金:「安全資産」の顔がクローズアップされるか? |【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:「安全資産」の顔がクローズアップされるか? |【Weekly Report】週間予定

NSトレーディング 菊川弘之
2024年7月22日

週間展望(7/22~7/28)

週間予定:米国第2四半期GDP・個人消費、6月PCE価格指数

【週間スケジュール(7月22~7月28日)】

・米国第2四半期GDP・個人消費、6月PCE価格指数 予想上回る小売売上高を受けアトランタ連銀GDPNow上方修正


・カナダ中銀政策金利 追加利下げと利下げ一時停止で予想分かれる、インフレ鈍化の一方で賃金の伸びは加速


・G20開催 鈴木財務相が出席、過度な円安の動きへの懸念を表明


・7月東京消費者物価指数 連日真夏日で光熱費上昇加速の見込み 8月から3カ月間「酷暑乗り切り緊急支援」復活


・仏パリ五輪 デモ・ストライキ、テロへの警戒高まる中での開催、18日にパリで警察官が刺される事件


FRBブラックアウト期間入り(金融政策に関する発言自粛)(~8月1日)



前週:トランプ・トレード復活

【米CPI・PPI】

賭けのオッズ(米大統領選挙)

共和党の政策綱領

トランプ氏が暗殺未遂事件後にSNSで『考えもつかぬこの出来事を防いだのは神のみだ。我々は恐れることなく、悪に直面しても信仰心と反骨の精神をもち続ける』と発信した。


トランプ氏は、キリスト教プロテスタントの「プレスビテリアン」(長老派)で、その思考法に強く影響を受けていると思われる。長老派は、神学用語では予定説と言うが、「神様は救われる人と滅びる人を生まれる前から決めていて」、トランプ氏は自らを「選ばれた人間」と考え、それゆえ、どんな試練にも耐え抜くことができるし、耐え抜いて成功させる歴史的使命がある、という固い信念を持っている。聖書に「光の子」と「闇の子」という概念があるが、トランプ氏とその支持者たちは、今回の暗殺未遂事件で、一歩間違えば、頭に当たっていた弾丸が、トランプ氏がスクリーン資料を見るのに首を傾けたことで、耳をかすめただけで死を免れたのは、トランプ氏が、「選ばれた人間」で、「光の子」であるとの神の意志を強く感じただろう。


共和党は15日開幕した全国大会でトランプ氏を同党の大統領候補に正式決定した。副大統領候補もJ・D・バンス上院議員に決まった。同日には米連邦地裁が機密文書を不適切に扱ったというトランプ氏の疑惑を巡る検察の起訴を却下した。

賭け市場では大統領選挙でトランプ氏の勝利に賭けるオッズはかつてないほど高まっている。トランプ氏が大統領に返り咲いた場合の政策を考慮して株式や債券、通貨などに賭ける「トランプトレード」も勢いを増している。

ただ、大統領選挙まで時間はあり、バイデン撤退で波乱の種が残る状況下で、トランプ・トレードの織り込みすぎると、反動にも警戒が必要となる。



ドル円:トランプ・トレードが意識されドル安

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)

6月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、米利下げ観測の高まりに合わせて、円買い・ドル売り介入に踏み切ったとの観測が浮上。ドル円は7月3日高値を起点に調整入りとなっている。

ドル高牽制発言

更に、各マーケットでは、トランプ再選を先取りする「トランプ・トレード」が意識される中、トランプ氏は16日公開の米ブルームバーグとのインタビューで、為替政策について、強いドルが問題だと指摘し、人民元と円の弱さを名指しで批判した。インタビューの公開後、外国為替市場では急速に円高・ドル安が進み、155円台前半まで続落した。


また、17日の米ブルームバーグ通信のインタビューでは、河野太郎デジタル相が円安是正のために日銀に利上げを求める姿勢を示したことや、FRB当局者発言で利下げ観測が根強かったことも一因。ウォラー理事は17日の講演で「利下げが正当化される時期に近づいている」との認識を示し、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、数カ月内に利下げが妥当となる可能性があると言及した。


ただ、前週末は155円が下値支持として意識され反発。18日夜にトランプ前大統領が共和党の党全国大会で大統領候補の指名受諾演説に臨み、改めて対中関税引き上げや減税、移民の流入制限などの方針を示し、トランプ氏が再選された場合のインフレ圧力や米金利の高止まりが意識され、155円を前に巻き戻しの動きとなった。トランプ氏は、これまで大統領選挙前の利下げに対して、民主党に有利になるとして牽制を行っている。


ドル高牽制を行いながら、利下げを牽制するなど、ケースバイケースで理路整然としないトランプトレードの復活である。今後もトランプ氏の発言でアップダウンする可能性には注意したい。


テクニカル面からはドル円は、目先の天井を確認したものの、52週移動平均線と重なる150円水準を維持する間は、中期ドル高トレンドに変化はでない。



金:「安全資産」の顔がクローズアップされるか?

【今週見通し・戦略】

NY金(8月限)

JPX金(日足)

NY金(8月限)は、ネックライン(5/3安値)と重なる心理的節目2300ドル~上値抵抗だった心理的節目2400ドルのレンジを、米CPIを受け上放れ。これまでの上値抵抗だった2400ドル水準を下値支持として、レンジの倍返し2500ドル水準を試す動きとなった。

【今週見通し・戦略】

前週末のNY金は、心理的節目2400ドルを割り込んだが、2300ドル~2400ドル水準は、価格帯別出来高の厚い支持帯。


JPX金は、円高が弱気要因となったが、海外金(NY金)相場高が相殺し、調整は限定的となっている。上昇チャネル中段では、押し目買いが強まりそう。調整安を入れた後は、一目均衡表からは、N=12650円、V=13014円、E=13380円、別カウントでは、N=12444円、E=12696円などを試す流れが継続しそうだ。


米マイクロソフトの基本ソフトウェア(OS)「ウィンドウズ」で19日に発生したシステム障害は、世界各国での大規模システム障害の同時多発に繋がった。完全復旧の目途は立っていない。広範な産業や政府機関に影響が及び、航空業界では少なくとも4万を超える便が遅延。パリ・オリンピックにも影響が出ることは必至の情勢だ。

今回のオリンピックは、夏季競技大会史上初めて、開会式はスタジアムの外で行われる。開会式はパリの中心を動脈のように流れるセーヌ川沿いで行われ、無料で開会式を見ることができる。何10万人もの観客がセーヌ川沿いの祝典に無料参加できるなど、警備が難しい状況だ。フランスが関与しているアフリカや中東絡みでのテロが発生する懸念がある中、過激派組織「イスラム国」からはテロ予告がなされている。調整局面では「安全資産」としての買いが下値を支えそうだ。押し目買い戦略継続。



【米フィラデルフィア連銀景況指数】

米国 フィラデルフィア連銀業況指数



【中国GDP】

中国 実質GDP成長率四半期推移(前年)



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

この記事を読んだ方にお勧めの記事

  • 米連邦準備理事会(FRB)は20日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的引き締め(QT)を近く減速する方針を固めた。政策金利については年内に3回引き下げる予想を維持したものの、インフレ率は想定を上回る根強さで先行きに不透明さを残す。

  • 10月の米消費者物価指数(CPI) 11月FOMCではインフレに関して「自信を深めている」との文言を削除し「進展した」と表現 ・パウエルFRB議長とウォラー理事の講演

  • ブラックアウト期間入り(金融政策に関する発言自粛)・ECB理事会 利下げの可能性。7月に追加利下げあるのか否かが焦点

他ジャンルの最新はこちら

  • 金投資の基礎知識

    純金積立で手堅く資産を築くための3つのポイント

  • スペシャル

    トリプルレッドを受けた金相場見通し

    接戦と報道されていた米大統領選挙は、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が圧勝した。激戦7州全てがトランプ氏の勝利となった。全米で獲得した選挙人の数が固まり、初当選した2016年に獲得した選挙人の数を上回った。

  • 動画

    トランプトレードの巻き戻しか?大統領選後の市況とウクライナ情勢について解説します。


当サイトのコンテンツは情報提供を目的としており、当社取り扱い商品に関わる売買を勧誘するものではありません。内容は正確性、 完全性に万全を期してはおりますが、これを保証するものではありません。また、当資料により生じた、いかなる損失・ 損害についても当社は責任を負いません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。 当資料の一切の権利は日産証券株式会社に帰属しており、無断での複製、転送、転載を禁じます。

取引にあたっては、必ず日産証券ホームページに記載の重要事項リスク説明等をよくご確認ください。
重要な注意事項についてはこちら