金:米利下げに伴う押し目買い基調に変化なし|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:米利下げに伴う押し目買い基調に変化なし|【Weekly Report】週間予定

NSトレーディング 菊川弘之
2024年9月9日

週間展望(9/9~9/15)

週間予定:米大統領選挙TV討論会

【週間スケジュール(9月9日~9月15日)】

・日本GDP改定値 小幅上方修正の見通し。インフレと賃金の堅調な伸び受け年内追加利上げも視野に


・田村日銀委員(タカ派)の講演 前回3月末には予想外のハト派発言で円売りが強まった。


・ECB理事会 賃金上昇率の伸び急減速しインフレの伸びは鈍化、利下げは確実との見方。


・米消費者物価指数 前年比で5カ月連続で伸びが鈍化する見通し。


・中国主要経済統計 8月は悪天候や消費低迷で総じて弱い内容か、景気減速懸念一段と高まる恐れ。


・米大統領選候補者討論会 トランプ氏とハリス氏の直接対決。


・アップル製品発表イベント 「iPhone16」披露か


・FRBブラックアウト期間(金融政策に関する発言自粛)(~19日)



前週:米雇用統計

【米雇用統計】

米雇用統計

Fedウォッチが示すFOMCでの政策金利見通し2024年9月6日

FOMC(24/9/18)での金利決定予想

米労働省が6日発表した8月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比14万2000人増で予想を下回った。

ただ失業率は4.2%で前月の4.3%から小幅低下し、労働市場の減速が引き続き秩序だったものであることを示唆した。

事前予想は非農業部門雇用者数が16万人増、失業率が4.2%だった。


7月の非農業部門雇用者数は、11万4000人増から8万9000人増に下方修正された。

時間当たり平均賃金は前月比0.4%上昇、前年比では3.8%上昇した。


金利先物市場はFRBが、利下げを徐々に加速するシナリオに修正した。

9月に0.5%の利下げを実施する予想は5割から3割弱まで低下した一方、年内3会合で5回分の利下げを実施する確率が3割から4割に上昇した。これは9月に0.25%の利下げを実施した場合、11月と12月に0.5%ずつ政策金利を下げることを意味する。今週発表のCPI次第で、9月の0.25%か0.5%かの道筋が見えてくるか?



ドル円:雇用統計を受けて、年内利下げ幅観測拡大

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)

9月17〜18日開催の次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ実施が確実視される中、米経済指標が雇用や消費の底堅さを示し、米経済がソフトランディング(軟着陸)観測から、一段の急激な円高・ドル安は見込みにくいとの見方から戻りを見せたが上値は限定的だった。

4日発表の米7月雇用動態調査(JOLTS)求人件数は767.3万件となり、市場予想(810.0万件)を大きく下回り、5日の米8月ADP雇用統計は前月比9.9万人増となり、市場予想の14.4万人に届かず、前回値も下方修正された。

雇用統計

注目の8月の米雇用統計では、労働市場の一段の減速を示し、一時141円78銭と8月5日以来の円高・ドル安水準を付けた。雇用者数が大幅に下振れせず、失業率は4.2%と7月(4.3%)から低下。平均時給の伸びは市場予想を上回り、米労働市場の急激な悪化を示さなかったとの見方から、雇用統計発表の直後に144円20銭まで反発する場面もあったが、戻りは売られた。米長期金利は一時3.64%と2023年6月上旬以来の水準に低下(債券価格は上昇)した。

雇用統計後に講演した米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事などが大幅利下げへの支持を明確にしなかったと受け止められた。米短期金利先物市場では9月17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ幅が通常よりも大きい0.5%になるとの予想確率が低下。一方、年内の利下げ幅予想は、拡大。

140円の攻防戦

8月安値~心理的節目140円の攻防戦へ。140-150円レンジが継続するのか、レンジが切り下がるのかが焦点。米大統領選挙討論会が注目。過去の米大統領選挙年の9月~10月のドル円は、次期政権の通貨政策を見極めようと様子見ムードが強まる傾向がある。月間騰落傾向は円高ドル安が優勢の時間帯。



金:米利下げに伴う押し目買い基調に変化なし

【今週見通し・戦略】

NY金(12月限)

パウエル議長のジャクソンホール会議での講演(政策を調整する時期が来ている)受けて、NY金(12月限)は、4月以降のレンジ上限の2500ドル~2540ドルを上抜けて上げ加速となった。金と相関の高いユーロドルの上昇、米10年債利回り低下が追い風となった。

レンジ上放れ

8月末にかけて発表された米経済指標が雇用や消費の底堅さを示し、米経済がソフトランディング(軟着陸)へ向くとの観測から、ドル反発に連れて調整安となったが、これまでの上値抵抗が下値支持として機能した。

先週発表された米経済指標は、米景気後退を示唆するものが増え、金の下げは限定的だった。前週末は、最高値近辺で推移していた中、利益確定の売りで3日ぶりに反落した。

押し目買い基調

8月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比14万2000人増で市場予想の16万人増を下回った。7月の非農業部門雇用者数は11万4000人増から8万9000人増に下方改定され、6・7月分の雇用者数は計8万6000人減少した。雇用拡大のペースが鈍化していることを示した。失業率は4.2%で前月の4.3%から小幅低下。市場予想に並んだ。平均時給は前月比の上昇率が0.4%と、市場予想(0.3%)以上だった。失業率が改善するなど強弱の入り交じる内容で、米利下げペースについては、「不透明なまま」との見方が強く、年内の利下げ幅も振れがあるが、9月に利下げ開始は確実の様相で、過去の米利下げ局面下における金相場の値動きを振り返ると、利上げ停止で底固めを行い、利下げ開始と歩調を合わせるかのように、上げ足を強めている。9月の米利下げ開始で「知ったら終い」的な反応を一時的に見せたとしても、それは、金相場上昇の「終わりの始まり」ではなく、金相場本格上昇の「始まりの始まり」となるだろう。


市場の関心は9月10日の「トランプVSハリス」のTV討論会に向かう。接戦が予想される米大統領選挙は11月の選挙結果が出ても双方が敗北宣言を出さないなどの事態も予想され、金の押し目買い基調は継続するだろう。



【米PCE】

米国 ADPと米雇用統計



【米新規失業保険申請件数】

JOLTS求人件数



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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