『誰の負債でもない資産』とはどういうことか
経済を回すとは、お金を回すということです。必要な所へお金を回すことで経済全体が活気づきます。ただし、お金を回すということは、出資やお金の貸し借りが発生するということでもあります。投資には大きな利益を獲得できる可能性があるとともに、一定のリスクが伴います。今回は、株式や債券と比較しながら、「誰の負債でもない資産」をみてみましょう。
資産運用とリスクの存在
金融とは、お金を融通すること。お金が余っている所から足りない所へ回すことをいいます。株式や債券の性質を考えるとよく分かります。資金を必要とする企業は株式や債券を発行し、投資家は株式や債券を購入することにより、企業に資金を供給します。株式と債券の大きな違いは、株式は企業の元手(自己資本)となりますが、債券は借金(他人資本)ということです。
投資家サイドからすると、株式への投資はその値上がり益や配当を期待できる一方、リスクとしては、企業の倒産や経営悪化による株価の下落などが挙げられます。
債券は企業が借用書として発行するものです。債券は借金ですから、満期になれば投資家は元本の返済を受けることができます。お金を貸している期間は銀行預金と同様に利子が払われます。リスクとしては、やはり企業の倒産や債券価格の下落などがあります。
株式や債券にはこのようなリスクがありますから、発行体の経営状況等を調査して投資を行う必要があります。
国債と「国の借金」
企業だけでなく、国も債券を発行します。企業が発行する債券よりはリスクが少ないといえますが、国が発行する債券(国債)も借金である以上、債務不履行リスクがあります。日本の財政状況は非常に厳しく、国債と借入金、政府短期証券の残高を合計したいわゆる「国の借金」は、2020年12月末時点で1212兆4680億円となり、初めて1200兆円を突破しました。コロナ禍の収束が見えない中、また、少子高齢化がさらに進展する今後を考えても、「国の借金」はまだまだ増えると見込まれます。個人で気軽に購入できる個人向け国債が人気ですが、リスクはゼロではありません。
「誰の負債でもない資産」とは?
このように、株式や債券に投資をしてリターンを得ようとすると様々なリスクと向き合う必要があります。大きな利益を得るチャンスがある一方、発行体そのものが潰れてしまえば、投資した金額は回収できません。そこで注目されるのが現物資産である金(ゴールド)です。もちろん金も資産ですから、その取引には価格があります。株式や債券と同様に、その価格は上下しますし、売却のタイミングによっては損失を被ることもあるでしょう。しかし、金は誰かの借金ではありません。発行体があるわけでもなく、借金の質物として流通しているわけでもありません。取引価格が上下することはあるにせよ、現物資産である金を保有していることが価値そのものなのです。
有史以来、金は古今東西で希少な財物として存在し続けています。人類が株式や債券、お金(マネー)などを発明する以前より、価値あるものとして存在しているのです。希少性のある現物資産は、「誰の負債でもない資産」として、今後もその価値を保ち続けることでしょう。