金:内部要因からの調整安は中長期的な買い場|【Weekly Report】週間予定
2025年2月17日
週間展望(2/17~2/23)
このページで知れること(目次)
週間予定:FOMC議事要旨、米購買担当者景気指数(PMI)
前週:日米首脳会談
ドル円:150-155円のレンジ放れ待ち
金:内部要因からの調整安は中長期的な買い場
【米小売売上高】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:FOMC議事要旨、米購買担当者景気指数(PMI)
・日本消費者物価指数
食料品価格高騰により4%台に上昇か、植田日銀総裁「食品値上がり生活に強いマイナス」
・田日銀審議委員発言(タカ派)
前回9月「当面は金融市場の動向を注視」思いのほか慎重発言で一時円売り
・豪中銀政策金利
コアインフレ鈍化受け4年ぶり利下げへ、世界的金融緩和の波にようやく乗れるか
・FOMC議事録
1月会合ではインフレ進展確認したいとして利下げ急がない姿勢示す
・英消費者物価指数
予想上回るGDPやピル氏・グリーン氏発言、CPI加速なら利下げ期待一段と低下か
・南アフリカでG20外相会合、ルビオ米国務長官は「南アは非常に悪いことしている」として欠席
前週:日米首脳会談
【日米首脳会談】
直接対談を不安視する声や、会談後も石破首相の所作が云々と揶揄する報道も一部あったが、結論としては大成功だった。初めての対面での会談で時間が限られた中、首脳間同士の信頼関係を築くと言う意味では、「ウマがあった」と言えるだろう。石破首相は、トランプ氏銃撃事件時の写真を示し、「大統領になられる前でしたが、狙撃をされたとき、ひるむことなく立ち上がられ、こぶしを手に突き上げて。その時の写真が非常に印象的でありました。 その背後には星条旗がはためき、そして青い空が映っていた。あの写真はおそらく歴史に残る一枚だったと思います。あの写真を見て、私はおそらく大統領閣下が、自分はこうして、「神様から選ばれたんだ」「必ず大統領に当選し、再びアメリカを偉大な国に」、「そして世界を平和に」、そのように確信されたに違いないと思いました。」と述べた。
個人的相性は〇
外務省からのレクチャーでは首脳会談時に宗教的な話は避けるようにと助言があったようだが、会談の冒頭で熱心なプロテスタントである石破茂首相が「大統領が、自分はこうして神様から選ばれたと確信したに違いないと思った」と述べたことが、トランプ大統領との信頼関係を構築する上で重要なポイントだった。キリスト教で、神の選びを強調するのは、長老派、改革派などカルヴァンの系譜を引く人々の特徴だ。
信仰が政治活動の原動力になっている場合が多いが、トランプ大統領も石破首相も同じ感覚を持ち合わせているからこそ、ウマが合ったのだろう。
神に選ばれていることを察知できるのは、神に選ばれた人だけ。神に選ばれている者は特別の使命を持つ。そして、その意味を神に選ばれた者同士は理解する。この種の発言が社交辞令か否かは、信仰をきちんと持っているキリスト教徒は敏感に察知する。
トランプ大統領が首相選挙5回目の挑戦で成就した石破首相も苦難を乗り越え、日本を救うという使命感を持っていると連想された側面もあろう。また、石破首相は安倍晋三元首相に言及し、昨年12月に面会した安倍氏の妻・昭恵氏を通じて受け取った書籍を紹介。「ピースと書かれてあり非常に感銘を受けた」と語ったことも両人の関係構築には役立ったはずだ。
中国やカナダ・メキシコ・欧州と比べれば、関税に伴う日本の影響は限定的で、石破首相の政権基盤が固まってくるようだと、外国人投資家が日本株に戻ってくる可能性もあるだろう。
ドル円:150-155円のレンジ放れ待ち
【今週見通し・戦略】
先週のドル円は、前半は、11日のパウエル議長の議会証言や12日の米消費者物価指数の市場予想からの上振れを受けて米金利が上昇、ドル円は154円台後半まで上値を伸ばした。その後は、急速な上昇の反動や、トランプ米大統領が13日に貿易相手国に同水準の関税を課す「相互関税」の導入を指示する覚書に署名したが、7導入までに調査期間をもうけ、すぐには関税を発動しなかったことで、過度な警戒感が後退してドル売り円買いの動きとなった。広範囲にわたる関税が米インフレ加速を招くとの警戒が薄れた。
関税の即時導入は見送り
パウエルFRB議長が議会証言(上院銀行委員会)で「金利の水準は従来よりも大幅に緩和されており、経済は力強い」「政策スタンスの調整を急ぐ必要はない」「今後の不確実性に対処するため、現在の金利水準は適切である」「慎重に判断して金融政策を決定する」と述べており、利下げを急がない姿勢を強調した。
12日にトランプ米大統領とロシアのプーチン大統領がウクライナ停戦交渉開始で合意したと報じられたことで、欧州エリアの地政学的リスクの後退期待から、ドルや円がユーロに対して売られた。
米小売売上高
先週末は、1月の米小売売上高が市場予想に届かなかったことなどで米長期金利が低下。日米金利差縮小を受けてドル売り円買いが進んだ。小売売上高は前月比0.9%減と、市場予想(0.2%減)を下回った。寒波や年始に発生したロサンゼルスの大規模な山火事が影響したとみられる。
高田日銀審議委員
植田日銀総裁や赤沢亮正経済財政・再生相が現況を「インフレ」と表現したり、田村直樹日銀審議委員が25年度後半までに少なくとも1%まで短期金利を引き上げる必要性に言及したりするなど、タカ派的な発言が目立つ中、高田創日銀審議委員が19日に宮城県金融経済懇談会に出席する。発言の内容次第では円買いに振れる可能性も。ドル円は150-155円のレンジ放れ待ち。
金:内部要因からの調整安は中長期的な買い場
【今週見通し・戦略】
金はインフレ懸念やドル安を受けて買い優勢となった。NY金(4月限)は史上最高値更新(2968.54ドル)。JPX金先限も上場来高値1万4522円を付けた。
トランプ米大統領が課した関税に中国も報復する中、「安全資産」の金に買いが集まり、金価格は内外共に最高値を更新中だ。
ただ、先週レポートで≪要注意は、CFTC達玉明細での大口投機玉の買い越し水準が過去最高に接近しており、他のリスク資産の調整絡みがあると、短期的には追随するかもしれない。2月の月間騰落率は、NY金は1月の買い方有利から一転して売り方優勢の時間帯。≫と指摘したが、ファンダメンタルズからは買い材料が多いものの、先週末には、1月の米小売売上高が事前予想を下回り、米10年債の利回り低下、ドル安となったが、17日がプレジデンツデーで休場となり3連休となることもあり、当面の利益確定の動きが強まり、マイナスサイドに軟化した。
また、14日から16日までドイツのミュンヘンで安全保障会議が開催され、ウクライナ情勢について協議される。トランプ米大統領がロシアと停戦に向けた動きを示しており、欧州の地政学的リスクの後退が警戒され、利食い売り先行模様となり、中盤にかけて下げ幅を拡大した。
強気材料への反応度に注目
中長期的な強気要因に変化はなく、中長期上昇トレンドに変化はないものの、強気要因に市場の反応が鈍くなってくるようだと、調整入りも想定しておきたい。NY金の2024年12月安値~2月高値までの上昇に対する38.2%押し(2835ドル)は価格帯別出来高の厚い水準。JPX金は心理的節目14000円~13800円水準が下値支持帯。ただし、そのような内部要因からの調整局面で出る安値は中長期的な買い場となりそうだ。
【米小売売上高】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。