金のシーズナルトレンド
金の季節的習性、年末年始にかけての3か月(12月~2月)は上昇しやすい月
チャートは1970年以降のドル建て金現物価格の年始からの騰落傾向(シーズナルトレンド)を表したものです。そして背景色を月別に1%以上上昇した月をブル(強気)として赤に、下落した月をベアとして青に、それ以外を緑に色分けしています。
シーズナルトレンドと呼ばれる相場の季節性というと、わかりやすいものでは農産物などは、産地の生育期の天候が作物の豊凶のカギとなることから生育期に天候リスクプレミアムが付きやすい(高くなりやすい)一方、収穫期が近づき収穫量がほぼ見通せるようになると天候リスクプレミアムがはげ落ち、加えて農家売りで相場が下押しされやすい(ハーベストプレッシャーとも呼ばれます)時期になります。
金はどうかというと、金の鉱山は世界中に分布しており、年間を通じて産出量が分散されています。また都市鉱山と呼ばれるリサイクル再生金の生産量も価格水準の上下がリサイクル回収の量に影響を与えるとは言われますが、季節による傾向はほとんどありません。もちろん天候要因(降水量や気温など)にも左右されません。
つまり、供給サイドの材料にはあまり季節的影響を受けにくい金相場において、年末から年初にかけて上昇しやすい季節性にはどのような要因があるのでしょうか。これについては、さまざまな考察があるのですが、「有力金消費国からの需要の高まりやすい時期が集中するため」という説が最も有力です。
昔から国民の金選好の強い金の有力需要国のひとつ中国。中国の春節(旧正月)では、喜びに満ちた行事であり、人々はそれぞれ先祖代々の故郷に帰省し、家族が集まり、旧友や親戚と新しい年の始まりを祝うのが毎年の恒例となっています。春節は通常1月21日から2月21日までの間に行われます – 太陰暦の行事であることから、実際の日付は年毎に設定されます。春節に向かっては、贈答用や個人の投資を背景に、小売段階での金の需要に高まりが見られるのが一般的です。
チャートは、金の上海プレミアムの推移に春節直前の50日に青線を付けたものです。春節の直前、または春節の期間中の縮小を前に、中国の“春節効果”は歴然としており、この3カ月はプレミアムの平均値が最大の拡大を見せる期間ともなっています。そのプレミアムの月別平均を示したものが次のチャートです。
また、中国に並んで金需要の有力国にインドがあります。インドは秋に婚礼シーズンを迎えますが、農村部では婚礼儀式にて花嫁の親が金を持参金として持たせるが習慣が残っています。また、ヒンドゥー教の新年を祝う祭り「ディワリ(光のフェスティバル)」も大切な人に金貨や宝石を贈るのに縁起がいい時期として知られ金需要が高まります。
もちろん、世界最大の経済大国である米国も11月の感謝祭からクリスマスまで消費行動が高まる時期でもあります。
こうした需要サイドの要因が金価格の季節性に表れていると考えられています。