Monthly Report 2022年12月 | 【公式】日産証券の金投資コラム

Monthly Report 2022年12月

調査課 菊川弘之
2022年12月1日

~12月1日~12月31日 ~

ドル円:米利上げ最終着地点を探る動きCME Fed Watch・ドル円長期チャート

~米利上げ最終着地点を探る動き~

12月騰落率(ドル円)

【今月見通し・戦略】

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は11月30日、米ワシントンのブルッキングス研究所で講演した。利上げを減速する時期について「早ければ12月の会合になる」と表明。利上げペースを緩やかにすることは、過度の引き締めリスクを低減させるよい方法だとした。


FRBはすでに「かなり積極的な」利上げを行っているとして、インフレの早期鎮静化のためだけに一段の大幅利上げで経済を破綻させることはしないと言明した。ターミナルレート(利上げの最終到達点)の推測は示さなかったが、9月の政策金利見通し(ドットチャート)で示した4.6%より「やや高く」なる可能性が高いと述べた。


FOMC(12/14)での利上げ幅予想

米10年債とドル円(日足)


FRBは11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、4会合連続となる0.75%の利上げを決定。12月会合で、利上げ幅を0.5%に圧縮するとの見方がコンセンサスになりつつある。来年前半までは、利上げは続くと見られるものの、小幅にとどまると見られる中、ねじれ議会で米債務上限問題等が浮上してくると、ドル円の上値は限定的となりそうだ。

ドル円98年高値と22年高値揃え


98年高値と22年高値を重ね合わせた自己相似(フラクタル)を形成中で、90日移動平均線~200日移動平均線のレンジ内で、次なる材料待ちとなりそうだ。



~FOMC政策見通し・ドル円長期チャート~


【FOMC政策金利見通し】

FOMC参加者による政策金利・経済見通し(中央値)


【ドル円長期チャート】

ドル円相場の推移



金:年末高アノマリーNY金(自己相似形)・NY金(月間騰落率)

~年末高アノマリー~

12月騰落率(NY金)

【今月見通し・戦略】

11月マンスリーレポートで≪金市場においても、年末高パターンが中間選挙年ではより顕著になっている。10月~11月初旬のNY金の安値は、年末高に向けての良い買い場になるかもしれない。安値売り込みは避けたい≫としたが、11月FOMC後のパウエルFRB議長会見で「早期の利上げ停止の検討を否定した」ことを受けたNY金の安値(11/3)を起点に下値を切り上げた。


10月4日付け「市場分析レポート」の「NY金、自己相似形(フラクタル)」で採り上げた自己相似パターンも継続している。12月以降のFOMCでも米利上げ継続が予想されるものの、パウエル議長は11月30日での講演で、利上げを減速する時期について「早ければ12月の会合になる」と表明しており、NY金の下値、米長期金利の上値はそれぞれ限定的だろう。前回の米金利引き上げ局面~引き下げ局面への移行と同様なパターンが意識されそうだ。



12月騰落率(NY金)

金ETFの年初ピークからの資金流出(世界合計:約350トン、スパイダーゴールド約200トン)が金の下げ要因となっているが、WGC四半期報告によると、中銀による金購入量は1~9月の累計で673トンに達し、第三四半期の段階で、1967年以降の年間購入量を上回る規模となっている。


中央銀行の買いは、短期で売買するものではなく、一旦、買った金は、かなりの長期間、市場に出回ることはない。金ETFや、CFTC建玉明細での大口投機玉の買いは、割合短い期間で売却されたり、決済されることで市場の売り圧力となるが、中央銀行の買いは、根雪のように価格を下支える性質がある。


また、暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディングの破綻も、「通貨の顔」や「安全資産」としての金の歴史の長さ・深さを改めて意識させた。


金はゆっくりと、だが確実に下値を切り上げる展開が続きそうだ。



~NY金(自己相似)・米金利引き上げ~


【NY金(自己相似形】

NY金、高値揃えチャート(20年、22年)


【NY金と米利上げ】

NY金先物(中心限月)と米利上げ



12月注目スケジュール:FOMC・中国中央経済工作会議・ロシア・ウクライナ停戦協議開始が注目

12月注目スケジュール

11月開催分のFOMC議事要旨では、多くの参加者が利上げの減速を支持していることが明らかになり、11月末のパウエル議長講演で、利上げを減速する時期について「早ければ12月の会合になる」と表明したことで、FOMC(12月13日~14日)では、0.5%の利上げがコンセンサスになりつつある状況だ。米雇用統計でよほどのサプライズがなければ、リスクオンが続きそうだ。


ユーロ圏では、2023年1-3月期にかけて2四半期連続でマイナス成長となる可能性が高まっている一方、インフレ率は10月まで6ヵ月連続で過去最高を更新しており、15日のECB(欧州中央銀行)理事会では、利上げ幅が3会合連続なる0.75%となるのか、0.5%に減速されるかが焦点。なお、同理事会では、量的緩和策で膨らんだ保有資産を減らすQT(量的引き締め)に向けた方針についても話し合われる見込み。


中国では、上旬に中央経済工作会議が開催される予定。中国の来年の経済政策運営の基本方針が決定されることから、ゼロコロナ政策の行方に注目が集まる。

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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