日本の金鉱山から都市鉱山まで | 【公式】日産証券の金投資コラム

日本の金鉱山から都市鉱山まで

2026年3月9日

 

1. はじめに

日本は資源小国とされるが、金に関しては歴史的にも技術的にも独自の発展を遂げてきた。
本レポートでは、古代の金産出から近代鉱山、現在の操業状況、そして都市鉱山・国際リサイクル戦略までを一体として整理する。

2. 日本の金鉱山の歴史

日本の金産出は奈良時代に始まる。749年、陸奥国で産出された金は東大寺大仏建立に用いられた。
江戸時代には幕府直轄の佐渡金山が発展し、17世紀前半には日本は世界有数の産金国となった。推計年間5〜10トン規模を産出していたとされる。
 
明治以降は西洋技術が導入され、北海道の鴻之舞金山、鹿児島の串木野金山などが発展した。
近代のピークは1940年前後で、年間約25〜30トンに達した。
 
しかし戦後は採算悪化と鉱量枯渇、環境規制強化により閉山が相次いだ。
 
かつて存在した主要金鉱山
● 佐渡金山(新潟)
● 鴻之舞金山(北海道)
● 串木野金山(鹿児島)
● 尾去沢鉱山(秋田)
● 土肥金山(静岡)
● 中瀬金山(兵庫)
 
これらは多くが1970年代までに閉山した。累計産出量は佐渡が約78トン、鴻之舞が約70トンとされる。

3. 現在操業中の金鉱山

現在、商業規模で操業する主力は鹿児島県の菱刈鉱山(住友金属鉱山)である。世界的にも高品位(平均約20g/t)で、年間約6〜7トンを生産している。
日本全体の現在の年間産出量は6〜8トン程度で、戦前ピークの約4分の1である。

4. 金価格高騰と再開可能性

国内金価格は1g=25,000円前後に達している。理論上は多くの休廃止鉱山が採算圏内に入るが、再開には以下の課題がある。
 
● 環境アセスメント
● 地元合意形成
● 巨額初期投資(数百億円)
● 技術者不足
● 長期価格維持の不確実性
 
したがって「全面的再開」よりも「既存鉱区の拡張」や「深部探査」が現実的選択肢である。

5. 都市鉱山という第二の金鉱山

日本の金戦略を語る上で不可欠なのが都市鉱山である。
使用済み電子機器には天然鉱石を上回る高品位の金が含まれる。
 
例:
● 天然鉱石:1〜10g/t
● 電子基板:数百g/t相当
 
日本は小型家電リサイクル制度を整備し、高度製錬技術を確立している。
 
主な精錬企業:
● 三菱マテリアル
● DOWAホールディングス
● 住友金属鉱山
 
これらは金のみならず銀・銅・白金族金属を同時回収する高度統合型プロセスを有する。

6. 海外スクラップ輸入という拡張モデル

 
海外スクラップ輸入という拡張モデル
 
日本のリサイクル産業は国内回収だけでなく、アジアや欧州から電子スクラップを輸入して精錬している。
これは日本が「国際資源循環ハブ」として機能していることを意味する。
 
海外原料を国内で高純度精錬し、付加価値を国内に残すモデルは、天然鉱山開発より地政学リスクが低い。
 
ちなみに海外競合企業には、ベルギーのUmicore、韓国LS-Nikko、中国大手製錬企業群などがあるが、ただし、 「高度複雑処理」、「品質管理」、「ESG対応」では依然として日本企業に優位性がある。

7. 安全保障と資源戦略

日本は国営鉱山を持たず、民間主導型である。
探鉱支援はJOGMECが担う。
 
しかし安全保障上の観点では、天然鉱山再開よりも
 
● 都市鉱山高度化
● リサイクル効率向上
● 国際スクラップ確保
 
の方が即効性と持続性が高い。

8. 総合評価

日本の金戦略は三層構造である。
 
① 伝統的金鉱山(菱刈中心)
② 休廃止鉱山の潜在資源
③ 都市鉱山+海外スクラップ循環
 
価格高騰局面でも、全面的鉱山再開より循環型資源国家モデルの強化が現実的である。
日本はもはや「採掘国」ではなく、
 
高度製錬技術を核とした
循環型金資源国家
 
へと転換している。

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