金:調整局面入り|【Weekly Report】週間予定
2025年3月3日
週間展望(3/3~3/9)
このページで知れること(目次)
週間予定:雇用統計・FRB議長講演・全人代
前週:米・ウクライナ首脳会談決裂
ドル円:150円±10円のレンジ相場入り
金:調整局面入り
【米個人消費支出(PCE)物価指数】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:雇用統計・FRB議長講演・全人代
・トランプ米大統領が演説
「米国第一」説明、中国メキシコカナダ関税発動予定、中国には10%上乗せ計20%
・パウエルFRB議長が経済見通しについて講演
・ウォラーFRB理事とWSJニック記者が経済について対談
・内田日銀副総裁が講演
・春闘要求集計結果 第4四半期の設備投資も(GDPに反映)
・中国全人代開幕
AI開発や消費促進に向けた大規模支援策を期待 2月消費者物価指数に財新製造業PMIも
・米雇用統計
週末からブラックアウト、9日から米夏時間移行で指標発表などの時間1時間繰り上げ
前週:米・ウクライナ首脳会談決裂
【米ウクライナ首脳会談】
米・ウクライナ首脳会談は、最初の40分間は順調に進んだが、その後は流れが乱れ早期終了した。英日刊テレグラフはゼレンスキー大統領が、トランプ大統領とバンス副大統領が仕掛けた罠にかかって事態が悪化したと分析を出した。
バンス副大統領がトランプ大統領は平和のためにロシアと外交をするだろうとして対話に割り込んだのが始まりだったと同紙は指摘。ゼレンスキー大統領は、「どんな外交を言っているのか」と怒る失敗を犯した。米国側はロシアとの交渉も順調であり、焦っていたのは、戦争が終わったら家族ともども命の危険があるゼレンスキー大統領側だった。
ドンバスの停戦を公約して70%の支持率で当選したゼレンスキー大統領の支持者の多くはロシア語を話すロシア系のウクライナ人だった。その後、ゼレンスキー大統領がミンスク合意を履行しなかった事が、今回のウクライナ戦争の起点。ロシアはクリミア紛争のあと、停戦合意を守ってドンバスから軍隊を撤退させたが、ドンバスを攻撃し続けたのは、ウクライナ政府だった。
DOGE(政府効率化庁)が、USAID(国際開発庁)の支出を調査したことで、これまで国際支援の名目で、世界中で政治工作を行い、戦争プロパガンダを行なってきたことが表に出てきている。ゼレンスキー大統領が会談を蹴ったことで、米国は欧州から手を引きやすくなるというカードを得た格好だ。
この戦争は、オバマ政権がウクライナを乗っ取ってしかけたロシアに対する代理戦争だということの認識が高まっている。
バイデンに責任
サウジアラビアでトランプ政権とロシアとの会談が行われたあとで、トランプ大統領は、ウクライナの戦争はロシアのせいではなく、ウクライナがNATOに加盟できると思わせたバイデン政権が悪いのだと述べている。米国の少なくとも半分は、これが事実だと認識している。
ドル円:150円±10円のレンジ相場入り
【今週見通し・戦略】
20日に日本の第4四半期GDPが市場予想を上回り、日銀の早期利上げ観測が台頭してドル安円高が進行して150円割れ。25日の2月のコンファレンスボード消費者信頼感指数が98.3となり、市場予想の102.5や前回値の105.3(改定値)も大きく下回ったことで、景気の先行き不透明感が広がり、ドル売りに傾いた。
日銀追加利上げ観測
トランプ米大統領は26日に欧州連合(EU) からの輸入品に25%の関税を課す方針を表明。これを受けて、対ユーロで、ドル買い・円買いの動きとなるものの、ドル円は148円台後半まで下落した。
ドル円は、1月10日高値を起点とした下降トレンドを形成中。2024年9月安値~2025年1月高値までの上昇に対する半値押しと重なる2024年12月安値の攻防に差し掛かっている。同水準を割り込むとダブルトップも意識され、200日移動平均線や、52週移動平均線を上値抵抗として140円の下値支持が意識される展開となる。
米経済指標悪化
ドル円に関しては、介入効果が効かない悪い円安を回避したい日本と、「強いドルは国策」と言う基軸通貨を守る建前は維持するものの、本音ベースでは、既に実質実効為替レートでプラザ合意前の水準にあるドル円に対して、ベッセント財務長官が「トランプ大統領と私は10年物国債の利回りに注目している」と述べたように、米金利低下を望んでいる。日米当局の思惑が一致しており、緩やかな円高ドル安が続きそうだ。
一目均衡表からは、V=147円、N=146.8円がカウント可能。上値抵抗は200日移動平均線水準。
金:調整局面入り
【今週見通し・戦略】
先週レポートや、時事通信社ゴールドレポート(2/12付)で『要注意は、CFTC建玉明細での大口投機玉の買い越し水準が過去最高に接近しており、他のリスク資産の調整絡みがあると、短期的には追随するかもしれない点だ。』とし、ブログ(テクニカル分析)で『終値ベースで、11日の上ヒゲ高値~12日の下ヒゲ安値のレンジ放れ待ち。』と指摘していたが、内外共に2月に史上最高値を更新した金相場は、NY株式市場の崩れから上値が重い展開が続き、前週末には、NY金(4月限)がレンジを下放れ下げ加速となった。
トランプ大統領による中国への追加関税発言で関税を巡る不透明感が一段と強まる中、好決算を発表したもののエヌビデア株は、1月高値からの下落率が「弱気相場」入りの目安とされる20%を超えた。新製品の量産に伴って売上高総利益率が想定よりも低下することなどが嫌気されている。
3月は内外共に強気の時間帯
JPX金(標準先物)は、2024年8月安値を起点とした上昇チャネル下限とも重なる90日移動平均線(13500円水準)の攻防戦へ。2024年12月安値~2025年2月高値までの上昇に対する38.2%押しが13821円、半値押しが13605円、61.8%押しが13389円。これらの水準は、価格帯別出来高の厚い支持帯で、これらのテクニカルポイントでは、押し目買い意欲が高まりそうだ。
金相場を囲むファンダメンタルズからの強気要因に大きな変化はない。内部要因やテクニカル主導での大きな下落局面は、中長期的な買い場を提供することになる。出来高を伴って長い下ヒゲや長大陽線などのチャート上の底打ちパターンや、大口投機玉の買越し整理が進んだことを確認し、買い場探しの戦略を考えたい。過去10年間の3月の金月間騰落傾向は、内外共に買い方有利の時間帯。円建て金に関しては、4月は更に強気優位の時間帯となっている。
【米個人消費支出(PCE)物価指数】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。