金:地政学リスク後退に伴う押し目は買い対処|金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細|【Monthly Report】月間展望(7月)
2025年7月1日
~7月1日~7月31日 ~
このページで知れること(目次)
ドル円:三角保合い放れ待ち CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円(日足)
金:地政学リスク後退に伴う押し目は買い対処 金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細
7月注目スケジュール:米国イラン核開発協議・参議院選挙・関税協議延長期限
ドル円:三角保合い放れ待ち
CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円(日足)
【今月見通し・戦略】
6月のドル円は、関税問題に加えて、中東の地政学リスクに振り回される展開。トランプ大統領が対EU50%関税発動を7月9日まで延期したことでリスク選好の動きにドル円が上昇。更に、米国がイラン核施設を直接空爆したことで、有事のドル買いが強まり、一時148円台に乗せた。イランは、米国への報復としてカタールの米軍基地にミサイルを発射したが、カタールと米国に事前通告しており、イランの対米報復が限定的との見方から、200日移動平均線に上値を抑えられ上ヒゲ形成。原油相場が下落し、原油高が日本の貿易赤字拡大につながるとの観測が後退。円買い・ドル売りが広がった。FRBのボウマン副議長とウォラー理事が7月の利下げを支持する考えを明らかにした。
トランプ米大統領がパウエルFRB議長の公認を早期に指名するとの見方からトランプ氏の意向に沿って金融緩和に積極的な人物が金融政策のかじ取りを担うとの観測から、円買い・ドル売りが進み、月末にかけて、三角保合い下限の攻防戦に移行している。
米財務省外国為替政策報告書で、「日銀の金融引き締め政策は日本経済の成長率やインフレ率を含むファンダメンタルズ(基礎的条件)に応じて継続的に進められるべきで、これによりドルに対する円安の正常化や必要とされている両国貿易の構造的再均衡化を後押しすることになる」との記述を新たに加えた。また、日本の「大規模な公的年金基金など政府系投資機関は、リスクを加味した収益や分散投資のために海外に投資すべきで、競争力を念頭に為替相場を目的にすべきではない」とした。
7月の月間騰落率は、この10年間は円高優位な時間帯。140円を割り込むと、三尊天井完成が意識されるチャート形状。
~CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円(日足)~
【CFTC建玉明細】
【ドル円(日足)52週移動平均線】
【ドル円(日足)200日度移動平均線】
金:地政学リスク後退に伴う押し目は買い対処
金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細
【今月見通し・戦略】
6月は、中東情勢の緊迫化を受け、安全資産の金に買いが広がり、3400ドル台後半まで上値を伸ばした。イスラエルがイランに空爆の実施を受け、米国株が大幅安となったことから買いが活発化した。
米中が9~10日に開いた閣僚級会合で5月の合意内容の履行で一致したが、中国のレアアース(希土類)の輸出再開が6ヶ月の期限付きとなるなど、米中交渉を巡っても懸念が残っていることも買い材料視された。
ただし、イランが報復としてカタールとイラクにある米軍基地に対するミサイル攻撃作戦を実施したものの、イランは攻撃を事前に通知しており、人的被害もなかった。強力な報復措置ではなく、抑制的なものと受け止められ、原油は急落、株高・金売りで反応した。
6月高値を起点に調整入りしており、三角保合い放れ待ちとなっている。昨年末安値を起点とした上昇トレンドの攻防戦に差し掛かっている。4月2日高値(3226ドル)~5月15日安値(3151ドル)が下値支持帯。同水準は、4月7日安値~4月22日高値までの上昇に対する61.8%押しや、2024年11月14日安値~2025年4月22日高値までの上昇に対する38.2%押し水準と重なる。
欧州中央銀行(ECB)が6月11日に発表した報告書によると、2024年の各国中銀の外貨準備に占める金の割合は、20%だった。ユーロ(16%)を抜き、米ドルに次ぐ2位に浮上した。中銀は24年も年間1000トンを超える金を買い続け、保有量が膨らんでいる。金価格が最高値を更新するなかで保有額も増えている。BRICSが貿易における各国の現地通貨建て決済の拡大を目指すなど、当面は公的機関の金保有が減ることは考えにくい環境となっている。
内部要因からは大口投機玉の買い越し整理は進んでおり、一時的に下げ圧力が高まったものの、大口投機筋は安値を買拾う戦略を組んできそうだ。7月の月間騰落傾向は、買い方優勢の時間帯。
~金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細~
【金価格と米国政府債務】
【NY金(8月限)200日移動平均線】
【NY金(CFTC建玉明細)】
7月注目スケジュール:
米国イラン核開発協議・参議院選挙・関税協議延長期限
・ECBフォーラム
ラガルド総裁のほか植田日銀総裁やパウエルFRB議長が出席する
・米雇用統計
パウエル議長「インフレ低下し労働市場悪化なら利下げ前倒しの可能性も」
・日銀短観
トランプ関税政策の影響で前回から悪化する見通し、先行きも悪化か
・田村氏の次に「タカ派」の高田委員の講演
前週、田村氏は、「2%に達したと言い切るにはあと少し情報やデータを分析していきたい」などと述べ、トーンダウンで円売り反応。
・参院選公示(20日投開票)
非改選と合わせて自民公明与党で過半数維持できるかが焦点。
・米国イラン協議
イランは停戦合意後も核開発放棄せず、米の再攻撃リスク。
トランプ米大統領は27日、イランの最高指導者ハメネイ師を厳しく批判し、対イラン制裁解除の計画を撤回した。
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。