短期的な買われ過ぎ感による調整に注意|【Weekly Report】週間予定
2024年4月15日
週間展望(4/12~4/21)
このページで知れること(目次)
週間予定:国連安全保障理事会緊急会合・G7首脳電話協議・G20
前週:米CPI・PPI
ドル円:三角保合い上放れ
金:短期的な買われ過ぎ感による調整に注意
【先物市場が織り込む利上げペース】
【OPEC財政均衡価格】
金ETF
週間予定:国連安全保障理事会緊急会合・G7首脳電話協議・G20
・14日に国連安全保障理事会緊急会合・G7首脳電話協議
・15日~21日にワシントンでG20開催。
・15日に米小売売上高。
・16日に中国GDP。
・中国新築・中古住宅価格
・19日は日本消費者物価指数
・日本時間20日6時から植田日銀総裁がピーターソン国際経済研究所「最近の日銀の金融政策枠組みの変化」について語る。
前週:米CPI・PPI
【米CPI・PPI】
米労働省が10日発表した3月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比3.5%上昇。前月の3.2%上昇から加速し、昨年9月以来の大幅な伸びとなった。市場予想の3.4%も上回った。ガソリンや住居費の上昇が背景。前月比では0.4%上昇と、2月の伸びと並んだ。市場予想は0.3%上昇。
6月にも利下げと見る向きが多かったが、CPIを受け、利下げ開始が7月か9月になるとの観測が広がり、米長期金利が上昇。10年債入札も需要の弱さを示す結果となり、米長期金利が5ヶ月ぶりの高水準を付けた。
3月の米PPIは前月比0.2%上昇と、2月の0.6%上昇から伸びが鈍化した。市場予想の0.3%上昇も下回った。サービス価格の上昇が財(モノ)の価格の下落によって相殺された。エネルギーと食品を除くコア指数の伸びも鈍化した。市場予想から全般に上振れしたものの、前日発表の消費者物価指数(CPI)ほどインフレ懸念を強める内容ではなく、米連邦準備理事会(FRB)が早ければ7月下旬に利下げを開始するとの見方が強まった。
ドル円:三角保合い上放れ
【今週見通し・戦略】
ドル円は、三角保合い上放れとなった。3月のCPIの前年同月比の上昇率は3.5%と2月(3.2%)から加速し、市場予想(3.4%)を上回った。エネルギーと食品を除くコア指数も3.8%と市場予想(3.7%)以上だった。6月にも利下げと見る向きが多かったが、CPIを受け、利下げ開始が7月か9月にになるとの観測が広がり、米長期金利が上昇。
ドル円は152円を上抜き、上げ加速となったが、本邦当局からは口先牽制以上のアクションはなく、週足終値ベースで、152円水準を維持したことで、押し目買い基調に変化なしとの見方が強まっている。まずは154~155円が意識される。
日銀はマイナス金利政策を解除したものの、緩和的な金融環境が当面続く可能性が高いと示唆したことや、3月のFOMC議事録でも利下げを急いでいない(金利高止まり)ことが確認され、円安ドル高トレンドが崩れにくい地合いとなっている。
長期的には、米覇権・ドル基軸通貨の揺らぎという大きなテーマはあるものの、当面は、米経済成長率は日本を上回る状況が続くと見られること、日本から海外への直接投資(対外直接投資)は経済成長期待などから、対内直接投資を上回っており、直接投資の流出超は続く見通しであることも円安ドル高の一因。
G20後に注意
今週はG20が開催され、鈴木財務相は「ドル独歩高への懸念が議論される可能性ある」と発言しており、G02で各国に事前通達後に円買い介入の可能性もあり要注意。20日には植田日銀総裁がピーターソン国際経済研究所で「最近の日銀の金融政策枠組みの変化」について語る予定で日本の政策変更観測が材料視される可能性にも注意したい。大口投機玉の円売り越しも大きく膨れ上がっており、巻き戻しも入りやすい。ただし、調整が入ったとしても、150-152円を維持できれば、押し目買い基調に変化は出難い。同水準の攻防が焦点。
金:短期的な買われ過ぎ感による調整に注意
【今週見通し・戦略】
4月に入ってからの米金利高を嫌気してNY株価は下落したが、内外共に金価格は、連日の史上最高値を更新した。単なる値頃感で新規売りすると踏まされる 相場格言の「買えない相場は強い(高い)」を地で行く展開だ。
地政学リスクの高まり
史上最高値更新の理由は、一つが中東の地政学リスクの高まりだ。
シリア首都ダマスカスのイラン大使館に4月1日イスラエル軍戦闘機によるものとみられる空爆があった。イスラエルはイランの代理勢力(ハマス・ヒズボラ・フーシーなど)と、これまでも散発的に戦火をまじえてきたが、大使館を標的にした直接攻撃は異例だ。休場中の13日夜から14日にかけて、イランは、イスラエルに対して無人機などによる報復攻撃を実施した。周辺国を巻き込み中東全面戦争に広がる恐れが、金利高にも関わらず金が史上最高値を更新している一因だ。イランは「問題はこれで終わったものと考える」とし、14日に国連安全保障理事会緊急会合・G7首脳電話協議が開催され、両国に自制を求める流れだが、イスラエルが報復攻撃をするか否かが焦点。報復の連鎖となれば金の上値余地は大きくなる。一方、報復の連鎖に陥らないようなら、ここ最近の短期的な買われ過ぎ感に対する調整も意識されるだろう。
インフレ警戒
高値更新のもう一つの理由は「インフレ再燃」・「スタグフレーション懸念」だ。サマーズ元財務長官は、今回のCPIを受けて「次の政策金利の動きが下向きではなく、上向きになる可能性を真剣に考えるべきだ」と指摘している。
先週は日米首脳会談が行われたが、同じタイミングで台湾前総統とシンガポール首脳が、習近平国家主席と対談。韓国の総選挙では親日の与党惨敗で、アジアにおける日本の立ち位置は、米国の「内向き指向」と共に厳しくなっていく。ここに焦点が当たってくると円売りや金買いの材料となる。円建て金の優位性は継続だ。
【先物市場が織り込む政策変更ペース】
【OPEC財政均衡価格】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。