金:米ドル基軸通貨の揺らぎ再燃|【Weekly Report】週間予定
2025年5月19日
週間展望(5/19~5/25)
このページで知れること(目次)
週間予定:主要7ヶ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議
前週:ロシア・ウクライナ停戦協議
ドル円:ムーディーズ、米国債の格付けを引き下げ
金:米ドル基軸通貨の揺らぎ再燃
【海外投資家動向】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:主要7ヶ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議
・主要7ヶ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議
日米財務相会談の予定(調整中)。
円安是正に対する懸念くすぶる中、ムーディーズの格下げの動きに対する対応に注目
・米ロ電話首脳会談
ウクライナ停戦に向けて
・日本4月の全国消費者物価指数(CPI)
・日銀債券市場参加者会合
・中国で20日に「民間経済促進法」が施行
企業の成長促進や中国経済の下支えを狙う
・豪中銀政策金利
政策金利を現行の4.10%から3.85%に引き下げる見込み。
声明などでは今後の引き締め姿勢を改めて示す可能性が高い。
前週:ロシア・ウクライナ停戦協議
【高官級協議】
ロシアとウクライナによる直接交渉が16日、約3年振りに開かれた。ロシアは強硬な姿勢を維持し、ウクライナが求める一時停戦で合意には至らなかった。一方、それぞれ1000人ずつの捕虜交換を実施することでは一致した。
ロシア代表団を率いたメジンスキー大統領補佐官は協議後「交渉の結果におおむね満足しており、継続する用意がある」と表明した。ウクライナとの大規模な捕虜交換を成果として誇示した。ロシアは交渉の継続で和平に前向きな姿勢を示しながら、トランプ米大統領との交渉を途絶えさせない動き。
イスタンブール合意
ウクライナはロシアにゼレンスキー大統領とプーチン大統領の首脳会談を打診した。ロシアは「要請を留意する」と応じた。戦況が有利なロシア側は、あくまで2022年のイスタンブール合意(案)をベースに交渉したい意向。
一時停戦については、ほぼゼロ回答だった。ウクライナ公共放送によると、ロシアは停戦受け入れの条件として、ロシア軍が制圧していないウクライナ領土の一部から同国軍の撤退を求めた。また、ロシア側が「永遠に戦争を続ける用意がある」と述べたと伝えられるなど、協議の中でロシア側は強硬な姿勢を崩さなかったものとみられる。米ロ電話会談も予定されており、あくまで米ロ主導の停戦協議となる。
ドル円:ムーディーズ、米国債の格付けを引き下げ
【今週見通し・戦略】
10~11日に行われた米中貿易協議で、12日の朝にベッセント米財務長官が「大きな進展があった」と語ったことで、ドル円は146円台に乗せた。米中が共同声明で、90日間の期間を設けて関税の引き下げで合意したと発表。
米中貿易協議合意
米国は145%から30%へ、中国は125%から10%へそれぞれ引き下げた。この発表を受けてドル円は急騰、一気に148.60台まで上値を伸ばした。
ただし、13日には加藤財務相が「ベッセント米財務長官と来週のG7の場で為替協議を検討」と報じられたことや、4月の米消費者物価指数も、物価の鈍化傾向がみられたことで、調整入りとなった。
日米財務相会談
14日には米国と韓国の高官が「5月5日に為替政策に関して協議を行った」と報じられ、韓国ウォンが対ドルで急伸した。トランプ政権がドル安を否定せず、日本にも円安是正を求めてくるとの思惑が広がり、145円台まで下落した
15日の米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の講演では、「経済と中央銀行にとって困難な課題である供給ショックが、より頻繁に、そしてより持続する可能性のある時期に入るかもしれない」などと述べた。
米国債格下げ
格付け会社ムーディーズ・レーティングスは16日、膨らみ続ける36兆ドルの債務の持続性に懸念があるとして、米国債の格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に引き下げた。見通しは「安定的」とした。ムーディーズによる格下げは、フィッチ・レーティングに続くもの。フィッチは23年8月、財政悪化が予想されること、政府の支払い能力を脅かす債務上限交渉が繰り返されていることを理由に、米国債の格付けを最上位から引き下げた。S&Pグローバル・レーティングは11年に引き下げている。
この決定を受けて、4月安値を起点とした上昇トレンドを維持できるか否かが焦点。140円を割ってくると、下げの勢いが付く可能性には注意。
金:米ドル基軸通貨の揺らぎ再燃
【今週見通し・戦略】
金相場は内外共に、ネックラインを割り込み、ダブルトップ完成となった。下値目標値は、NY金が2970.6ドル、29.8.9ドルなど。心理的節目3000ドル水準は、下値目標値や、2月24日高値・4月7日安値などとも重なる重要支持線。一方、JPX金の下値目標値は E=14173円、V=14141円などがカウント可能。心理的節目16000円を上値抵抗として、2024年12月6日安値を起点とした上昇トレンドを試す流れとなりそうだ。
米国債格下げ
ただし、前週末にムーディーズ・レーティングスは、膨らみ続ける36兆ドルの債務の持続性に懸念があるとして、米国債の格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に引き下げた。ムーディーズは「歴代の米政権と議会は、年間の巨額財政赤字と金利コスト増大の傾向を逆転させる措置で合意できていない」と指摘。連邦政府の債務負担の対国内総生産(GDP)比は24年の98%から35年までに約134%に上昇すると予測した。
この日はトランプ大統領が推進する包括的な税制法案が下院予算委員会で採決されたが、21人の共和党議員のうち5人が反対票を投じ、重要な手続き上の障壁を乗り越えることができなかった。米財政問題に伴うドルの基軸通貨体制の揺らぎが再び材料視されてくると、金の下値は限定的になる。
相互関税の90日間猶予期間は、7月上旬、8月には米中相互関税・報復関税上乗せ分の猶予期間や、米債務上限問題が再び浮上してくる。期待先行でリスクオンの動きが強まったが、金市場史上最高値更新の大きなテーマである米国の覇権・基軸通貨ドルの揺らぎに変化はなく、中央銀行の金準備積み上げも継続している。また、CFTC達玉明細での大口投機玉の買い越し整理は進んでおり、ここから投機的な投げ相場は起こり難い内部要因だ。
【海外投資家動向】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。