Monthly Report 2023年2月
2023年2月1日
~2月1日~2月28日 ~
このページで知れること(目次)
ドル円:サプライスが起きやすい2月相場 1月効果・米債務上限問題比較(2011年&2023年)
金:脱ドル化の動き、高まる流れ 中央銀行の金購入量推移・米利上げ終了前後1年のドル円・NY金
2月注目スケジュール:FOMC・雇用統計・ECB理事会・日銀総裁人事
ドル円:サプライスが起きやすい2月相場
1月効果・米債務上限問題比較(2011年&2023年)
【今月見通し・戦略】
為替市場の「1月効果」とは、1月のトレンドが1年のトレンドを決定するというものです。1月の月足が陽線(ドル高)なら年足も陽線(ドル高)に、またその逆も同様というものです。特に、1985年から2000年代前半までは、確率の高いアノマリーでした。リーマンショック以降、欧州ソブリンリスクや3.11などのサプライズが相次いだ時期は、アノマリーは薄れたが、2016年以降は、改めて「1月効果」がワークし始めている。
また、2016年以降の2月は、1月末からのトレンドの「逆張り」アノマリーがワークしている。
更に、2月は下旬~3月上旬にかけて「サプライズ」が起きて、変動率が高まる年もあるということに注意したい。「理論的には説明できないが頻発する」と言うアノマリーの定義にピッタリの出来事だ。
米ねじれ議会での債務上限問題や、ドル離れが反米諸国中心に広がる中、ドルの上値は限定的か?FRBの投票権バランスも、昨年と比べてハト派寄りだ。
政府は黒田日銀総裁の後任人事案を副総裁2人の候補案とあわせて2月に国会へ提示予定。国会で同意が得られれば、政府が任命する。黒田氏は4月8日、雨宮正佳、若田部昌澄の両副総裁は3月19日に任期満了を迎える。
~1月効果・米債務上限問題比較~
【1月効果】
【米債務上限問題比較(2011年&2023年)】
金:脱ドル化の動き、高まる流れ
中央銀行の金購入量推移・米利上げ終了前後1年のドル円・NY金
【今月見通し・戦略】
「利上げ停止時期」の見方は分かれているものの、過去の例では利上げ終了前に先行して「米金利は頭打ち・NY金は底打ち」となっており、金相場は「底を付けた相場は、天井を付けるまで高い」と言う流れに変化はないだろう。
ゴールドマン・サックスは1月メモで「金について「米連邦準備理事会(FRB)が成長懸念にますますシフトし、利上げペースを鈍化させ、ETF(上場投資信託)保有が安定化する可能性がある中、脱ドル化は金にとって非常に強気材料であり、持続的な上昇の頂点に立つ」とした。
昨年末には、サウジと中国が原油取引の人民元決済(ペトロ人民元体制)に軸を移し始めた。イラク戦争は「ペトロダラーからペトロユーロへの乗り換えは許さない」という米国の意思を示すものとなったが、ドル基軸通貨体制を支えてきた「ペトロダラー体制」に、中国・サウジが風穴を開ける流れだ。
1月にはブラジルのルラ大統領とアルゼンチンのフェルナンデス大統領は、共通通貨の構築を含む経済統合深化を目指す考えを示した。スペイン語で南を意味する「スル」が共通通貨の名称として検討され、実現すればEUに次ぐ規模になる見通し。為替取引での米ドルへの依存を低減する狙いがある。ロシア・中国だけでなく、いわゆる「新G8」(2022/8/18付け「モスクワ・ワールド・スタンダード(MWS)参照」)諸国が、ドル離れを進めており、金準備を増やしている動きが続いている。
三角保合い上放れた円建て金は調整が入っても、金(1㎏)の小売価格(手数料・消費税込)が1000万円を超えてくるのも時間の問題となってきた。既存のレポートやTVでお話ししている通り、「(1g)8000円が抵抗線から支持線に変わり、(1g)1万円以下は安かった」と感じる時代もそう遠くないだろう。
~中央銀行の金購入・米利上げ終了前後1年のNY金~
【中央銀行の金購入量推移】
【利上げ終了前後1年のNY金】
2月注目スケジュール:
FOMC・雇用統計・ECB理事会・日銀総裁人事
1月31日~2月1日には、米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、22日には議事要旨が公表される予定。前回2022年12月の会合では、利上げ幅が0.75%から0.50%へと縮小され、利上げペースは減速。1月31日~2月1日の会合では利上げ幅が0.25%へと縮小されるとの見方が市場コンセンサス。消費者物価指数(CPI)や米個人消費支出(PCE)物価指数の上昇ペースは頭打ちとなっており、インフレ懸念は後退している。
2月2日には欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(BOE)の金融政策決定会合が予定されています。欧州でも依然インフレが高水準であるため、ECBやBOEは大幅な利上げを継続すると見込まれる。
日本では、4月の黒田日銀総裁の任期満了を控えて、後任の総裁人事案が国会に提示される予定。現在の大規模な金融緩和政策は今後修正されると見る向きも多く、その行方の鍵を握る新日銀総裁の人事案に注目が集まる。
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。