Weekly Report 2022年8月8日(月)
2022年8月8日
週間展望(8/8~8/14)
このページで知れること(目次)
週間予定:マクロ経済指標を受けたインフレ・景気後退の行方が注目
前週Review:「台湾封鎖」の予行演習
ドル円:米雇用統計を受けて急反発
ペトロダラーの揺らぎは、金の長期強気要因
金ETF
週間予定:マクロ経済指標を受けたインフレ・景気後退の行方が注目
今週は、雇用統計に続き、各マクロ経済指標を受けて、インフレ動向・景気後退観測の行方がどうなるかが注目。日本は週末にかけてお盆休みムード高まる。
ペロシ米下院議長の台湾訪問に対し中国は4日から大規模な軍事演習を実施し、緊張状況が高まっている。今後の制裁合戦の行方に注意。
「OPECプラス会合」では、9月日量10万バレルの増産が決定した。国連とトルコの仲介で合意したウクライナ産穀物輸出再開の最初の貨物船が2日夜、トルコ沖に到着。オデーサを含む3つの港からは「毎日1隻の船が出航する計画」。
前週Review:「台湾封鎖」の予行演習
【ペロシ下院議長訪台】
7月28日、バイデン米大統領と習近平国家主席の米中電話首脳会談が行われ、事前に「台湾問題に関する中国政府と中国人民の立場は一貫しており、中国の主権と領土の一体性を断固として守ることは、14億人以上の中国人の確固たる意志である。もし中国の民意に逆らって火遊びをすれば、大やけどを負うことになるだろう」と釘を刺したにもかかわらず、ペロシ下院議長は、8月2日に台北を訪問。蔡英文総統と面会した。
ペロシ議長は、天安門広場で天安門事件の犠牲者への哀悼を示した事もある対中強硬派として知られる。ダライ・ラマとも交流がある筋金入りのリベラル・人権派のトップとも言え、中国にとっては天敵と言ってよい人物でもある。 中間選挙後には議会の多数派を失い議長の座を降りる可能性が高く、82歳と言う高齢の為、レガシー作りとの報道もなされているが、トランプ前大統領が指摘したように、ペロシ議長の夫がNVidia株を購入することに関してインサイダー取引があったという批判をかわすための行動との見方も根強い。海上封鎖の予行
いずれにしろ、秋の共産党大会で三選を控えた習近平主席にとって、北戴河会議のタイミングに合わせたかのようなペロシ下院議長の訪台は、メンツを完全に潰された格好だ。これを無視する訳にはいかず、中国の外交部、全人代常務委員会、国防部などが激しい抗議文を発布。更に、中国人民解放軍は8月4日12時~8月7日12時まで、台湾を囲む格好で6ヶ所の海域と空域で実弾軍事訓練行動を実施すると発表した。中国にとっては、台湾の全ての流通を遮断・海上封鎖と区域封鎖の予行演習の良い機会を得たとの論調もある。
台湾はエネルギーの98%近くを輸入に頼っており、天然ガス在庫量の2週間を超える封鎖をされると、台湾全土で大規模停電に陥る危険性がある。西側にとっては、半導体などのサプライチェーンの大きな脅威となると同時に、台湾有事の際には、外部から兵器・エネルギー・食料補給の困難さを再認識させられた状況。
中国軍に属する国防大学の孟祥青教授(少将)は、中国国営中央テレビで、台湾周辺での演習について、米台の出方次第で、中国側が演習を「常態化」することを示唆している。なお、台湾のミサイル製造管理監督者、歐陽力行氏が6日、出張先のホテルで急死。
ドル円:米雇用統計を受けて急反発
【今週見通し・戦略】
7月FOMCを受け、米利上げペースが鈍化するとの観測が高まった中、ペロシ米下院議長の台湾訪問で、リスク回避が高まった事や、複数のFRB当局者によるタカ派的な発言を受けて、2日に130円台前半まで売られたドル円は、90日移動平均線に下支えられた格好となり反発。。日本と他国の金融政策の違いも再材料視された。
更に、前週末の米雇用統計が強気となり、FRBが積極的な利上げを継続するとの観測が強まり、米金利上昇、ドルが円など主要通貨に対して大きく上昇した。
非農業部門雇用者数は前月比52万8000人増と、増加幅は6月(39万8000人)から拡大し、市場予想(25.0万人増)の2倍以上の伸びとなった。失業率は3.5%に低下(市場予想3.6%)雇用統計を受けて急伸したものの、135円水準は7月にFOMCでの1%利上げを織り込んでいた際に付けた高値水準で、米金利上昇が7月高値水準まで更に上昇しなければ、上値は限定的か?
インフレ・景気後退を見極める流れ継続
次回9月のFOMCまでに、雇用統計を含む、物価指標などのマクロ経済指標を受け、インフレ動向・景気後退懸念を見極める流れは継続しそうだ。8月は日米欧共に金融政策決定会合の開催がなく、8月25-27日に対面(3年振り)で開催予定のジャクソンホール経済シンポジウムに向けて、様子見ムードが高まる可能性。ドル円は135円を挟んだ保合いに移行か?
ペトロダラーの揺らぎは、金の長期強気要因
【今週見通し・戦略】
2015年12月以降のFOMCでの利上げ局面での金相場の動きと同様、利上げ観測を嫌気して下落するが、実際のFOMCでの利上げ実施で、「知ったら終い」の反応となり反発となった。
NY金は、1700ドル割れで大底を見た格好。7月21日安値が一番底。今後2番底を探る展開となっても、1番底を維持する限り、押し目買い基調に変化はない。
NY金相場は、逆三尊型の底打ちパターンを形成しており、価格帯別出来高の厚い1710ドル~1750ドルが下値支持帯。
テクニカル面は好転
また、20日間高値を更新して、トレンドフォロー型指標は、中立から陽転(買い)となり、テクニカル面からは強気感が増していく流れとなっている。
3月高値~7月安値までの下落に対する38.2%戻し~200日移動平均線が上値抵抗帯。前週末の雇用統計が強気の内容となり、米金利上昇・ドル高を受けて、調整になっているが、8月は日米欧共に、金融政策決定会合の開催がなく、8月25-27日に対面(3年振り)で開催予定のジャクソンホール経済シンポジウムに向けて、下値は限定的であろう。2番底を形成後、ネックライン~上値抵抗帯の攻防戦へ向かう流れが現段階でのメインシナリオ。
先週レポートや、日経CNBC(8/1放送)で、『円建て金は円高に上値を抑えられてチャート形状は弱いが、マザーマーケットのNY金のテクニカルが好転しており、円建て金のテクニカル的な売りは、ダマシとなる可能性。円建て金の安値売込みは避けたい』と指摘したが、円高で下げた局面で出た安値は、買い場を提供する格好となった。7400円~200日移動平陰線が下値支持帯として機能している。JHX円建て金も、押し目買い戦略継続で。
トルコ大統領エルドアンはロシアを訪問しプーチンと会談。トルコはロシアから天然ガスを「ルーブル」で購入すると発表。ペトロダラーの揺らぎは、金の長期強気要因。
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。