金:NY金は、3300ドルを中心とした保合い|【Weekly Report】週間予定
2025年6月9日
週間展望(6/9~6/15)
このページで知れること(目次)
週間予定:米消費者物価指数・トランプ大統領誕生日
前週:半期外国為替政策報告書
ドル円:三角保合い放れ待ち
金:NY金は、3300ドルを中心とした保合い
【海外投資家動向】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:米消費者物価指数・トランプ大統領誕生日
・5月の米消費者物価指数
米中関税大幅引き下げ合意の一方で多くの企業が値上げを実施
・米30年債入札
米中協議進展の一方でトランプ関税・財政不安により米国離れが懸念される
・アップル開発者会議、英欧で開催されるテックイベントにエヌビディアのファンCEOが参加
・14日はトランプ79歳の誕生日&大規模軍事パレード(64億円と推定)
・15日は習近平国家主席72歳の誕生日
一部で米中対面会談「バースデーサミット」期待
・FRBブラックアウト期間(金融政策に関する発言自粛)(~19日)
前週:半期外国為替政策報告書
【外国為替政策報告書】
米財務省は5日、半期ごとの外国為替政策報告書を公表した。「為替操作国」に認定した貿易相手国・地域はなかったが、為替操作をしていないか注視する「監視リスト」にアイルランドとスイスを加えたほか、中国に対し厳しい警告を発した。
アイルランドとスイス追加
今回の報告書は第2次トランプ政権発足後で初めて。財務省は、中国を為替操作国に認定しなかったものの、中国は「主要貿易相手国の中でも為替政策やその慣行に関する透明性の欠如が際立っている」と指摘。「中国が将来的な人民元相場の上昇に抵抗するために公式または非公式の手段を通して介入しているとの証拠が得られた場合、こうした透明性の欠如は、中国を(為替操作国として)認定することを妨げるものではない」とした。
今回の報告書で「監視リスト」に掲載された国・地域は、中国、日本、韓国、台湾、シンガポール、ベトナム、ドイツ、アイルランド、スイスの9カ国・地域。
「監視リスト」掲載を巡って財務省は、対米貿易黒字が150億ドル以上、国際収支黒字が対国内総生産(GDP)比3%以上、持続的で一方的な外貨純購入、の3点の基準を設けており、このうち2つを満たすとリストに追加される。
外国為替政策報告書で、「日銀の金融引き締め政策は日本経済の成長率やインフレ率を含むファンダメンタルズ(基礎的条件)に応じて継続的に進められるべきで、これによりドルに対する円安の正常化や必要とされている両国貿易の構造的再均衡化を後押しすることになる」との記述を新たに加えた。
また、日本の「大規模な公的年金基金など政府系投資機関は、リスクを加味した収益や分散投資のために海外に投資すべきで、競争力を念頭に為替相場を目的にすべきではない」とした。
ドル円:三角保合い放れ待ち
【今週見通し・戦略】
米中関係の悪化への懸念が広がっていた中、6月2日、トランプ大統領が鉄鋼とアルミニウムへの輸入関税を4日より25%から50%へ引き上げると表明。これに対して、欧州連合(EU)は報復措置を取る可能性があると示唆した。リスク回避の円高から、先週は始まった。
2日発表の米5月米ISM製造業景況指数は48.5となり、市場予想(49.2) だけでなく、前回(48.7)を下回った。こうした動きもドル売り円買いにつながった。
日銀総裁発言
3日には参議院で答弁を行った植田日銀総裁が、「将来の利下げ余地を確保するためだけに利上げを急ぐことはない」などと発言したことなどを受けて円売りが強まり、ドル円は反発。米4月雇用動態調査(JOLTS)求人件数が市場予想を上回ると、ドル買いの動きが加速して144円台に乗せた。
日本時間6月4日午後1時1分に鉄鋼アルミニウム関税を25%から50%に引き上げたが、波乱なく通過して、市場の反応は限定的となった。米5月ADP雇用者数が3.7万人増となり、市場予想の11.2万人増を下回った。さらに、5月ISM非製造業景況指数が49.9となり、好不況の境目とされる50を下回ったことで、ドル円は142円台半ばに反落。
米中首脳電話会談
その後、米中首脳による電話会談が行われたと報じられ、トランプ大統領の「両国にとって非常に前向きな結論に達した」との発言が伝わると、ドル円は144円に接近。前週末は、米雇用統計が市場予想を上回る内容となり、労働市場の鈍化に対する懸念が後退した。ADP全米雇用リポートや週間の米新規失業保険申請件数が相次いで労働市場の下振れを示唆したあとで、米景気が底堅さを保っているとの見方が広がった。引き続き、G7での米中トップ会談を睨みながら、保合い放れ待ち。
金:NY金は、3300ドルを中心とした保合い
【今週見通し・戦略】
弱い米経済指標や米大統領が鉄鋼やアルミニウムに対する関税を50%に引き上げることを表明したことが支援要因になったが、習近平国家主席とトランプ米大統領は5日、電話会談し、閣僚級の会合を近く開くことで一致した。
米中閣僚会議
トランプ大統領は会談後、「非常に前向きな結論に至った」とSNSに投稿、レアアース(希土類)の輸出規制についても「問題は解消される」との見方を示した。これを受けて、両国の貿易摩擦を巡る警戒感が後退したことから、金売りが優勢となった。
前週末は、市場予想より堅調だった5月の米雇用統計を受け、早期米利下げを再開するとの観測が後退した。短期金利先物の相場動向によると、FRBの金融政策当局者は9月まで利下げ再開を見送り、12月までにあと1回利下げすると見込まれている。
価格帯別出来高の厚い3300ドルを中心とした保合いになっている。
ウクライナ暴走
米CNNテレビはウクライナが1日に実行したロシア・シベリアなどへのドローン(無人機)による大規模攻撃を巡り、米政府に事前通告しなかったと報じた。プーチン大統領はトランプ大統領と電話会談を行い、ウクライナによるロシア空軍基地への大規模なドローン(無人機)攻撃のほか、ロシア西部2州への攻撃に対してロシアは対応せざるを得ないと伝えた。
一方、国連安全保障理事会は、パレスチナ自治区ガザ区での即時・無条件停戦と、ガザ地区全域への人道支援の制限解除などを求める決議案の採決を行ったが、米国が拒否権を発動したため否決された。地政学リスクの燻りは金の下値支持要因。今夏に向けて、相互関税の90日間猶予期間は7月上旬、8月には米中相互関税・報復関税上乗せ分の猶予期間や、米債務上限問題が再び浮上してくる。押し目買い戦略継続。
【海外投資家動向】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。