そもそも金ってどんなもの?
ここでは改めて金の性質についてみていきましょう。
意外と「へー、そうなんだ」があるかもしれませんよ。
特徴その①
永遠の輝き
化学的にはすべての金属中、最も安定した金属で、空気中や水中において酸化・腐食せず、高熱で加熱・溶解してもその性質は変わりません。王水(濃塩酸3:濃硝酸1の比率の混合液)、シアン化カリウム、水銀以外には、酸にもアルカリにも反応しません。
特徴その②
比重が高い
金の比重は19.32です。1kgバーの大きさは小ぶりなスマホ程度(重量150グラム前後)です。そのサイズで1リットルの牛乳パックとほぼ同じ重さになります。同じ金属の銀の比重は10.5ですから、同じ大きさの銀と比べても金は約二倍の重さになります。実際に持つとずっしりと重く感じられると思います。
特徴その③
柔らかく加工がしやすい
金は極めて柔らかく、金属の中でも最も展延性に優れ、1gの金からほぼA1のポスターサイズの金箔が作れるそうです。日本でも古くから金粉や金箔を使った工芸品が作られてきました。又、1gの金を伸ばすと約三キロメートルの長さの金糸になるそうです。
優れた柔軟性は細工や加工がしやすい反面、柔らかすぎるため、銀や銅などと合金化してから使用されることが多いです。「18金(18k)のジュエリー」とは、純金(24K)に対し純度 18/24 つまり75%の純度の金ジュエリーという意味です。金は比較的割り金(わりがね)の色の影響を受けやすいため、割り金の配合によって同じ18金でありながらピンクゴールドやホワイトゴールドなど、デザインだけでなく色の違いを楽しむジュエリーも開発されています。
特徴その④
電気を通しやすい
金は電気抵抗が低いという特性などから電気を効率よく通す事ができます。そのため携帯電話やパソコンの回路など電気を通す必要のある機械に用いられることも多く、オーディオ機器、電子製品など様々な製品の中で金が使用されています。
特徴その①や特徴その②を主な理由として古より金は貨幣として利用されてきたことは前回までのコラムでも紹介しましたが、特徴その③、特徴その④が示す通り、金は宝飾品に限らず、今日では各種製品の加工原材料としても利用されています。こうした製品のメーカーからすると金は優れた原材料(コモディティ)のひとつと見られます。
従って金は投資家や中央銀行から見ると、資産保全や外貨準備といった代替通貨の役割を持ちますが、電子機器メーカーや宝飾品加工メーカーから見ると、金は優れた原材料ということになります。金は代替通貨という側面とコモディティという側面を併せ持つ稀有な貴金属ということができます。
さらに、酸化・腐食せず、高熱で加熱・溶解してもその性質が変化しないという特徴は、再生利用(リサイクル)もしやすいということも特徴の一つに加えてもよいかもしれません。およそ1トンのスマートフォンや携帯電話の廃材から回収する金はおよそ300グラムにもなり、別名「都市鉱山」と呼ばれたりもします。日本はこの分野の技術は世界一と言われ、コロナパンデミックにより1年延期されましたが、東京2020オリンピック、パラリンピックで渡される約5000個のメダルはすべてこの都市鉱山から回収された金(約32Kg※)、銀(約3,500Kg※)、銅(約2,200Kg※)を材料に作られたそうです。