NY金、2000ドルの下値支持確認|【Weekly Report】週間予定
2024年3月4日
週間展望(3/4~3/10)
このページで知れること(目次)
週間予定:FOMC議長議会証言、米雇用統計、スーパーチューズデー
前週:スウェーデンNATO加盟へ
ドル円:終値ベースでの152円水準の攻防が焦点
金:NY金、2000ドルの下値支持確認
【先物市場が織り込む利上げペース】
【OPEC財政均衡価格】
金ETF
週間予定:FOMC議長議会証言、米雇用統計、スーパーチューズデー
今週は、6日と7日にパウエルFRB議長の議会証言。
経済指標では、8日発表の2月の米雇用統計が最大の注目となる。非農業部門雇用者数が前月比+19.0万人と前回の35.3万人から伸びが大きく鈍化予想。失業率は3.7%で1月と同水準予想。非農業部門雇用者数の伸びは大きく鈍化見通しだが、水準的に19万人増加前後であれば低いものではない。直近2回の+.33.3万人、+35.3万人が大きすぎた側面も。数字的には大きな鈍化という印象が材料視されやすい。
政治イベントも多く、米国ではスーパーチューズデー、中国では全人代が開催される。トランプ前大統領の初公判や、バイデン大統領の一般教書演説なども予定されている。
米議会下院は2月29日、政府機関の一部閉鎖を回避する法案を賛成320票、反対99票で可決し、上院に送付した。同法案は、3月1日午前0時に期限切れとなるつなぎ予算の一部を1週間延長するほか、つなぎ予算の他の部分に関する期限も3月22日とするもの。次の期限に向けた動きにも注意したい。
前週:スウェーデンNATO加盟へ前週:米CPI・PPI
【NATO】
スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟が2月26日、確定した。ハンガリー議会が承認し、全加盟国の手続きが完了した。
1800年代初頭のナポレオン戦争後およそ200年にわたって軍事的中立を掲げてきたスウェーデンは、2022年のロシアのウクライナ侵攻を受けて政策を転換した。
同年5月にフィンランドと同時にNATO加盟を申請し、最終的に両国が加盟を実現させた。
ただし、トランプ前米大統領は、NATO加盟国への防衛義務を順守しない可能性に言及している。前大統領はかねて、国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に増やすNATO目標を達成していない国への不満を表明しており、脱退の可能性も懸念されていた。
NATOは全加盟国が話し合ってコンセンサス(同意)を得る方式をとるが、加盟国増加で意思決定に手間取る可能性が高まる。さらに、NATO第5条(NATO加盟国の1つに対する攻撃はNATO全体の攻撃とする原則)が発動を迫られるリスクも高まる。
足元では、米国がウクライナから距離をとる動きがある一方、マクロン仏大統領がウクライナへの特殊部隊の派兵を検討していると報じられるなど、ロシア-ウクライナ戦争にNATOが巻き込まれるリスクも高まっている。
ドル円:終値ベースでの152円水準の攻防が焦点
【今週見通し・戦略】
先週のドル円は、1月の個人消費支出(PCE)デフレータ発表までは、様子見ムードが強く、150円台で一進一退の動きが続いた。PCEデフレータは、前年比+2.4%で市場予想通りとなり、前回の+2.6%を下回った。コア前年比は+2.8%で市場予想通りとなり、前回の+2.9%を下回った。前年比は総合、コアともに市場予想通りで、前回を下回った。
1月の米消費者物価指数は市場予想から上振れしたものの、1月のPCEデフレータは上振れしておらず、発表後はドル売りが優勢となった。
2月29日に日銀の高田審議委員は「2%の物価目標実現がようやく見通せる状況になってきた」と述べた。金融緩和が正常化に向かう条件が整いつつあるとの認識を示したことをを受けてドル円は東京時間に150円台半ばから149円台半ばまでドル売り円買いが進んだ。日足ベースでは、150円を中心とした保合い放れに移行中。週足べースでは、引き続き、終値べースでの152円水準の攻防戦が焦点。同水準を上抜けない限り、大きな円安は発生しない。徐々に日銀のスタンスにも市場の関心は向いていく感触。
議会証言&雇用統計
今週は、6日と7日にパウエルFRB議長の議会証言が注目。経済指標では、8日発表の2月の米雇用統計が最大の注目となる。前回は、非常に強い米雇用統計を受けて、ドル円は146円台半ばから148円台後半まで大きく上昇した。ただ、前週末の2月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は、市場予想を下回り、2月の米消費者態度指数(ミシガン大学調べ)確報値は速報値から下方修正され、FRBが6月もしくは7月FOMCで利下げを開始するとの観測が強まってる。非農業部門雇用者数は、大幅鈍化見通しで見た目のGAPが材料視(円高ドル安)される可能性には注意。
金:NY金、2000ドルの下値支持確認
【今週見通し・戦略】
既存レポートで、≪週足(期近つなぎ足)ベースで、2000ドルが抵抗線から支持線に変化しており、一時的に割り込んでも、ドル離れが進むG7以外の中央銀行が買いを積み増すと見ら、押し目は値幅的にも日柄的にも限定的となりそうだ≫としたが、NY金(4月限)は、心理的節目2000ドル以下は、すかさず買い拾われ、前週末は大幅続伸した。
1月の米建設支出や、2月の米ISM製造業景気指数が弱かったほか、2月の米ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値が速報値から下方修正されたことから米長期金利が下落。ドルを圧迫し、金相場を押し上げた。3月のFOMCでは、利下げ開始は見送られる公算だが、米経済の不透明感から利下げ期待が再開してきた。
燻る地政学リスク
イスラエルと武装組織ハマスの停戦協議の動向がほとんど伝わらないことは安全資産である金の支援要因。パレスチナ自治区ガザにおける恒久的な停戦を要求するハマスと、ガザ地区からのハマス排除を目指すイスラエルの協議が難航している。3月10日から始まるラマダンを控えて、パレスチナ自治区ガザ最南部ラファ侵攻リスクは高まっている。
3年目を迎えているウクライナ紛争に、北大西洋条約機構(NATO)が直接的に介入するとの警戒感が高まりつつあることも買い要因。仏ル・モンドは、マクロン仏大統領はウクライナへの特殊部隊の派兵を検討していると報じている。
2月28日からブラジルで始まったG20財務相・中央銀行総裁会議で、ロシアの凍結資産(外貨準備)約3000億ドル(45兆円)をウクライナ支援に転用することの是非が話し合われる見込みだが、元ECB専務理事でイタリア中銀のファビオ・パネッタ総裁が述べたように、通貨システムを兵器のように扱うことは絶大な効果が期待できる一方、ドル離れやユーロ離れを誘発するもろ刃の剣となり、代替通貨の出現を促す。この基軸通貨ドルの揺らぎは、金やビットコインにとって強気要因。
円高になってもNY金高が、NY金安になっても円安が下値を支え、円建て金の優位性は継続している。1万円が地相場になる流れ継続。
【先物市場が織り込む利上げペース】
【OPEC財政均衡価格】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。