金:利食い一服後は、押し目買い再開か?|金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細|【Monthly Report】月間展望(8月) | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:利食い一服後は、押し目買い再開か?|金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細|【Monthly Report】月間展望(8月)

NSトレーディング 菊川弘之
2025年8月1日

~8月1日~8月31日 ~

ドル円:ジャクソンホール会議に注目
CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円(日足)

8月騰落率(ドル円)

【今月見通し・戦略】

7月のドル円は、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待の高まりから7月1日に142円台後半まで下落したが、雇用統計が市場予想を上回る内容だったことからポジティブサプライズとなり反発。また、トランプ減税の延長を柱とする減税・歳出法案を巡って、米連邦議会上院が修正案を前日に可決。米連邦議会下院は3日、トランプ政権の主要政策を盛り込んだ大型の減税・歳出法案を可決、トランプ大統領の署名を経て成立した事で、ドル買いが強まった。


参院選での与党過半数割れを受け、200日移動平均線や52週移動平均線で上値が抑えられたが、石破首相の退陣観測(後に否定)や、日米関税合意もあり、再び切り返した。


FOMCでは、全会一致ではなかったものの、トランプ米大統領による利下げ要求に屈せず金利据え置きを決定。日銀金融政策決定会合では、金利据え置きを全会一致で決定。円安について問われた植田総裁は「物価の見通しに直ちに大きな影響があるとはみていない」と明言した事で「円安容認」と捉え、月末には、米インフレ圧力の高まりや米労働市場の底堅さを示す米経済指標もあり、米長期金利上昇、150円台乗せの円安・ドル高水準を付けた。


52週移動平均線が下向きのままなら、グランビルの売り法則になる可能性がある一方、実体が下から上抜けしており、移動平均線が上抜きに変化してくると、グランビルの買い法則となる可能性もある強弱分岐点。52週移動平均線の攻防が焦点。


例年、ジャクソンホール会議絡みで荒れる時間帯でもあり、月間騰落傾向も円高傾向が確認される。ドル高が進んだ場合、トランプ大統領の円安誘導牽制発言や、本邦の介入にも注意したい。



~CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円(日足)~


【CFTC建玉明細】

CFTC建玉明細 ドル円


【ドル円(日足)52週移動平均線】

ドル円(日足)52週移動平均線乖離率


【ドル円(日足)200日度移動平均線】

ドル円(日足)



金:利食い一服後は、押し目買い再開か?
金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細

8月騰落率(NY金)

【今月見通し・戦略】

7月は、トランプ米政権の主要政策を盛り込んだ大型の減税・歳出法案が3日、連邦議会下院を通過。トランプ大統領が4日に署名して成立した。米議会予算局(CBO)が5月に可決した以前の下院案を基に試算したところ、25〜29年の実質経済成長率は年0.1ポイントの押し上げにとどまる見込みだ。一方、財政悪化には歯止めがかからない。CBOは1日可決した上院案が財政赤字を10年で3.4兆ドル(約490兆円)増やすと試算。下院が5月に通過した時点で2.4兆ドルだったが、わずか6週間で1.4倍になった。CBOは米政府に入る関税収入の増加により、10年間で財政赤字が2.8兆ドル圧縮されると試算したが、上院可決直前の修正で財政赤字は膨らみ、関税収入で賄いきれない計算だ。政府債務は現行の法定上限である36.1兆ドルに達している。1日に可決した上院案はこれを5兆ドル引き上げる内容が盛り込まれ、懸念されていた夏場にかけての米国債デフォルト(債務不履行)「Xデー」は、回避された事や、日米を始めとして、米韓・米EU・米メキシコなどの通商合意を受けて貿易摩擦激化への懸念が後退し、ここまで進んできた安全資産に対する買いの利食いが進んだ。また、トランプ大統領が一部の銅や銅関連製品に50%の関税をかけると発表していたが、7月30日に銅製品の素材となる精錬銅などは除外した事に伴う、非鉄に売りが広がった事も金下落の一因。


ただし、米債務上限が拡大したことは、短期的には利食い要因となったものの、中長期的には金価格の水準も更に引き上がる要因となる。トランプ大統領は28日、ロシアが10~12日以内に停戦交渉で合意しなければ追加制裁を科す考えを示した。7月中旬に50日以内としていた猶予期間を縮めた。29日には「きょうから10日だ」と述べるなど圧力を強めている中、間税問題に対する過度な楽観論からの「安全資産」売りも限定的。となっている。中国を始めとする中央銀行の買いも継続しており、3000ドル台前半は、買い拾われそう。買い主体の戦略継続。


8月・9月は、変動が高まる時期でもある。



~金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細~


【金価格と米国政府債務】

金価格と米国政府債務


【NY金(12月限)200日移動平均線】

NY金(12月限)MAC(Moving Average Channel)


【NY金(CFTC建玉明細)】

CFTC建玉明細 NY金



8月注目スケジュール:
米国イラン核開発協議・参議院選挙・関税協議延長期限

8月注目スケジュール


・「ジャクソンホール会議」

 毎年8月に開催される各国・地域の中央銀行総裁や経済学者らが経済政策について議論する重要イベント。トランプ大統領による関税政策が世界経済の不透明感を高めている中、参加者発言から米国の利下げの時期を探ろうとする動きが予想される。現地時間午前中~午後にかけて行われることが多く、日本との時差はマイナス15時間(夏時間)。現地で午前9時に始まるセッションは、日本時間では同日の深夜0時に当たる。


・自民・両院議員総会

 8月中にも石破首相が正式に退陣を表明するとの報道などもあり、今後の動向が注目。与党が衆参両院ともに過半数を下回ったことによって、政策実現に際して野党と連携する必要があり、どの野党と連携を取るのかにも注目が集まる。今後の財政政策の規模などが焦点となる。


・ロシア制裁強化

 トランプ政権は、ウクライナを侵略するロシアが8月8日までに停戦で合意しなければ、ロシアの輸入品への関税引き上げに加え、ロシアから石油やガスを輸入する第三国にも関税をかける方針を示している。

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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