金の価格形成の主役はアジアへ移行|月騰落率(NY金・OSE金)・NY金(下期累積パフォーマンス)|【Monthly Report】月間展望(7月)
2024年7月1日
~7月1日~7月31日 ~
このページで知れること(目次)
ドル円:37年ぶり円安 日米欧金融政策決定会合・ 2022・24年介入・為替報告書
金:金の価格形成の主役はアジアへ移行 月騰落率(NY金・OSE金)・NY金(下期累積パフォーマンス)
7月注目スケジュール:FOMC・雇用統計・ECB理事会・日銀金融政策決定会合
ドル円:37年ぶり円安
日米欧金融政策決定会合・ 2022・24年介入・為替報告書
【今月見通し・戦略】
6月のドル円は、日本のGW中に実施された政府・日本銀行による覆面介入(介入総額は9兆7885億円。4月29日と5月2日に実施)で付けた151円台を底値に下値を切り上げる展開となった。
5月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、物価上昇の勢いが鈍っているとして円買い・ドル売りが優勢だった場面もあったが、米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を据え置いたと同時に参加者の政策金利見通し(ドットチャート)では年内の利下げが1回になるとの予想が示された。
日銀金融政策決定会合では、国債買い入れの減額について、次回7月会合で具体的に決める方針を示した。具体策の発表が先送りされたことで、発表後は、ドル買い円売りが進んだ。
更に、欧州議会選挙を受けてフランスで国民議会(下院)解散と選挙の実施が決まり、欧州政治の混乱への警戒感から幅広い通貨に対してユーロが売られたこともあり、ドル円は34年ぶりの高値水準まで続伸した。介入警戒感はあったものの、20日に米財務省が日本を為替操作「監視リスト」に指定したことで、為替介入を仕掛けにくくなったとの見方も出ていた中、日本政府は28日、神田真人財務官が退任し、後任に三村淳国際局長が就く人事を決めた。神田財務官は2022年9~10月と24年4~5月の円買いの為替介入を主導してきたため、退任で介入の手が緩むとの見方があった。月末や四半期末に伴うドル買い需要もドル円の買い要因となった。
7月は悪い円安が意識され始めており、追加介入の動向や、日米欧の金融政策に加えて、英・仏の選挙動向にも影響を受けそう。過去の季節傾向では、徐々に円高圧力が増していく時間帯に向かう。
~日米欧金融政策会合スケジュール・ドル円~
【日米欧金融政策決定会合】
【ドル円(22・24年介入)】
「監視リスト」対象国・地域と制裁措置を査定する条件
金:金の価格形成の主役はアジアへ移行
月騰落率(NY金・OSE金)・NY金(下期累積パフォーマンス)
【今月見通し・戦略】
先月レポートでは『内外の金市場も「6月の弱気傾向」が確認できるが、NY金の7月の切り返しは大きく、円建て金は7-9月にかけて、堅調推移となっている。~中略)。米国の覇権・ドル基軸通貨の揺らぎという大きなテーマが材料視される中、季節的な安値が出やすい6月は、中長期的な買いを仕込む良い時間帯かもしれない。
94年以降のデータでは、「6月末に買い、12月末に売る」累積パフォーマンスの優位性が確認できる。』と指摘したが、強気の雇用統計に加えて、準備資産である金の積み増しを1年半に渡って続けていた中国人民銀行(PBOC)が5月の買い増しを見送ったことなどが嫌気されて、6月の金相場は内外共に上値の重い展開となった。
ただし、ネックライン水準である2300ドル水準では押し目買い意欲も強く、2300ドル台を維持している。ネックライン割れからの急落リスクは残るものの、ネックライン割れがない場合は、ボックス相場(2300ドル~2500ドル)放れに付く戦術、もしくは、ネックライン水準で試し買い・ネックライン割れでの分割買いが有効であろう。
JPX金もNY金同様、ネックラインを維持。悪い円安が加速するなら、円建て金の優位性は増していくだろうし、ドル円が反転した場合でも、今度はドル建て金の上昇に強く反応しそうだ。
6月9~11日に行われたアジア太平洋貴金属会議でも、欧米の金価格決定権が落ち込み、アジアが中心になりつつあると議論された。ここ一年以上は、西側マーケットが米金利高を理由にどれだけ売っても大きく下がらず、既に金の価格形成の主役はアジアにあるとされた。欧米の金融要因で売られた安値は、アジアの実需が買い支え、米選挙に伴う混乱や、地政学リスクの高まりなどを材料に高値を更新していく流れが続きそうだ。
~月間騰落率(NY金・OSE金)・金下期累積パフォーマンス~
【月間騰落率(NY金)】
【月間騰落率(OSE金)】
【金下期累積パフォーマンス】
7月注目スケジュール:
FOMC・雇用統計・ECB理事会・日銀金融政策決定会合
日銀は6月の金融政策決定会合で長期国債の買い入れを減額する方針を決め、次回7月会合で今後1~2年間の具体的な減額ペースを発表することを明らかにしている。
また、植田総裁は国会で、7月会合について「場合によって政策金利が引き上げられることも十分あり得る」などと述べており、160円超での円安進行下、金融政策正常化に向けた決定内容が注目。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置き、年内3回を見込んでいた利下げ見通しを1回に修正する政策金利シナリオを公表した。その後も米当局者からは利下げに慎重な発言が多い。
欧州では、18日に欧州中央銀行(ECB)理事会が開催される。ECBは6月の理事会で、4年9ヶ月ぶりに政策金利の引き下げを決めた。ただ、ラガルド総裁は記者会見で、今後の利下げペースについては「データ次第」としてガイダンスを示さなかったことなどから利下げを急がないとみられてる。
大統領選挙TV討論会後、急速にバイデン降ろしの声が高まっており、最終的に民主党候補が誰になるのかにも注目が集まる。
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。