金:停戦合意で調整安局面|【Weekly Report】週間予定
2025年6月30日
週間展望(6/30~7/6)
このページで知れること(目次)
週間予定:米国イラン協議。雇用統計、日銀短観
前週:イスラエル、イラン停戦合意
ドル円:140-150円レンジ放れ待ち
金:停戦合意で調整安局面
【価格帯別売買代金】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定
・ECBフォーラム
ラガルド総裁のほか植田日銀総裁やパウエルFRB議長が出席する
・米雇用統計
パウエル議長「インフレ低下し労働市場悪化なら利下げ前倒しの可能性も」
・日銀短観
トランプ関税政策の影響で前回から悪化する見通し、先行きも悪化か
・田村氏の次に「タカ派」の高田委員の講演
前週、田村氏は、「2%に達したと言い切るにはあと少し情報やデータを分析していきたい」などと述べ、トーンダウンで円売り反応。
・参院選公示(20日投開票)
非改選と合わせて自民公明与党で過半数維持できるかが焦点。
・米国イラン協議
イランは停戦合意後も核開発放棄せず、米の再攻撃リスク。
トランプ米大統領は27日、イランの最高指導者ハメネイ師を厳しく批判し、対イラン制裁解除の計画を撤回した。
前週:イスラエル、イラン停戦合意
【停戦合意】
米国によるイラン核施設攻撃に対する報復で、イランがホルムズ海峡封鎖や、中東戦争・第三次世界大戦などの危機を煽る文言が飛び交ったが、同海峡封鎖は、自国の食糧・医薬品輸入だけでなく、同海峡に依存する中国・インドにも悪影響を与え、米国の追加攻撃のエクスキューズを与えるだけで、(電子妨害はあっても)物理的封鎖は行い難かった。
また、中東の米軍基地への報復攻撃も懸念されたが、今回使用されたステルス爆撃機のB2は、ミズーリ州のホワイトマン空軍基地を飛び立ち、空中で複数回の給油を受けての作戦実行で、中東各国に多く存在する米軍基地を使用しなかった。
報復も限定的
このような背景の中、23日にイランは仲介役のカタールの首都ドーハ近郊にある米空軍拠点アルウデイド基地を標的に報復攻撃したが、人的被害が出ないようイランは外交ルートを通じて米国とカタールに事前通知していた。イランが対立の激化を避けようとしたとの観測から原油相場は急落。この後、トランプ米大統領は、イスラエルとイランが「完全な停戦で合意した」と自身のSNSに投稿した。イスラエルとイランの両国が「12日間の戦争を終わらせるための持久力や勇気、知性を示したことに、心から感謝する」と書き込んだ。
イスラエルには折れる姿勢を絶対に見せられないイランが、米国の限定的な参戦により、国内的なメンツが立つ格好で矛を収めやすい状況となった。トランプ米大統領の強い警告もあって、停戦合意はかろうじて守られている。イラン・イスラエル共に「勝利宣言」を出したが、停戦の為に、国内向けメンツを双方に立てることは外交交渉には必要なこと。情報・発言が国内向けなのか、それとも実情に沿ったものなのか見極めが必要。イラン空爆の被害状況も、米国発表とイラン発表とでは大きく異なるが、これも停戦交渉を進める上には、一定程度必要なこと。違いを非難する論調もあるが、人命を考えるなら「まずは停戦」。ただし、政治的メンツが勝ってくると、波乱や泥沼化するリスクは残る。
ドル円:140-150円レンジ放れ待ち
【今週見通し・戦略】
ドル円は、米国がイラン核施設を直接空爆したことで、23日には有事のドル買いが強まり、一時148円台に乗せた。イランは、米国への報復としてカタールの米軍基地にミサイルを発射したが、カタールと米国に事前通告しており、イランの対米報復が限定的との見方から、上ヒゲ形成。
原油相場が下落し、原油高が日本の貿易赤字拡大につながるとの観測が後退。円買い・ドル売りが広がった。原油下落でインフレリスクが低下したとの見方に加え、FRBによる年内の利下げを意識したドル売りにもつながった。
米長期金利低下
ボウマンFRB副議長は23日、チェコで開かれた講演で、次回のFOMCでの利下げ実施を支持する姿勢を明らかにした。前週にはFRBのウォラー理事も早期利下げに言及した。また、米経済統計が弱含んだことや、トランプ米大統領が、早期の次期FRB議長指名について発言したことで、早期利下げ観測が広がり、米10年債利回りは低下(債券価格は上昇)。日米金利差の縮小観測もドル売り要因になった。ドル指数は年初来安値を更新した。
ユーロ高値更新
ユーロドルは、ドル円に先行してユーロ高を更新しており、ドル円も週足ベースで145円を割り込んでくると、三尊天井完成から下げ加速の構造に変化はない。日足ベ-スでは、200日移動平均線の上値抵抗感が再確認され、三角保合い下限の攻防戦へ。米・イランの核開発協議を睨みながら、雇用統計などのマクロ経済指標を受けた米利下げ観測が材料視される。
金:停戦合意で調整安局面
【今週見通し・戦略
米軍によるイランの核施設攻撃に対して、イランがカタールとイラクにある米軍基地に対するミサイル攻撃作戦を実施したものの、イランは米国とカタールに攻撃を事前に通知しており、人的被害もなかった。強力な報復措置ではなく、抑制的なものと受け止められ、原油は急落、株高・金売りで反応した。
報復攻撃は事前通達
トランプ米大統領は23日、自身のSNSでイスラエルとイランが「完全かつ全面的な停戦」に合意したと発表した。イスラエルには折れる姿勢を絶対に見せられないイランが、米国の限定的な参戦により、国内的なメンツが立つ格好で矛を収めやすい状況となった。イラン・イスラエルが互いに猜疑心を持っている状況下、暫定的な停戦が始まった後、両国が再び交戦したが、トランプ米大統領の強い警告もあって、停戦合意はかろうじて守られている。
FRB議長人事
NY金(8月限)も調整含みの展開となっている。価格帯別出来高の厚い3300~3500ドルを中心とした三角保合い下放れの場合、一目均衡表の雲の下限と重なる5月安値(3151ドル)~4月高値(3226ドル)、N値=3088ドル、心理的節目3000ドル、4月7安値(2995ドル)などがターゲットとして計算できるが、大きなテーマ(ドル基軸通貨・覇権の揺らぎ)が下値を支え、夏にかけての米債務問題・関税協議・米利下げ観測などが改めて買い材料視されそうだ。短期的には、米国の軍事的な戦術が成功したかのように見えるが、明確な出口戦略がない中、長期的には、BRICSを始めとする新G8から米国の「ダブルスタンダード」を非難する声も大きくなり、世界の分断・ドル資産離れの加速や、米国の覇権体制の更なる揺らぎも意識されるだろう。「安全資産」としての買いは継続する。押し目買い戦略を継続したい。
トランプ米大統領が次期FRB議長の早期指名を検討している。金融緩和に積極的な人物が選ばれるとの思惑もドル安・金買い要因。
【価格帯別売買代金】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。