金:史上最高値更新後の調整は、値幅でなく日柄調整も|NY金(週足・乖離率)・NY金(MAC)・CFTC建玉明細|【Monthly Report】月間展望(5月)
2025年5月1日
~5月1日~5月30日 ~
このページで知れること(目次)
ドル円:自律反発も、大勢は円高ドル安 CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円ドルインデックス
金:史上最高値更新後の調整は、値幅でなく日柄調整も NY金(週足・乖離率)・NY金(MAC)・CFTC建玉明細
5月注目スケジュール:日米関税協議・ロシア・ウクライナ停戦交渉・FOMC
ドル円:自律反発も、大勢は円高ドル安
CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円ドルインデックス
【今月見通し・戦略】
4月のドル円は、トランプ米大統領によるパウエルFRB議長の解任発言騒動で、中央銀行への独立性を巡る懸念からドル安となった。更に、21日にはG20財務相・中央銀行総裁会議に合わせて、加藤財務相とベッセント米財務長官の会談を行う方向で調整が進む中、日本に対して円安是正を求めてくるとの観測がドル売り円買いにつながり、心理的節目140円割れまでの続落となった。
その後、トランプ大統領がFRB議長解任報道を否定したことで米国売り(トリプル安)は一服。株高・ドル高で切り返した。ベッセント米財務長官の「関税を巡る中国との対立は長くは続かず、緩和していく 見通し」との発言なども、ドル買い要因となった。
24日に実施された加藤財務相とベッセント米財務長官の会談では、「為替水準や目標などについての言及はなかった」と報じられており、市場は落ち着きを見せている。
米国の関税措置を巡っては、交渉を担当する赤沢経済再生相が30日~5月2日の日程で訪米し、米側で交渉を担うベッセント氏らと2回目の協議を行う予定。自動車関税の見直しなどを求める日本に対し、米側は非関税障壁の解消や米国産農産物の輸出拡大などを要求するとみられている。
140円が下値支持として意識されてはいるものの、週足ベースでは、同水準と重なるネックラインを割り込むと、三尊天井完成となり、下値圧力が高まりやすいチャート形状。米雇用統計や米GDP、3月の米個人消費支出(PCE)物価指数の数字次第では、6月の米利下げ実施の可能性も意識されやすくなる。
~CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドルインデックス~
【CFTC建玉明細】
【ドル円(日足)52週移動平均線】
【ドル円&ドルインデックス】
金:史上最高値更新後の調整は、値幅でなく日柄調整も
NY金(週足・乖離率)・NY金(MAC)・CFTC建玉明細
【今月見通し・戦略】
トランプ政権が相互関税を部分凍結した背景にあったのは、「トリプル安(米株安・ドル安・米債安」の金融危機懸念の浮上で、ベッセント財務長官が主導し、トランプ大統領に関税上乗せの一時停止を説得したとされる。トリプル安に繋がりかねない悪い金利上昇と言う地合いの中で、NY金は史上最高値更新となった。ただ、心理的節目3500ドルを超えたものの、52週移動平均線の乖離率は、2020年以来、最大の過熱感を示していた中、トランプ大統領がFRB議長解任報道を否定したことでトリプル安が一服。ベッセント米財務長官の「関税を巡る中国との対立は長くは続かず」との発言も、ドル買い・米株買い・金売り要因となり、調整入りとなった。4月22日の長い上ヒゲ高値が目先の天井候補。
4月2日高値~心理的節目3300ドル水準は、価格帯別出来高の厚い支持帯。4月7日安値~4月22日高値までの上昇に対する半値押しは3240ドル、61.8%押しは3176ドル。
CFTC建玉明細では、大口投機玉の買い越し整理は進んでおり、ここから買い玉の投げでの下げは限定的になりそうだ。
日米財務相会談では、米国側が金融市場の安定を優先させていることが確認された。JPX金にとっては、急速に円高が進まなければ、調整は値幅調整は限定的で、日柄調整となる可能性も。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は4月30日、1~3月の需給統計を発表。世界での投資需要は前年同期比で2.7倍に膨らんだ。金の需要は1206トンと前年同期と比べて14%増加。1~3月期としては16年以来の高水準だった。現物の金を裏付けとする上場投資信託(ETF)向けの需要は24年1~3月期の113トンの流出超過から226.5トンの流入超過となった。金地金(インゴット)やコインも325.4トンと3%増加。
~NY金(週足)・NY金(MAC)・CFTC建玉明細~
【NY金(週足)52週移動平均線乖離率】
【NY金(MAC)価格帯別出来高】
【NY金(CFTC建玉明細)】
5月注目スケジュール:
日米関税協議・ロシア・ウクライナ停戦交渉・FOMC
・日米関税交渉(2回目)
米側は非関税障壁の解消や米国産農産物の輸出拡大などを要求するとみられる。
・日銀金融政策決定会合
4月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」が公表。
政策金利は据え置くとの見方が多い。
・米雇用統計
4月のADP全米雇用リポートでは非農業部門の雇用者数が前月比6万2000人増と市場予想(12万人増)を下回った。
・米FOMC
トランプ大統領からは利下げ圧力
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。