付いており、今週発表される中国マクロ経済指標や、追加対策の有無に注目したい。


オーストラリア準備銀行(RBA:中央銀行)金融政策会合の結果が5日に発表。

政策金利であるオフィシャルキャッシュレート(OCR)は、現行の4.1%での据え置き見通し。

豪中銀はパンデミックを受けてOCRを同国にとって史上最低金利となる0.1%まで引き下げた後、2022年5月の会合から利上げサイクル を開始。今年3月の会合まで10会合連続で利上げを実施し、3.6%とした後、4月の会合で一度利上げを停止した。


据え置きで見通しがほぼ一致しているため、声明や会見の内容が注目。


今回の会合は2016年9月18日から同中銀総裁を務めているロウ総裁にとって最後の会合。

9月18日からはミシェル・ブロック副総裁が総裁に就任する。



前週:金小売価格初の1g=1万円乗せ

【相対的割安感の解消】

国内金地金 店頭価格

各通貨建ての名目金価格の推移(1980年~年間平均)

金の国内小売価格の指標とされる田中貴 金属工業の店頭販売価格(税込み)が、円建て小売り価格として、初めて1万円台に乗せた。日本では米国が金とドルの交換を停止した71年のニクソン・ショックから間もない1973年4月に金の輸入が自由化され、百貨店などでも地金の販売が始まった。金が投資の対象となり、国際相場に連動して国内価格が変動するようになったのは、最近のことである。


円建て小売り価格が初めて1万円台に乗せたことで、利食いや換金売りの動きも予想されるが、過去の国内価格を振り返ってみると、価格の大台乗せで調整が入るものの、日柄経過と共に利食い・換金売りなどをこなしながら、これまでの抵抗線(1000円刻みの心理的節目)が下値支持線に変化して、次の心理的節目の大台を試す流れが続いている。今回もいずれ、1万円が抵抗から支持線に変わり、上値を試す流れが継続しそうだ。


マーケットでは「大衆は常に負ける」と言われるが、この理由の一つとして、誰しも「心理学的な側面」から損失となる行動を選びやすいという事が挙げられる。その代表例が「アンカー(錨)効果」だ。 「アンカ-効果」とは「最初に得た情報」の印象が強く残り、船がアンカー(錨)で固定されているように思考・判断が「最初に得た情報に」囚われてしまう状態のことだ。


相場の世界で言われる「高値覚え」・「安値覚え」などが代表例。例えば、金相場で1g当たり1000円割れの安値を知っているが故に、1000円以上は高い、2000円以上なんて買える訳はない、などと言っている間に、価格は1万円台になってしまったのが良い例だ。



ドル円:米マクロ経済指標を確認しながらの展開が継続

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)

ドル円と米国10年債利回り(日本時間9/1~9/2)

ドル円は、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演で、金融引き締めを継続する意向を示したのに対して、日銀による金融緩和の継続姿勢が示され、日米金融政策の差から147円台まで上昇したものの、その後は修正の動きとなった。8月の米消費者信頼感指数(CB)が予想を下回り、7月の米雇用動態調査(JOLTS求人件数)が882.7万人と、事前予想の950万人を大きく下回ると、米長期金利の低下とともにドル売りの動きとなった。


8月の米ADP雇用統計が17.7万人となり、事前予想の19.6万人を下回ったことや米第2四半期GDP改定値が+2.1%となり、事前予想の+2.4%を下回ったことで、FRBによる追加利上げへの警戒感が後退して145.56近辺まで下落した。その後、7月の米中古住宅販売成約指数が予想を上回り、PCEデフレータの下げ止まりや新規失業保険申請件数、シカゴPMIなどの改善でドル円は下げ止まった。

インフレ動向を確認していく流れ

前週末のドル円は、8月の米雇用統計で失業率が事前予想、前月より上昇したことを受け、米労働市場の過熱感の緩和を示したと受け止められ、追加利上げ観測が後退。ドル安で反応したものの、非農業部総裁門雇用者数が事前予想、前月を上回ったことや、クリーブランド連銀のメスター演で、「労働市場は需給がより均衡してきたが、依然として強い」と指摘した。インフレ率については「高すぎる」との認識を示し、FRBによる金融引き締めが長引くとの警戒が再燃。雇用統計発表後に低下していた米長期金利が上昇に転じると、ドル円も切り返しの動きとなった。


米マクロ経済指標を確認しながらの展開が継続しそう。上値では本邦介入警戒感が上値を抑え、下値では日米金融政策の差が下値を支えそう。心理的節目145円を中心とした保合い形成から放れ待ちへ移行しそうだ。



金:円建て金の優位性が継続

【今週見通し・戦略】

JPX金(週足)とNY金(週足)とドル円(週足)

金現物と米国10年債利回り(日本時間9/1~9/2)

先週のNY金相場は、予想以下の米経済指標によるドル安を受けて堅調となった。

JPX金先限は上場来高値を更新した。国内現物小売価格は、史上初めて1g=1万円乗せとなった。


8月の米消費者信頼感指数(CB)、7月の米雇用動態調査(JOLTS求人件数)、8月の米ADP雇用統計、米第2四半期GDP改定値などが軒並み弱気の数字となり、米追加利上げへの警戒感が後退したことを好感した。


前週末のNY金(12月限)は、小幅に反発した。8月の米雇用統計で失業率が事前予想、前月より上昇したことを受け、米労働市場の過熱感の緩和を示したと受け止められ、追加利上げ観測が後退。ドル安から金買いの動きが強まった。

ただ、非農業部門雇用者数が事前予想、前月を上回ったことや、クリーブランド連銀のメスター総裁の講演(インフレ率については「高すぎる」との認識を示した)ことで、米金融引き締めが長引くとの警戒が再燃。雇用統計発表後に低下していた米長期金利が上昇に転じると、金の上値が抑えられた。

相対的な割安感が是正

2022年10月に151円台まで円安ドル高が進んだ際に、国際相場(ドル建て金)は下落したが、国内金相場(円建て金)は、円安が海外安を相殺して上昇した。一方、ドル円が調整した(円高ドル安)場合も、円高を海外金相場高が相殺して、国内金相場は堅調を続けている。海外金相場がドル高を嫌気して下落しても、反対に円高ドル安が進行しても、国内金相場(円建て金)は崩れず、上昇を続ける優位性を見せている。足元は円建て金が強く、高過ぎると感じるかもしれないが、長い歴史の中では、円建て金の相対的な割安感が強い。この長期的な割安感の調整が起きているため、円建て金の優位性は、しばらくは継続しそうだ



【米雇用統計】

米国 非農業部門雇用者数と失業率



【米ISM製造業指数】

IMS製造業PMI



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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