金:レンジ上放れ|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:レンジ上放れ|【Weekly Report】週間予定

NSトレーディング 菊川弘之
2024年8月19日

週間展望(8/19~8/25)

週間予定:ジャクソン・ホール会議

【週間スケジュール(8月19日~8月25日)】

・閉会中審査開催 植田日銀総裁と鈴木財務相が出席、5-6日の史上最大の株価乱高下について説明する


・ジャクソンホール会合 「金融政策の有効性と伝達の再評価」パウエルFRB議長が経済見通しについて講演。

 植田日銀総裁は、23日に衆議院財政金融委員会に呼ばれており、不参加。


・7月FOMC議事録 パウエル議長「早ければ9月に利下げ検討」発言


・8月豪中銀議事録 ブロック総裁「必要ならば追加利上げ躊躇しない」とタカ派姿勢堅持


・7月ECB議事録 9利下げのヒント示すか ラガルド総裁「あらかじめ決まった道筋はない」と発言


・中国政策金利 利下げ期待高まるものの引き下げたところで中国経済への影響は限定的にとどまる公算



前週:岸田総理、総裁選への出馬を見送る

【自民党総裁選】

日本 2024年自民党総裁選挙の仕組みについて

岸田文雄首相(自民党総裁)は14日、9月の自民党総裁選への不出馬を表明した。総裁選は党の幹部や閣僚も出馬しやすくなり、混戦見通し。

今回の総裁選は首相の1期3年の総裁任期満了にあわせて実施する。選挙日程は党選挙管理委員会が8月20日に決める。党の規定に基づき9月20日から29日の間に投開票する。


立候補するために、党所属国会議員20人の推薦が必要となる。


総裁選は党所属の国会議員が1人1票を持つ「国会議員票」と、全国の党員・党友の投票で配分を決める「党員・党友票」の合計を競う。今回は議員票367票、党員・党友票367票の合計734票で争う見通し。


現職総理が出馬しないことで、今回の総裁選に多くの自民党政治家の出馬が予想される。このため、第1回投票で過半数の票を獲得できる候補者はいない見通し。


1回目の投票で過半数を取る候補者がいない場合、上位2人の決選投票になる。決選投票は議員票367票、各都道府県連に1票ずつ割り振る47票の合計414票で総裁を決める。決選投票になると議員票の比重が一気に高まる。このため、勝ち馬に乗ろうとする動きが加速しやすく、1回目の投票と決選投票の結果に大きな差が出るケースも想定される。


第1回投票では議員票が割れることが予想され、党内論理よりも、世論の動向がポイントとなる。決選投票では、麻生副総裁と菅前首相の2人のキングメーカーに加え、岸田首相の意向を踏まえ、どう集約されていくかが決め手になりそうだ。これらを崩すような「風」が起きるか否かにも注目したい。



ドル円:大幅利上げ観測後退も、利下げの流れに変化なし

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)

7月の米雇用統計が市場予想を下回り、米景気後退懸念が更に強まり、200日移動平均線~支持線の152円割れから下げ加速。141円台までの大幅続落となった。年初からの上昇をほぼ全値戻した(往って来い)だけでなく、2023年安値を起点とした上昇トレンドも割り込んできた格好だ。足元での急落劇の背景は、円キャリートレードの巻き戻しと見られている。

円キャリー

8月初旬の円キャリートレードの巻き戻しと見られた世界的な株価急落劇も落ち着きを見せ、株価はV字で戻りを見せ、ドル円も8月5日の長い下ヒゲを起点に自律反発となっている。CFTC達玉明細でも、大口投機玉は円の売り越しから買い越しへ途転した。


7月の米小売売上高が市場予想を上回り、ウォルマートの決算を受けたNY株式市場の上昇もあり、緊急利下げや、大幅利下げ観測が後退し、ドル買いが優勢になった。7月の雇用統計をきっかけに、市場で広がっていた米経済の下振れへの警戒が後退。FedWatchが示す利下げ予想も、9月の0.5%利下げは急速に後退し、0.25%の利下げがコンセンサスになっている。

大幅利下げ観測後退

7月の米住宅着工件数が前月比6.8%減の123万8000戸(年率換算)と2020年5月以来の低水準となり、市場予想(134万戸)を下回った。先行指標の住宅着工許可件数も市場予想に届かなかった。ハリケーンの影響があったとされるが、高金利が米景気の重荷となっているとの見方も意識され、前週末のドル円は、149円40銭と約2週間ぶりの円安・ドル高水準を付けた事もあり、短期的な買われ過ぎ感も強く、持ち高調整の円買い・ドル売りで反落した。


米国が9月FOMCで利下げする流れに変化はなく、200日移動平均線が上値抵抗として機能している。目先の底は確認したものの、上値も重い印象だ。

FRB議長講演

22-24日に開催される米カンザスシティー連銀主催で開催される経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が注目。 FRBによると、パウエルFRB議長は23日にジャクソンホール会合で講演を行うと発表した。現地時間午前10時(日本時間23時)に始まる。200日移動平均線を上値抵抗とした戻り売り基調へ。1番底候補の攻防が焦点。



金:レンジ上放れ

【今週見通し・戦略】

NY金(12月限)

8月初旬の円キャリートレードの巻き戻しと見られた世界的な株価急落劇も落ち着きを見せ、株価はV字で戻りを見せる中、緊急利下げや、大幅利下げ観測が後退し、ドル買いが優勢になった場面で、NY金は上値が抑えられたものの下値は限定的。


前週末のNY金(12月限)は、予想以下の米住宅着工件数を受けて上値を伸ばした。4月以降のレンジ上限の2500ドル~2540ドルを上抜けて上げ加速。その後は、米ミシガン大消費者信頼感指数の上昇を受けて上げ一服となったが、ドル安を受けて押し目は買われ、これまでの上値抵抗が下値支持に変化してきた。


7月の米住宅着工件数は前月比6.8%減の123万8000件と、20年5月以来の低水準だった。市場予想は133万件。一方、8月の米ミシガン大消費者信頼感指数(速報値)は67.8と前回の66.4(確報値)から上昇したが、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しに変わりはなく、ドル安が続いたことを好感した。シカゴ連銀のグールズビー総裁は16日、「経済は過熱しているようにはみえない」と語り、必要以上に金融引き締めを続けるべきでないとの姿勢を示した。

押し目買い基調

過去の米利下げ局面下における金相場の値動きを振り返ると、利上げ停止で底固めを行い、利下げ開始と歩調を合わせるかのように、上げ足を強めている。(8/16付:市場分析レポート「米利下げ観測に変化なし」参照)。

7月22日付:市場分析レポート「米利下げ開始後も、円建て金は優位性」で指摘したように、ドル建て金以上に、過去の米利下げ局面では、円建て金は上昇している。米大統領選挙の不透明感は強く、世界各地で地政学リスクの火種が燻る中、金の押し目買い基調は継続するだろう。「買えない相場は強い」との相場格言を地で行く流れとなりそうだ。



【米小売売上高】

米 小売売上高(前月比)



【米新規失業保険申請件数】

米国 新規失業保険申請件数



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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