金:米金利低下・ドル安・金買いの流れ|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:米金利低下・ドル安・金買いの流れ|【Weekly Report】週間予定

NSトレーディング 菊川弘之
2025年1月20日

週間展望(1/20~1/26)

週間予定:米大統領就任式、日銀金融政策決定会合、ダボス会議

【週間スケジュール(1月20日~1月26日)】

・日銀金融政策決定会合

 日銀利上げ確率ほぼ100%に急上昇、トランプ就任混乱なければ利上げの公算大と一部報道


・米大統領就任式

 午前中に慣例であるバイデン大統領とのお茶会を行い、11時半の副大統領の宣誓に続き、正午から大統領宣誓が行われる。これによりトランプ氏が第47代米大統領に正式に就任し、12時半から就任演説を行う。就任演説の内容に加え、初日に出されるとみられる多くの大統領令にも注目が集まる。関税・移民・エネルギー問題などに市場の関心は向く。


・ダボス会議

 ラガルドECB総裁が経済見通しについて講演、トランプ氏はオンライン形式で出席


・FRBブラックアウト期間入り(金融政策に関する発言自粛)(30日まで)



前週:日本銀行正副総裁発言

【雇用統計】

OIS市場の次の利上げ織り込み度

既存レポートやTV番組で、『1月早々に、本邦当局が止めれない円安が来るのか否か、大きな山場を迎えそうだ』と指摘したが、日銀金融政策決定会合(1/23-24)に先立ち、1月14日に氷見野良三副総裁が神奈川県金融経済懇談会で講演を行い、15日と16日には植田和男総裁が、全国地方銀行協会の会合と、第二地方銀行協会の会合で発言した。


氷見野副総裁は賃上げについて、「支店長会議でも、全体的に強めの報告が多く」、「年初の各界の方々の発言も前向きなお話が多かった」との印象を語り、米経済政策は、「来週の(米大統領)就任演説で政策の大きな方向は示されるのではないか」と述べた。


また、「1月に利上げをするかどうかというところが、月会合の議論の焦点になるだろう」と明言した。


植田総裁は賃上げに関し、「年初に各界の方々の発言や支店長会議で聞いた全国の状況は前向きな話が多かった」との認識を示した。また、「米国の(トランプ)新政権の経済政策を巡る状況、春季労使交渉に向けたモメンタムは重要」とし、来週の金融政策決定会合で、「利上げを行うかどうか議論して判断する」と述べた。


12月会合後に「マーケットとの会話に難がある」との報道もあった中、当初、予定のなかった副総裁の講演を含め、市場に対して利上げを議論するという明確なメッセージが発信された格好だ。


日銀が1月会合での追加利上げを市場に織り込ませにきているとの見方から160円が意識されていたドル円は、急反落し、一時154円台で推移している。



ドル円:悪い円安加速は回避か?

日銀利上げを織り込ませる動き

ドル円(日足)200日移動平均線乖離率

日銀の正副総裁が決定会合直前に利上げの可能性を示唆するのは異例で、市場が織り込む1月会合での利上げ確率も急上昇している。


米金利低下も、ドル円の調整の一因。ウォラーFRB理事は、16日の米CNBCテレビのインタビューで、2024年12月消費者物価指数(CPI)について「非常に良好な内容だった。今後もこのような数字が出続ければ、今年前半に利下げが行われると考えるのが妥当だ」と述べた。


米卸売物価指数(PPI)は前月比0.2%(季節調整済み)上昇となり、消費者物価指数(CPI)で振れ幅の大きなエネルギーと食品を除くコア指数は前年同月比で3.2上昇となった。どちらも市場予想を下回った。

強いドルは支持も競争力確保は別問題

本邦の介入を実施しなくとも、一旦は悪い円安に歯止めが掛けられそうな状況となっている。各メディアでも、一部でドローンなどでのテロ懸念も噂されている20日のトランプ次期米大統領就任式で、突発的な事態が起きないこと、トランプ氏の関税や移民問題などを巡る言動で、金融市場が大きく混乱しないことを条件に、日銀金融政策決定会合で利上げを決定する公算が大きい旨が相次いで報じられている。ベッセント次期財務長官は「基軸通貨としての強いドルは支持」するが、対外的な競争力確保のための適切な相場を維持することは別問題と考えており、日銀の金融政策正常化を望み、歓迎する意向とも報じられている。この状況下で、利上げしないとサプライスとなり、円安ドル高が急速に進むが、波乱なく大統領就任式を終え、1月に日銀が利上げ、米国が利下げとなるなら、ドル円は155を中心とした±5円程度のレンジ相場入りとなりそうだ。

就任演説に注目

20日の米大統領就任就任演説で、トランプ次期大統領から正式に政権の方向性が示されるとみられる。それに加えて初日に多くの大統領令が出されるものと予想される。関税など市場を混乱させるような厳しい内容が出て、NY株価が崩れるようだと、日銀の決定にも影響を与えるとの思惑が交錯する可能性。思惑での乱高下には注意したい。



金:米金利低下・ドル安・金買いの流れ

【今週見通し・戦略】

NY金(2月限)

JPX金(日足)

12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表された経済見通しが2025年の利下げ回数が2回となり、9月の前回見通しの半分になったことで、米長期金利上昇・ドル高を受け、NY金は調整したが、2024年11月14日の安値は維持され、2024年2月安値を起点とした上昇チャネルも継続。


NY金は、10月高値を起点とした下降トレンド上抜き、価格帯別出来高の厚い2650ドル~2700ドルが下値支持に変化してきた。円建て金も同様に、下降トレンドを抜き、13000円~13500円が下値支持として機能中。

インフレ低下

トランプ政権への先行き不安、ロシアーウクライナ、イスラエルーハマスなどの地政学的リスク、日米欧の債務問題、G7以外の中央銀行の買いなど、金を買う材料が多い中、米生産者物価指数(PPI)や米消費者物価指数(CPI)で、インフレの落ち着きが示され、米国債の利回りが低下。 ウォラー米FRB理事はインフレは引き続き緩和し、FRBは予想よりも早く、より速いペースで利下げする可能性が高まるとの見方を示したことで、米金利低下・ドル安。金買いの展開となった。


トランプ次期米大統領は就任初日に、少なくとも25の大統領令を発出し、その後数日から数週間でさらに追加する計画と報じられている。大統領令は、議会の承認を経ずに大統領が政策を決定することを可能にするもので、連邦政府や軍に対して行政命令を出すことができ、法的拘束力を持つ。その権限は、移民や通商政策、規制の撤廃など幅広い分野に及ぶ。大統領令では、移民や教育、エネルギーまで幅広く、国内外の政策が対象となると見られる。

まずは、20日の大統領就任式での演説、大統領令の内容如何では、金市場を含む各市場で波乱含みの展開が予想される。



【米小売売上高】

米 小売売上高(前月比)



【CME FED WATCH】

Fedウォッチが示すFOMCでの政策金利見通し



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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