金:米政府機関閉鎖・米中貿易交渉の行方が焦点|【Weekly Report】週間予定
2025年10月14日
週間展望(10/13~10/19)
このページで知れること(目次)
週間予定:IMF世銀年次総会(世界経済見通し)、米半期為替報告
前週:公明党政権離脱
ドル円:高市トレードの巻き戻し
金:米政府機関閉鎖・米中貿易交渉の行方が焦点
【海外投資家動向(225)】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:IMF世銀年次総会(世界経済見通し)、米半期為替報告
・パウエルFRB議長
全米企業エコノミスト協会で経済見通しおよび金融政策について講演
・日銀「タカ派」田村委員の講演
9月会合では0.75%への利上げを提案した
・内田日銀副総裁の講演
短観について「全体として良好な水準」と発言
・豪中銀議事録と雇用統計
中銀総裁「豪州の経済状況はかなり良好な状態」発言
・FRBはブラックアウト(金融政策に関する発言自粛)入り
米政府機関閉鎖で雇用統計などが発表延期
※米政府機関閉鎖の影響で米経済統計の発表は延期になる可能性
※米労働統計局(BLS)は政府閉鎖でも10月末までにCPIの発表目指す
前週:公明党政権離脱
【公明党連立離脱】
公明党の斉藤鉄夫代表は10日、自民党の高市早苗総裁に連立政権から離脱する方針を伝えた。企業・団体献金の規制強化について折り合えなかった。四半世紀続いた安定与党を支える自公の枠組みが終焉。
斉藤氏は閣外協力を否定し、野党の立場になるとの見解を示した。連立離脱後の国会対応に関し「何でも反対の敵方になるわけではない」と主張した。政策ごとに判断する考えを示した。
自民党は14日午後、党本部で党所属の国会議員が参加する両院議員懇談会を開く。高市早苗総裁が公明党が連立政権から離脱した経緯や、党運営の方針について説明する見通し。
少数与党
今月下旬にも召集される臨時国会で首相指名選挙を予定する。高市氏は自らが指名されるための道筋を説明するとみられる。衆院の会派別勢力で自民党の会派は196議席にとどまる。立憲民主と日本維新の会、国民民主3党が統一候補を立てると会派の勢力は計210議席となり自民党を上回る。まずは、首相指名選挙に注目が詰まる。公明党が連立から離脱し、自民党に日本維新の会や国民民主党のどちらかを足しても衆院で過半数に足りない。野党も政策が一致せず安定した政権をつくるのは難しい状況だ。高市氏が選出されるというのがメインシナリオだが、小党乱立・ポピュリスト政党の台頭が見られる欧州化の様相で、何も決められない・何も決まらない政治の停滞が意識される可能性。トラスショックのような日本売り(株安・円安・債券安)リスクも意識されてくる。
ドル円:高市トレードの巻き戻し
【今週見通し・戦略】
先週レポ-トで、『米政府機関閉鎖の行方と、自民党総裁選挙以降の連立の行方が焦点。高市氏が勝利した事で、ファーストアクションは株高・円安で反応しそうだが、連立の行方を見極めようとする動きや、財務省に近い麻生氏の影響力が意識されてくると、150円超では様子見ムードも出てくるか?』としたが、ドル円は、三角保合い上放れから上げ加速。株式市場は大幅に上昇するとともにドル円は大幅な円安に振れ、一時153円台を付けた。高市氏が自民党の新総裁に就任し、日銀による利上げが遅れるとの観測が広がっている。高市氏は積極財政を掲げており、日本の財政悪化への懸念が材料視された。外資系金融機関の円買い解消の動きも、円安ドル高に拍車をかけた。
公明政権離脱
ただし、前週末には公明党による自民党との連立解消を受け、日本株・国債・日本円の「トリプル安」を懸念する動きからドル円も急落。更に、中国商務省は9日、一部のレアアース(希土類)や関連技術などの輸出規制を発表。トランプ大統領は10日、輸出規制に不快感を示し、中国からの輸入品への「大幅な関税引き上げ」を検討していると投稿。
米中対立
10月下旬からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)に際して予定していた習近平国家主席との会談は「会う理由はなくなったようだ」との考えも示したことで、ドル売り・株売りとなるなどリスク回避の動きが高まっている。引き続き、米政府機関閉鎖や米中貿易戦争の行方、日本の連立の行方などを見極めようとする動きとなりそうだ。200日移動平均線や52週移動平均線を維持できるか否かが、テクニカル面からの焦点。米財務省半期為替報告書の議会提出期限でもあり、トランプ政権の通貨政策にも注意したい。
金:米政府機関閉鎖・米中貿易交渉の行方が焦点
【今週見通し・戦略】
「米政府機関閉鎖」や、米追加利下げに踏み切るとの観測が高まっていることなどから金価格は続伸。日本やフランスなどの政局不安や景気先行き懸念も安全資産としての需要を引き続き支えた。自民党の高市早苗総裁の積極財政志向を背景にした財政悪化懸念も材料視された。
金への資金流入継続
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が公表したデータによると、今年の金上場投資信託(ETF)への世界の資金流入額は640億ドルに達し、9月だけでも過去最高の水準となる173億ドルの流入を記録。
ゴールドマン・サックスは6日、2026年12月の金価格予想を従来の1オンス=4300ドルから4900ドルに引き上げた。ゴールドマンは欧米諸国の金上場投資信託(ETF)への強い資金流入や各国中央銀行による金の購入が見込まれることを理由に挙げた。
WGCによると、各国中銀などは2024年まで3年連続で年間合計1000トンを上回る金を購入。年間採掘量である約3600トン(24年)の3分の1近くを買っている。
米財務省が公表している7月時点のデータによると、米国債保有額は合計で約3.9兆ドル。一方で同月の金保有量はWGCのまとめでは3万6359.5トンだった。当時の金価格では約3.8兆ドルと米国債よりも小さいが、足元の1トロイオンス4000ドルだと、仮に中銀が新たに金を買い増していなくても保有額は約4.7兆ドルとなり、世界の中央銀行が外貨準備で保有する金の総資産価値は、米国債の規模を上回った計算。
米中対立再浮上
前週末には、トランプ米大統領が中国への追加関税の可能性を警告したことで、同日の米株式市場でダウ工業株30種平均は大幅に下落したこともあり、安全資産に資金を逃避させる動きが加速。一時、1オンス=4000ドルの大台を突破したが、その後は上げ幅を縮めた。米株の下落が大きくなった場合、リーマンショック時と同じように、株価の損失補填的な売りで金が下落する可能性には注意。ただし、そこで出る安値が中長期的な買い場となる。押し目買い戦略継続。
【海外投資家動向(225)】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。