金:内外共に年初来高値更新|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:内外共に年初来高値更新|【Weekly Report】週間予定

NSトレーディング 菊川弘之
2025年2月3日

週間展望(2/3~2/9)

週間予定:米雇用統計・日銀・田村委員講演・主要企業決算

【週間スケジュール(2月3日~2月9日)】

・日銀1月主な意見

 0.50%に利上げ、展望リポートがおおむね「タカ派的」で一時円買い進む


・12月実質賃金 

 11月確報値はボーナス増加で+0.5%に上方修正、4カ月連続プラスとなった


・日銀・田村委員(タカ派)の講演、前回9月講演では金利「少なくとも1%程度まで」必要と発言


・国内主要企業の4~12月期決算発表が相次ぐ


・米雇用統計

 米ADP雇用者数の予想は15.3万人増で、前回(12.2万人増)から改善する見通し。

 米雇用統計で非農業部門雇用者数の予想は前月比15.0万人増で前回の25.6万人増から伸びが減速する見通し。

 今回は非農業部門雇用者数などの年次改定が入る。そのため、毎年1月分は予想からかなりの乖離を見せます。

 昨年2024年1月分は予想の+18.5万人に対して+35.3万人のサプライズな結果。

 2023年も予想の+18.9万人に対して+51.7万人。


・中国市場が再開

 休み中のトランプ関税や中国AI「DeepSeek」にどう反応するか



前週:DeepSeekショック

【ディープシーク】

米マグニフィセント7の時価総額

27日の半導体関連銘柄の下落率(一時)

株式市場では1月27日、中国のAI(人工知能)開発企業「ディープシーク(DeepSeek)」が発表した最新の高性能生成AIモデルによって米ハイテク企業の優位性が揺らぎかねないとの警戒から半導体関連などのハイテク株に売りが広がった。


「ディープシーク」は、中国のヘッジファンドのハイフライヤー・クオント(幻方量化)が2023年に杭州で設立した新興のAI開発企業。同社によると、同社開発費用が従来の米AIモデルの10分の1以下でり、AI開発に莫大な資金は必要ないのではないかという疑問が生じたことや、最新モデル「DeepSeek R1」はライセンスを付与された外部開発者が利用・改善できるオープンソースとして提供され、生成AIの性能を評価するAIME 2024(数学能力のテスト)、MMLU(知識や推論能力のテスト)、AlpacaEval 2.0(質問への応答能力のテスト)などの主要なテストで、既存の米AIモデルと同等か、それ以上の性能を有すると見られたことが半導体関連株売りの背景。


ただし、半導体関連の急落は目立ったものの、NYダウは最高値を更新するなど、全体としては落ち着いた動きもあり、株式市場全体がリスクオフ(回避)に傾く状況には至っていない。



ドル円:200日移動平均線の攻防戦

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)200日移動平均線

1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、FF金利の誘導目標を4.25%~4.50%で据え置くことを決定。FRB議長への質疑応答では、トランプ大統領の政策が金融政策に与える影響について問われると、「関税、移民、財政政策、規制政策」の「4つの分野における重要な政策転換により、不確実性が高まっている」とし、「どのような政策が実施されるのか見極める段階にある」との考えを示した。

FOMC金利据え置き

7日の米上院で財務長官就任が承認されたベッセント氏が、一律に2.5%の関税を賦課する姿勢を示したことや、前週末には、トランプ米政権が2月1日からカナダやメキシコ、中国に対して関税を引き上げる方針を維持し、米国のインフレ再燃を警戒したドル買いが幅広い通貨に対して広がった。


「ディープシーク」ショックで、ナスダック総合株価指数や、半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が下落したものの、NYダウなどへの影響は限定的となっており、FRBは、雇用と物価の動向をにらみながら、トランプ政策が実体経済へどのような影響を与えるか見極める展開に。

ボラティリティ急騰リスク

トランプ大統領の不規則発言が飛び出すことでのボラティリティー急騰リスクは円キャリー取引には不向きで、投機筋のポジションはフラットに近い状況。日米金利差縮小から160円を試すような円安ドル高は一服し、155円を挟んでの保合いで、次なる展開を待つ流れへ。まずは200日移動平均線の攻防戦。雇用および物価関連指標や、トランプ大統領の言動・SNSに、大きく左右されることになりそうだ。


24日公表の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、日本経済の需要と供給の差を表す「需給ギャップ」が示唆する以上に「賃金や物価に上昇圧力がかかる」と明記した。人手不足の深刻化で経済成長が伴わなくても物価が上がりやすい構造になっているため。日銀が追加利上げの必要性を示したとの受け止めがあり、ドル円の上値抑制要因となった。



金:内外共に年初来高値更新

【今週見通し・戦略】

NY金(2月限)

JPX金(日足)

世界経済フォーラムの年次総会でオンライン演説し、OPECに原油価格の引き下げを要請する方針を示したことで、NY株価は堅調推移、NY金(2月限)も米金利低下を背景に、上げ足を強めた。2024年10月を起点とした3本目の下降トレンドを上抜き、上げ加速(ファン理論)。史上最高値を更新した。


FOMCでは、FF金利の誘導目標を4.25~4.50%に据え置くと決定した。今回の米FOMC声明で、インフレ率は2%の目標に向けて「進展」しているとの文言を削除した。代わりに物価上昇率は高止まりしていると指摘した。FOMC参加者が12月に示した25年の見通しは、年8回の会合で2回程度の利下げを実施。今回の利下げ休止は確実視されていたことや、「DeepSeek」ショックにもかかわらず、NY株価がしっかりしており、金市場への影響は限定的。

パウエル議長は、不確実性を高める重大な政策変更として関税、移民、財政政策、規制政策の4つをあげたように、米金利利下げ見送りよりも、トランプ政権誕生による不確実性が金の買い材料視されている状態。

2月は下げ有利

トランプ大統領の下で、国際秩序の再編が国際機関の監視や法の支配が弱体化する中、不透明なまま急速に進むのも確実だ。弱い民主主義と強い権威主義の対立の中、安全資産や代替通貨としての金・暗号資産への志向に変化は出ない。押し目買い継続。NY金の一目均衡表からの上値目標値は、E値=2964.6ドルドル。別カウントでは、N値=2911.8ドル、E値=3062.2ドル、などがカウントできる。ただし、2月の月間騰落率は、NY金は1月の買い方有利から一転して売り方優勢の時間帯。史上最高値更新後の調整局面に注意したいが、調整局面で出る安値が。中長期的な買い場となりそう。



【米PCE】

米国 個人消費支出(PCE)価格指数(前年比)



【CME FED WATCH】

Fedウォッチが示すFOMCでの政策金利見通し



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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