Weekly Report 2022年11月21日(月) | 【公式】日産証券の金投資コラム

Weekly Report 2022年11月21日(月)

調査課 菊川弘之
2022年11月21日

週間展望(11/21~11/27)

週間予定:FOMC議事録、米耐久財受注、米製造業PMI

【週間スケジュール(11月21日~11月27日)】

米中間選挙で上院は民主党、下院は共和党が過半数を取った。議会の「ねじれ」で、米国の分裂は激しさを増しそうだ。


世界大戦・欧州大戦がギリギリの段階で回避された。世界の主要国の強い意志が示されたことで、停戦の可能性が浮上してくる。


感謝祭(Thanksgiving Day:2022年11月24日)に伴う各取引所の取引スケジュール

今週は、米感謝祭があり、週末にかけて薄商いとなる中、FOMC議事録、米製造業PMI、ミシガン大学消費者信頼感指数などが重なる23日以降が注意。


前週Review:欧州大戦・世界大戦をギリギリで回避

ポーランド着弾2人死亡

【NATO5条】

11月15日にウクライナの隣国ポーランド(NATO加盟国)領内にミサイルが着弾し、2人が死亡した。


NATO5条は加盟国に対する攻撃をNATO全体への攻撃とみなし、加盟国は攻撃された国の防衛義務を負う」集団的自衛権を定めていることで、「ロシアVSウクライナ」戦争から、「ロシアVS NATO」・「欧州大戦」へ戦争のステージが変化するのではないかと、世界中に緊張感が走った。


ゼレンスキー大統領は、「NATO加盟国に対するロシアの意図的な攻撃だ。行動が必要だ」と激しく非難したが、15日夜~16日朝にかけて、アメリカ、ポーランドやNATOの複数当局者が、ミサイルはロシアがNATO加盟国のポーランドに向けて意図的に発射したものだという見方に異議を唱えた。


バイデン米大統領は15日、「(ミサイルの)軌道から考えると、ロシアから発射されたとは考えにくい。いずれ分かるだろう」と述べ、ストルテンベルグNATO事務総長は16日、ウクライナの迎撃が原因だったと説明。ポーランドのドゥダ大統領も、着弾したロケット弾がロシアの意図的な攻撃だったことを示唆するものは一切ないと言明した。


「欧州大戦」・「世界大戦」と言う最悪な事態は回避したいという各国の強い意思が感じられており、国連人権監視団も、ウクライナの言い分を丸呑みしなくなっている。

支援疲れ

米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は16日の記者会見で、ロシアのウクライナ侵攻に関して「ウクライナが軍事的に勝利することも当面ないだろう」と指摘。 秋の降雨でぬかるみが増える季節を迎えたことで「戦術的な戦闘が鈍化すれば、政治解決に向けた対話の開始もあり得る」との見解を示した。


各国で支援疲れも表面化しており、停戦協議が始まる可能性が浮上してきた。


ドル円:ターミナルレートを探る展開

ドル円98年高値と22年高値揃え

【今週見通し・戦略】

先週レポートで≪一旦は、自律反発も想定される。ただし、145円水準を早々に回復できないと、日柄経過と共に、中立の時代から雲の下(弱気の時代)へ転じることになる。戻り売り基調が優勢となりそう。≫と指摘したが、ドル円は自律反発が入っているものの、戻りは鈍く、200日移動平均線を回復できず。98年相場と自己相似の強い展開となっている。


ドル円(日足)

利上げ減速に牽制も

10月の米生産者物価指数は、10月の米消費者物価指数に続き、市場予想を下回った。いずれも高水準ながら、低下傾向を見せている。なお、米消費者物価指数の下振れ以降は、市場では利上げペース減速期待が高まっている。米連邦準備制度理事会(FRB)高官からは、利上げペースの減速を示唆するような発言が出ている一方で、そうした動きをけん制する発言も出ている。


ブラード米セントルイス連銀がターミナルレート(利上げの終着点となる水準)について、市場の期待する4.75~5.00%に対して、「5.00~5.25%は最低水準」との見解を示した。さらに「十分に抑制的な水準としては5~7%になる可能性がある」指摘。先週末も、ボストン連銀のコリンズ総裁が18日、米CNBCのインタビューでインフレ抑制のため「0.75%(の利上げ)の選択肢もまだある」と述べた。前日のブラード総裁の発言に続き、利上げに前向きな姿勢を示したと受け止められ、CME FedWatchでは、0.75%の利上げ観測が、やや上昇している。


FOMC(12/14)での利上げ幅予想

もっとも利上げ停止のタイミングは、マクロ経済指標次第となりそうだ。12月FOMCまでには、米雇用統計、CPIなどの重要指標の発表が控えている。今週は、23日のFOMC議事要旨(11月1~2日分)がある。今後の利上げペースやターミナルレートなどに関して新たなヒントが出てくるかが注目。また、23日の米10月耐久財受注速報値、米11月製造業PMI速報値などの経済指標も注目される。


金:米CPIを受けて、底打ち確認

NY金、高値揃えチャート(20年、22年)

【今週見通し・戦略】

米連邦準備制度理事会(FRB)高官からは、利上げペースの減速を示唆するような発言が出ている一方で、そうした動きをけん制する発言も相次ぎ、米利上げペース減速の見方がやや後退。CME Fed ウォッチでは、12月のFOMCで、0.5%利上げの確率がやや頭打ちとなり、金利上昇を嫌気する格好でNY金の上値は抑えられた。


ただし、米金利上昇に伴うNY金の安値は、1600ドル台前半の安値で大底を確認した格好だ。12月以降のFOMCでも米利上げ継続が予想されるものの、ここからのNY金の下値は限定的。相場格言にある「底を付けた相場は、天井を打つまで高い」流れへ移行していくだろう。20年と22年の高値を重ね合わせたチャートでは、自己相似(フラクタル)の流れが続いており、押し目形成後は、改めて上値試しとなりそうだ。


米中間選挙で下院は民主党の善戦で共和党の圧勝には至らず。上院は民主党が勝利した。議会のねじれが生じた事で、政策運営が膠着状態になるのは確実。


NY金(12月限)

政策運営は困難

次期司法委員会委員長が確定の共和党ジム・ジョーダン議員は「FBI内部通報者からFBIが2020年選挙1ヶ月前にでたハンターの事件を隠蔽した」件について、共和党主導の調査委員会と司法委員会はFBI幹部を追及すると会見。下院多数派を獲った共和党調査委員会コマー議員は「ハンターは中国始め15ヶ国と違法な取引の疑いと人身売買組織との関わり。父ジョー・バイデンが主要な役割でメインの調査対象者とする」「ハンターと父ジョー・バイデンは、中共政府が米エネルギー企業の買収をする手助けして、巨額の利益を得てきた証拠が上がってきた」と記者会見で語った。これに対して、米司法省は、トランプ前米大統領を巡る刑事捜査を監督する独立した特別検察官を任命した。トランプ氏が2024年大統領選への出馬を正式に表明したことを受け、訴追すべき案件があるかどうかを判断する。

米国の負の側面(分断の深刻化・債務問題など)がクローズアップされてくると、金押し目は買われやすい。内外共に押し目買い戦略継続で。


金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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