2023年安値起点とした上昇チャネル上限の攻防|【Weekly Report】週間予定
2024年6月3日
週間展望(6/3~6/9)
このページで知れること(目次)
週間予定:米雇用統計。ECB理事会。ブラックアウト期間
前週:介入実績
ドル円:150-160円のレンジ相場放れ待ち
金:2023年安値起点とした上昇チャネル上限の攻防
【米PCE】
【中国製造業PMI】
金ETF
週間予定:米雇用統計。ECB理事会。ブラックアウト期間
・ブラックアウト期間入り(金融政策に関する発言自粛)
・ECB理事会 利下げの可能性。7月に追加利下げあるのか否かが焦点
・カナダ中銀政策金利 利下げの可能性。4月CPIは+2.7%とコロナパンデミック時の21年3月以来の低水準
・日本4月実質賃金 春闘大幅賃上げの影響が反映し始める見通し、減少幅は大きく縮小見込み
・米雇用統計 前回は雇用者数が予想以上に伸び鈍化、失業率は悪化
前週:介入実績
【為替介入実績】
財務省は5月31日、4月26日から5月29日の為替介入実績を公表した。介入総額は9兆7885億円だった。4月29日と5月2日に実施したとみられる円買い・ドル売りの介入を反映。2022年10月以来およそ1年半ぶり。過去の円安局面での介入と比べて過去最大となった。
4月29日は一時1ドル=160円台と34年ぶりの円安水準まで続伸した後に、154円台まで急激に円高が進んだ。
5月2日は早朝に157円台から4円ほど急落。
22年9~10月の円安局面では3回の円買い介入を実施し、計9.1兆円を投じた。今回はそれを上回った。
介入直後に実施を公表しない覆面介入だった。日本の単独介入だったとみられる。約24年ぶりの円買い介入だった22年9月22日の実施時は、鈴木俊一財務相が記者会見で公表した。
31日はおよそ1ヶ月間の総額だけを開示した。実施日や日次の介入額は四半期ごとに発表し、4~6月期の日次実績は、8月上旬に公表する。
ドル円:150-160円のレンジ相場放れ待ち
【今週見通し・戦略】
ドル円は、堅調な米経済指標やFRB高官の発言に加えて、FOMC議事要旨を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB) による早期利下げ観測が後退。戻りを試す流れが続いているが、G7財務相・中央銀行総裁会議に出席した神田真人財務官が24日夕、投機などによる為替相場の過度な変動に対しては、政府による円買い・ドル売り介入を含む適切な措置が「許されている」との考えを示し、米国と為替や金融市場動向に関し「極めて緊密な意思疎通を続けてきたし、今後も続けていく」と語ったことで、上値は限定的。
国内では長期金利が上昇基調で推移しており、1.00%を超えた後も、じり高基調で推移していることも、ドル円の上値抑制要因。30日には一時1.10%台に乗せた。150-160円のレンジ相場放れ待ちが継続。
今週は、米雇用統計を中心として注目度の高い経済指標の発表が相次ぐ。6月11~12日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、一連の経済指標の結果を受けて、利下げの時期に関しての思惑が交錯しそうだ。ブラックアウト期間入り(金融政策に関する発言自粛)で、FRB要人の発言はなく(13日まで)、事前予想と大幅乖離するような極端な数字が出なければ、様子見ムードが高まる可能性。
日銀副総裁発言
財務省による為替介入実績によると、介入総額は9兆7885億円だった。4月29日と5月2日に実施したとみられる円買い・ドル売りの介入は、過去の円安局面での介入と比べて過去最大となったことで、160円超場面では介入警戒感が高まりそう。前週は内田真一副総裁の講演を受けて日銀が国債買い入れの減額や追加利上げに動くとの観測が強まった。
今週は4日に10年債、6日に30年債の入札がある。入札結果を受けて国債売り(金利上昇)が進む可能性には注意。ECB理事会での利下げ後のユーロの動きにも注意。
金:2023年安値起点とした上昇チャネル上限の攻防
【今週見通し・戦略】
トランプ前米大統領が不倫口止め料の不正処理裁判で、陪審団は5月30日、同氏を34件の罪状すべてで有罪とする評決を下した。トランプ氏は控訴するとみられるものの、4月ロイター世論調査では、共和党員の4人に1人は、トランプ氏有罪確定なら投票しないと回答。これに対して、ニューヨークタイムズ世論調査(4/28 ~5/9)で、「トランプ氏は公正な裁判を受けているか?」という質問に「はい」45%。「いいえ」49%と、この裁判を公正ではないと考えている有権者も多い。どちらが大統領になっても、米国内の分断による政治的な紛争が予想され、連邦政府から19の州が離脱し、政府軍との内戦勃発が描かれた全米一位の興行成績の映画「CIVIL WAR」が現実化しないとは言い切れない状況だ。
米財政破綻の恐れ
更に、米国や日本、ユーロ圏全てで債務が過剰な状態にあり、債務増加が通貨全般の信認低下につながっている。財政赤字や国債増発は、先進各国に共通、世界のほとんどの中央銀行にいえることだ。デイビッド・マルパス氏(元世界銀行総裁)は、「米国政府は高額の公的債務を抱えながら過剰な支出を行うために、早ければ2025年にも財政破綻しうる」と警告している。
金相場は、FOMC議事要旨やFRB高官発言に加え、米SECによる予想外の暗号資産イーサリアム現物の上場投資信託(ETF)上場申請書承認で、短期的には金から暗号資産への資金シフトも予想されたことから調整入りとなっているが、米国で1月にビットコインの現物に連動するETFが承認された時にも、一時的に金からビットコインETFへの資金シフトで金は下落したが、ビットコイン価格が金1㎏価格を超えたところで、ビットコインは利食い反落・金は押し目を買い直され、史上最高値を更新した。今回も同じような流れとなるだろう。ECB理事会の利下げ絡みでユーロ安となれば、金の上値を押さえそうだが、短期売買で小幅な下げを狙うよりも、チャート上の底打ち確認後に買いを入れた方が、狙える利幅は大きくなると考える。中東の地政学リスク、産金国の南ア総選挙後の混迷など、強気要因は多い。
【米PCE】
【中国製造業PMI】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。