金:三角保合い放れ待ち⑤|【Weekly Report】週間予定
2025年8月4日
週間展望(8/4~8/10)
このページで知れること(目次)
週間予定:自民党の両院議員総会、日銀7月主な意見
前週:米雇用統計
ドル円:雇用統計を受け、米利下げ観測高まる
金:三角保合い放れ待ち
【日経平均と海外投資家の売買動向】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:自民党の両院議員総会、日銀7月主な意見
・日銀7月主な意見
物価見通し引き上げも植田総裁がタカ派ではなく円安、ドル円150円突破
・自民両院議員総会
石破首相の早期退陣求める声、要件満たせば臨時総裁選実施が可能に
・英中銀政策金利
労働市場軟化・賃金伸び鈍化で利下げ確実か、ベイリー総裁会見も
・日本実質賃金
6カ月連続減もマイナス幅は縮小か、年後半にプラスに転じる可能性
・中国貿易収支
7月も輸出堅調か、米中関税休戦と米国以外の海外市場で需要が拡大
前週:米雇用統計
【雇用統計】
米労働省が1日発表した7月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は7万3000人増加した。伸びは市場予想(11万人増)以上に鈍化したほか、過去2カ月分の雇用者数も計25万8000人下方修正された。
過去2ヶ月分も下方修正
6月分は当初発表の14万7000人増から1万4000人増と、約5年ぶりの低水準に下方修正された。5月分も12万5000人増から1万9000人増に修正された。5〜7月は就業者の伸びが月平均で3.5万人と新型コロナウイルス禍後の最低を記録した。
米労働統計局(BLS)は、5・6月分の「通常よりも大きい」下方修正の理由を明らかにしなかったものの、「月次の修正は、推定値発表以降に企業や政府機関から受け取った追加報告と季節要因の再計算によるもの」とした。
失業率は4.2%で6月の4.1%から上昇した。事前予想は4.2%だった。
景気悪化が鮮明になれば、利下げに慎重な米連邦準備理事会(FRB)に対して「出遅れ」批判が強まる可能性もある。
労働統計局長解雇
トランプ米大統領は8月1日、米労働省のエリカ・マクエンタファー労働統計局長を解雇するよう指示した。7月の雇用統計で過去分が下方修正されたことに憤慨し「政治的な操作だ」と決めつけた。自身のSNSで、トランプ氏は「彼女は選挙前に雇用統計を改ざんし、カマラ(ハリス前副大統領)を勝たせようとした人物だ」とし、「このバイデン政権の政治任命者を即刻解雇するよう指示した」と表明した。
FRBは1日、クグラー理事が退任すると発表。理事に空席が生まれるため、トランプ氏は次の議長候補をいつでも理事に指名することができる。
ドル円:雇用統計を受け、米利下げ観測高まる
【今週見通し・戦略】
先週のドル円は、石破首相の退陣観測(後に否定)や、日米関税合意もあり、切り返した流れに続き、FOMCでは、全会一致ではなかったものの、トランプ米大統領による利下げ要求に屈せず金利据え置きを決定したことで、円安ドル高が進んだ。日銀金融政策決定会合では、金利据え置きを全会一致で決定。
円安について問われた植田総裁は「物価の見通しに直ちに大きな影響があるとはみていない」と明言した事で「円安容認」と捉え、月末には、米インフレ圧力の高まりや米労働市場の底堅さを示す米経済指標もあり、米長期金利上昇、150円台乗せの円安・ドル高水準を付けた。
米中・米EU貿易協議
2025年4~6月期の米実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率で3.0%増と、1~3月期(0.5%減)から回復した。市場予想(2.3%増)も上回った。7月のADP全米雇用リポートでは非農業部門の雇用者数が前月比で10万4000人増と、市場予想(6万4000人増)以上だった。6月の米個人消費支出(PCE)物価指数の前年同月比の上昇率は2.6%、エネルギーと食品を除くコアでは2.8%と、ともに市場予想(2.5%、2.7%)を上回った。労働市場の底堅さから年内利下げを見送るとの観測から米長期金利上昇・ドル買いとなった。
通貨安誘導を牽制
ただし、前週末の雇用統計が労働市場の軟化を示したことで米長期金利が低下し、日米金利差縮小を眺め急反落となった。CME「フェドウオッチ」によると、FRBが次回9月会合で0.25%の利下げを決める確率が1日夕時点で9割近くと、前日の4割弱から急上昇した。
52週移動平均線や200日移動平均線に上値を抑えられ、グランビルの売り法則となった。日本の連立の枠組み次第では、悪い円安が再開する可能性も残っており、140-150円のレンジ放れ待ちが続きそう。
金:三角保合い放れ待ち
【今週見通し・戦略】
NY金(12月限)は、米国の大型の減税・歳出法案は債務上限を5兆ドル引き上げる内容が盛り込まれ、懸念されていた夏場にかけての米国債デフォルト(債務不履行)「Xデー」は、回避された事や、日米を始めとして、米韓・米EU・米メキシコなどの通商合意を受けて貿易摩擦激化懸念が後退したことで、ここまで進んできた安全資産に対する買いの利食いが進んだ。
利食い先行
米インフレ圧力の高まりや米労働市場の底堅さを示す米経済指標もあり、米長期金利上昇した事や、トランプ大統領が一部の銅や銅関連製品に50%の関税をかけると発表していたが、7月30日に銅製品の素材となる精錬銅などは除外した事に伴う、非鉄に売りが広がった事も金下落の一因。
ただし、米債務上限が拡大したことは、短期的には利食い要因となったものの、中長期的には金価格の水準も更に引き上がる要因となる。米議会予算局(CBO)は米政府に入る関税収入の増加により、10年間で財政赤字が2.8兆ドル圧縮されると試算したが、上院可決直前の修正で財政赤字は膨らみ、関税収入で賄いきれない計算だ。
変動高まる時間帯
前週末は、米雇用統計を受けた米利下げ観測の高まりからドル売り・金買いの動きとなり、心理的節目3300ドル水準が下値支持として機能した。価格帯別出来高の厚い水準を中心とした三角保合い放れ待ちが継続。買い主体の戦略を継続したい。
トランプ大統領は28日、ロシアが10~12日以内に停戦交渉で合意しなければ追加制裁を科す考えを示した。7月中旬に50日以内としていた猶予期間を縮めた。8月・9月は、変動が高まる時間帯でもある。
【日経平均と海外投資家の売買動向】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。