都市鉱山って何?
家電製品の中には、金や銀などの貴金属が眠っています。ですから、家庭には金や銀が眠っているといっても過言ではありません。例えば、携帯電話やパソコンなどの小型家電には金や銀などの希少な金属が使われています。貴金属とは、わずかしか採掘できない金属をいいます。通常、製品寿命を迎えた家電製品は廃棄されますが、家電とともに貴金属をそのまま廃棄するのはもったいないでしょう。そこで、「都市鉱山」という概念が注目されています。
都市鉱山とは?
携帯電話やパソコンなどは、毎年のように買い替えることも珍しくありません。新製品が出たらすぐに飛びつく方も多いと思われます。頻繁に買い替えすぎて、使わなくなったパソコン等を、もう何年も家の奥に放ったままということもあるでしょう。貴重な資源がさまざまな製品の中に眠っています。そんな状況を都市鉱山といいます。都市鉱山とは、都市で大量にごみとなっている家電製品などの中にお宝が存在することを表した概念であり、都市鉱山の開発とは、そこから資源を積極的に取り出そうとする試みです。
産業面からも都市鉱山は注目されています。天然金属資源の乏しい日本は、それらのほとんどを輸入に頼っています。資源の安定供給は産業界の命運を握りますから、資源の産出国が輸出制限したり、金属の価格が高騰すると、その影響を大きく受けてしまいます。そこで、廃棄された家電製品などの中に存在する有用な金属を新たな製品の原料として再利用することが考えられています。自国資源である都市鉱山を開発して再利用できるようになれば、天然金属資源に恵まれない日本において、廃製品は有望な金属資源となるのです。ちなみに、携帯電話、スマートフォン1台の中には、金が約0.03グラム、銀が約0.2グラム、銅が約1.0グラム使われているそうです。
循環型社会を目指して
都市鉱山という概念は、循環型社会とも親和性があるといえます。大量生産・大量消費・大量廃棄の時代は過ぎ去りました。地球環境への配慮が重視され、循環型社会が模索される中、リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)という3Rが推進されています。
循環型社会とは、「まず製品等が廃棄物等となることを抑制し、次に排出された廃棄物等についてはできるだけ資源として適正に利用し、最後にどうしても利用できないものは適正に処分することが確保された、環境負荷が少ない社会」のこと。よって、地球環境への関心が高まる中、循環型社会を目指す社会的な動きからも都市鉱山の開発は進むと思われます。
以上のように、産業面や地球環境への配慮という面から都市鉱山の開発は関心を集めています。令和2年に内閣府が発表した「革新的環境イノベーション戦略」においては、「金属等の高効率リサイクル技術の開発」として、「金属等の循環利用を進めることで原料からの一次製錬が不要となりCO2大幅削減が期待される」、「金属資源リサイクルの飛躍的発展が見込まれる」などの文言がみられます。使用済みの製品を経済的かつ安定的に収集し、廃製品から各金属を取り出して再利用する技術の確立に国を挙げて取り組むこととしています。
金をはじめとする金属資源には限りがあります。だからこそ貴金属といわれます。ごみとされた家電製品の中に存在する有用な金属を都市に眠る鉱山資源とみなし、全国に散在している金属を回収して集約することが都市鉱山活用の第一歩。身近にある使わなくなった家電製品に眠る資源の有効活用をぜひ考えてみてください。