Monthly Report 2022年10月 | 【公式】日産証券の金投資コラム

Monthly Report 2022年10月

調査課 菊川弘之
2022年10月3日

~10月1日~10月31日 ~

ドル円:単独介入効果は限定的
FOMC見通し・ドル円長期チャート

10月騰落率(ドル円)

【今月見通し・戦略】

財務省が9月30日に発表した8月30~9月28日の為替介入実績は2兆8382億円だった。9月22日に24年振りに実施した円買い・ドル売り介入を反映。円買い・ドル売りの1日の介入額としては過去最大規模となったが、ファンダメンタルズに反した単独介入効果は乏しく、時間稼ぎも、それほどできずに再び本邦の防衛線と意識されている145円水準の攻防に差し掛かっている。ここを上抜けてくると、98年高値の147円台~心理的節目150円が試される見通し。145円を特定の攻防ラインと見られるのを避けるため、147円台まで単独介入は見送られる可能性も想定しておきたい。

介入の原資となる外貨準備は8月末に1.29兆ドル(185兆円程度)だが、米国が他国を為替操作国と認定する基準の1つが「一定期間に国内総生産(GDP)比2%以上」となっており、日本の場合、11兆円程度が介入額の上限として意識される。既に手掛けた円買い額を引くと、約8兆円で、投機筋の立場からはターゲットにしやすい地合いだ。27年上値抵抗として機能してきた150円の攻防が重要。ここを上抜け来ると、長期のボックス相場の上放れとなる。

ドル円の動向を決める二大要因は「経常収支」と「日米金利差」と言われるが、9月のFOMCの政策金利発表では、3会合連続での0.75%の利上げを決定。年内は、あと1.25%の利上げが見込まれており、11月の会合で0.75%、12月の会合で0.5%の利上げとの見方が強まっている。

一方、黒田日銀総裁は9月22日の金融政策決定会合後の記者会見で、利上げの実施や、金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)の修正が「2、3年ない」と発言。また、8月貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆8173億円の赤字。2014年1月を上回り過去最大の赤字となった。年間ベースでも、過去最大を更新見通しだ。140円を下値支持として上値試しが続きそうだ。


10月16日付け「市場分析レポート:ドル円、98年との違いは?」も参照されたい。


10月のドル円の月間騰落率は、買い優勢な時間帯(32戦18勝14敗)。

【FOMC見通し】

FOMC参加者による政策金利・経済見通し(中央値)

【ドル円長期チャート】

ドル円相場の推移


金:改めて一番底を探る展開
10年債・ユーロ・NY金(週足・月足)

10月騰落率(NY金)

【今月見通し・戦略】

9月1日付け市場分析レポート「NY金、自己相似形(フラクタル)」で、『ネックラインを割り込んでくると、ダブルトップ完成から一時的に売り圧力が高まる可能性。』と指摘したが、引き続き、2011年高値を付けた時と自己相似の強い展開となっている。

NY金は一番底候補であった7月安値を割り込み、改めて一番底を探る流れとなっている。下値支持は、心理的節目1600ドル、1500ドルなどだが、価格帯別出来高は薄く、支持線としての信頼性は低い。一方、1470ドル~1180ドルが価格帯別出来高の厚い強い支持帯。

9月の金の下落は、米長期金利上昇以上に、英長期金利上昇の影響を受けたリスク回避の高まりが背景だったが、イングランド銀行の決定で、とりあえず下げ一服となった格好だが、米長期金利が6月高値を割り込み、ユーロドルがパリティを回復してこないと、NY金も戻りは売られやすいだろう。

一目均衡表からの下値目標は、E=1284.4ドル、V=1275.4ドルなどがカウント可能だ。値頃ではなく、長大陽線や、長い下ヒゲなどのチャート上の底打ちパターンの出現を待ちたい。

金が「安全資産」として本格的に上昇するのは、株価大暴落や恐慌、戦争となるような最悪のケースだ。そこまでに至らない間は、他のリスク商品とある程度、相関の高い場面が続きそうだ。ただ、最悪に近いケースを予想する向きも徐々に増えており、「安全資産」としての押し目買い意欲は強そうだ。「ロシア・中国」VS「欧米」の地政学リスク・世界的な景気後退リスクの高まりの中、中国共産党大会、米中間選挙などを控え、ここからの下値リスクと上値リスクを天秤にはかれば、買い場探しに分があると考える。

米長短金利の逆転が起きているが、最初に金利差逆転が起きてからリセッション入りまでは6~24ヵ月。平均16.3ヵ月後にリセッション入りしている。来年にかけてリセッション思惑は高まりやすい。

10月のNY金の月間騰落率は、売り方優勢な時間帯(32戦13勝19敗)。

【NY金・米10年債・ユーロドル】

米10年債利回りとNY金(12月限)とユーロドル(日足)

【NY金(週足・月足)】

NY金(週足)

NY金(月足)


10月注目スケジュール

10月注目スケジュール

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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  • 9日に日本11月勤労者世帯家計調査、米11月貿易収支、11日に日本11月景気動向指数速報値、米12月消費者物価指数、米新規失業保険申請件数、12日に日本11月経常収支、米12月生産者物価指数などがある。

  • ドル円は、11月13日に151.91円の高値を付け、昨年高値(151.95に迫ったものの、頭打ちし反落。11月14日に公表された米10月の消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回ったことがきっかけとなった。

  • 18日、19日に日本銀行金融政策決定会合。19日昼前後の会合終了後、結果が公表され、同日午後3時半から植田日銀総裁が会見を行う予定。

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