金はなぜ世界で取引されるのか?金の魅力に迫ります
金がなぜ貴重なものとして世界で取引されるのか、その魅力についてまとめました。金が古今東西を問わず貴重とされる理由を振り返るとともに、人類と金の歴史についても触れます。輝く金色は古くから王侯貴族に愛され、科学者たちの研究対象ともなりました。金は劣化しない特性と希少性から、今でも世界通貨としての役割を持っています。
金はなぜ地域や時代を問わず貴重なのか
「有事の金」「安全資産」と呼ばれ、コロナ禍以降特にその価値が注目されている金ですが、この金属ほど時代や文化、地域を問わず珍重されてきた物質も例がないでしょう。
通常は、地域や時代によって貴重とされていた物質も、時代の流れによって価値が変わります。例えば、かつて塩は貴重な物質とされていました。古代ギリシャ人が奴隷を買う際に塩が使われ、古代ローマでは兵士に給料を塩で支払ったとされています。しかしながら、現在では製塩技術や流通の発達により、昔ほどの価値はなくなっています。
しかしながら、金は古代においても現代においても、また地域を問わず、高い価値があると考えられています。その理由は、以下にあると考えられます。
・輝く金色
金はどんな時代・民族の人にもわかりやすい美しさで、太陽の光をイメージさせます。そのまばゆい輝きは多くの王侯貴族の心をとらえました。為政者たちの権威を庶民に印象づけるために、輝く金は格好の装飾品となりました。
・希少性が高い
有史以来、地球上で発掘された金の総量は16~18万トンと言われ、オリンピック公式プール4杯分に満たないとされています。また、今後発掘可能な金の量は5万トンほどと言われ、地球上にわずかしかない貴重な金属として珍重されています。
・品質が劣化しない
金は酸化して錆びたり、腐食や劣化したりすることがなく、何千年経ってもその価値が変わりません。王水という濃塩酸と濃硝酸の混合液など、特殊な溶液を使わなければ溶けることもありません。
・加工が容易である
金は柔らかい金属で、装飾品などに加工しやすいのが特徴です。約2グラムの金に微量の銀と銅を加え、叩いて薄く延ばすことで、たたみ一畳分、1万分の1mmという薄さの金箔になります。多くのゴールドの装飾品は、加工のしやすさと耐久力の兼ね合いのため、他の金属と混ぜ合わせた合金が使用されています。
・流動性が高い
金は金貨として必要になった時にすぐに手元に引き出し、いつでも、世界中のどこでも、他の貨幣などに交換することができます。これに対し、株式や債券などは、国や企業が破綻すれば価値が無くなります。このため、金は「無国籍通貨」とも呼ばれています。
・宝飾品以外にも利用価値がある
金は錆びにくく加工しやすい貴金属として、電子機器や精密機械にも利用されています。2020年東京オリンピックでは、小型家電からリサイクルされた金を使ったメダルが手渡されました。金は希少性が高いわりに多様な用途に使われるため、価値が高くなっています。
人類と金の歴史
人類は昔から金を珍重してきました。金の歴史の一部をご紹介します。こうした歴史的背景も、金の価値を高める一因となっています。
・古代エジプト
紀元前3100年ごろの古代エジプトでは、金は神聖視され、王であるファラオだけが身に着けることができる金属でした。ファラオの黄金のマスクは現在の価値で300兆円とも言われる、途方もなく貴重で豪華なものです。川から砂をすくい上げ、砂金を取るという方法で少しずつ金が集められたもので、作成に膨大な時間と手間暇をかけたと考えられます。
・トラキアの黄金文明
紀元前5000年~3000年ごろ、現在のブルガリアがある地域に、トラキア人と呼ばれる民族が住んでおり、様々な黄金製品を残していることから、「黄金文明」とも呼ばれています。勇猛な騎馬戦士として恐れられ、文字を持たなかったトラキア人ですが、王笏や王冠、イヤリングやネックレスなどの装飾品などといった、繊細で高度な金の装飾品を創り出す技術を持っていました。
・錬金術
中世ヨーロッパや、イスラム、中国などでは、金を人工的に生み出そうとする技術「錬金術」が研究されていました。何千年も劣化しない金は普遍的な物質とされ、ただ金の交換価値目当ての研究だけではなく、科学者たちの純粋な興味・追究の対象となっていました。万有引力の法則を発見したニュートンも、熱心に錬金術を研究していました。
・日本
日本では、金は中尊寺金色堂や金閣寺のように、神社や仏閣に使用されてきました。日本の金と言うと大判・小判を思い出しますが、江戸時代の貨幣制度では、金・銀・銅の三種類のお金の制度がバラバラで、買うものの種類によって金貨・銀貨・銅貨を使い分けなければならず、大変でした。そのため、金・銀・銅の交換を専門とする両替商が発達しました。