円建て金は、グランビルの買い法則③|【Weekly Report】週間予定
2024年4月30日
週間展望(4/29~5/5)
このページで知れること(目次)
週間予定:米FOMC、米雇用統計
前週:34年ぶり円安ドル高水準
ドル円:覆面介入実施か?
金:円建て金は、グランビルの買い法則③
【先物市場が織り込む利上げペース】
【米PCE】
金ETF
週間予定:米FOMC、米雇用統計
・1日はFOMC
・米雇用統計 前回雇用者数は30.3万人増と予想上回る強い伸び、失業率は改善。
・日銀議事録 3月会合ではマイナス金利解除し17年ぶりに利上げに踏み切った。野口・中村委員の2人は反対した。
・ユーロ圏消費者物価指数 コアは前回から伸び鈍化する見通し。
・豪小売売上高 CPIが総じて予想を上回ったことから年内の利下げ観測が消滅している。7日に豪中銀政策金利
前週:34年ぶり円安ドル高水準
【覆面介入か?】
日本がGW休場中の29日の外国為替市場のドル円は、一時1ドル=160円台を付けた。1990年4月以来約34年ぶりの高値。
日銀金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定したことで、低金利の状況が当面続くとの見方が広がった。
その後の記者会見で、何らかの牽制があるのではないかと一部で見られていたものの、植田和男総裁が円安について、「基調的な物価上昇率に大きな影響は与えていない」と述べ、現時点で無視できる範囲かと問われると「はい」と言及したことで、円安を理由にした追加的な利上げの時期は遠いとの見方が拡大。
これに対して、FRBが物価上昇(インフレ)の動向を見極めるうえで重視している米商務省が発表した3月の個人消費支出(PCE)物価指数は、前年同月比2.7%上昇で、伸び率が前月(2.5%)を上回った。インフレ圧力の根強さが示されたことで、米利下げ開始時期が遅れるとの見方が強まっており、介入するのではないかと見られていた150円でもノックアウトオプション絡みで注意されていた155円でも介入は見送られ、買い方有利な介入催促相場のような展開となっていた。
そうした中、日本がGWで休場の29日の外国為替市場のドル円は、急反落。160円台から154円台へ一気に下落した。財務省の神田真人財務官は「為替介入の有無について申し上げることはない。ノーコメントだ」と話した一方、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)電子版は為替介入があったようだと報じた。
ドル円:覆面介入実施か?
【今週見通し・戦略】
ドル円は、23日には米4月製造業・サービス業PMI速報値がともに市場予想を下回り、製造業PMIは49.9と好不況の境目である50を下回ったことや、一部報道で日銀が円安加速の影響を議論すると報じられたことで、154台まで下落したものの、売り一巡後はすぐに元の水準に戻している。
日銀金融政策決定会合では、金融政策の変更はなかった。政策金利を維持した上、国債買い入れ額の縮小も見送ったことで、円安ドル高が加速。植田日銀総裁は記者会見で「2025、26年度の消費者物価、おおむね2%程度で推移と予想」「消費者物価の前年比、2024年度が前回見通しから上振れ」「当面、 緩和的な金融環境が継続すると考えている」「基調的な物価上昇率が上昇なら、緩和度合いを調整していく」「金融政策は為替を直接のコントロールの対象にしていない」 「24年度物価見通し上振れ、主な理由は原油高だが一部円安の影響も含まれている」「基調的な物価に円安は今のところ大きな影響でていない」などと述べた。
26日夕の外為市場でドル円が154円後半まで約2円、突然急落。介入ではないものの、市場参加者の間に強い介入警戒感が広がっており、一時的にドル売りが集中したと見られるが、押し目を買う動きから急反発。前週末は、一時、158円44銭と1990年5月以来、約34年ぶりの安値を付けた。3月の米個人消費支出(PCE)物価指数が前年同月比で市場予想を上回った。インフレが高止まりするなか、米利下げ開始時期の後ずれ観測が材料視されている。
覆面介入実施
今週は、1日のFOMC結果発表、パウエル議長の記者会見、3日の米雇用統計の発表など、重要イベントが控えている。市場の利下げ時期の見通しは後ずれしており、米経済指標の好調が続くと、年内利下げ見送りシナリオも現実味を帯びてくる。介入が、どのタイミングでどの程度の規模で実施されるか、その後の市場反応と合わせて注目。5円程度のレンジが上下に出てもおかしくはない。(※29日、5円のブレ)
金:円建て金は、グランビルの買い法則③
【今週見通し・戦略】
「買い難い相場は高い」との相場格言通りの動きを見せた金相場だが、イランがイスラエルに報復しない方針とし、中東の全面衝突が回避されたことを受けて、スピード調整が入った格好だ。イランは、4月19日に受けた攻撃を調査しているとし、現時点でイスラエルとの関連は証明されていないとした。
イスラエルとイランの間で直接戦争が起これば、両国の間に領空を持ち、同盟国イスラエルを守ると宣言している米国の軍事基地を抱える湾岸諸国に飛び火する可能性があり、湾岸諸国は誰もエスカレートは望んでいない。湾岸諸国・イラク・ヨルダンは、イランと、イスラエルの主要な支援国である米国の双方にエスカレートしないよう働きかけており、米国はイスラエルに自制を促している。また、米国は湾岸諸国を介して、イランにこれ以上エスカレートしないようにメッセージを伝えている。サウジはイランと連絡を取り合い、事態を収束させようという流れだ。
米国覇権・ドル基軸通貨体制の揺らぎと言う大きなテーマに変化はなく、中央銀行や中国の個人の買いも継続している。足元の中東の混迷は、米国の内向き姿勢・覇権の揺らぎが背景で、アフガニスタンの米軍撤退以降、世界の警察官の地位を自ら降りた事に伴う「国際秩序の再編」が世界各地で起きている。
地政学リスクは燻ったまま
米国でイスラエルやウクライナを支援する法案が成立し、イスラエルのネタニヤフ政権がガザ南部のラファへ地上侵攻し、武装組織ハマスの掃討を開始すると、中東情勢が再び緊迫化する可能性が高い。一方、GW中に停戦協議進展の報も。
今回の金の調整安は、中長期的には、良い買い場を提供することになりそうだ。NY金(6月限)は、2月安値~4月高値までの上昇に対する38.2%押しや、2023年10月安値を起点とした緩やかな上昇チャネル上限と重なる心理的節目2300ドル水準が下値支持帯として意識され長い下ヒゲ十字線形成。終値ベースで23日の十字線高値(2347.9ドル)を上抜いてくると、「HORY-GRAIL」の買いパターンとなる。また、上昇トレンド下での移動平均線割れからの反発で、23日の下ヒゲを維持できれば「グランビルの買い法則②」ともなる。JPX金は、「グランビルの買い法則③」となり、押し目買い基調が明確になっている。
【先物市場が織り込む政策変更ペース】
【米PCE】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。