Weekly Report 2023年11月20日(月) | 【公式】日産証券の金投資コラム

Weekly Report 2023年11月20日(月)

NSトレーディング 菊川弘之
2023年11月20日

週間展望(11/20~11/26)

週間予定:IHSマークイットPMI、FOMC議事録

【週間スケジュール(11月20日~11月26日)】

24日にIHSマークイット米購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表。市場予想は製造業PMIが49.8、非製造業PMIが50.5と、10月の50.5、50.6からともに小幅な鈍化見通し。

サービス業は鈍化とはいえ2月以来の50超えを維持する見込みだが、4月の54.9をピークに、ここ3ヶ月は50.5、50.1、50.6と50台での推移。今回も予想前後になると4ヶ月連続での50台となる。


米雇用市場の鈍化警戒が強まり、個人消費も警戒感が見られる状況となる中で、設備投資などに大きな影響を与える企業の景況感鈍化がはっきりしてくると、底堅さを見せる米景気への厳しい見方や、米危機後退懸念からドル売りにつながる可能性も。


23日にはユーロ圏及びドイツ・フランスのPMI速報値と英国のPMI速報値、24日にはドイツIfo景況感指数が発表される。


FOMC議事録を受けて、欧米との金利差縮小思惑が強まるか否かにも注目。


今週は。日本が勤労感謝の日、米国がサンクスギビングデーで休場入りすることで、週末にかけては薄商いが予想される。



前週:米中首脳会談

【米中首脳会談】

米中首脳会談

先週はコロナの影響でしばらくの間、中断していた台湾での講演会だった。約4年ぶりの訪台だったが、街は来年の台湾総統選挙モード一色。訪台中に飛び込んできたニュースが、野党の国民党と台湾民衆党の連携だ。国民党のシンボルカラー「藍」と台湾民衆党のシンボルカラー「白」を取って、「藍白合作」と称するこの連携で来年の総統選挙の行方は、混沌としそうだ。台湾メディアの世論調査では、与党・民進党の頼清徳氏が4割近い支持を固め優勢だったが、それぞれ2割後の支持があった野党候補の一本化によって支持率は逆転する可能性が出てきた。

イスラエルへのハマスによる攻撃が行われた際には、米国が2正面作戦(ウクライナ・ロシア戦争とイスラエル・ハマス紛争)にとらわれている間に、朝鮮半島では北朝鮮が韓国を、台湾海峡では中国が封鎖に動くなどとの噂がSNS上で飛び交かった様だが、中国としては台湾総統選挙前のこの時期に、あえて事を荒たげる必要はなく、米国のウクライナ支援の実態から、現地では「米国は金を出しても最終的には軍を派遣しない・守らない」との声も聞いた。経済・ビジネス的には、中国との関係をよくすべきとの声が多かった感じだ。


米中首脳会談・日中首脳会談が対面で行われ、米つなぎ予算の延長も決まり、短期的にはリスクオンモードが高まることは、落ち込みを見せている経済を押し上げるために各国の利害の一致するところであろう。



ドル円:米利上げ打ち止め観測

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)

10月の米消費者物価指数は前月比変わらず、前年比+3.2%となり、それぞれ事前予想の+0.1%、+3.3%を下回った。コア指数は前年比+0.2%、前年比+4.0%となり、それぞれ事前予想の+0.3%、+4.1%を下回った。

これを受けて、米利上げ打ち止め観測が広がり、米10年債利回りは低下して、ドル売り・円買いにつながった。

利上げ打ち止め感

15日の米生産者物価指数も、前月比-0.5%、前年比+1.3%とそれぞれ事前予想の+0.1%、+1.9%を下回った。コア前月比は前月比変わらず、前年比+2.4%となり、こちらも事前予想を下回った。


その他の米マクロ経済指標は、強弱まちまちであったものの、米金利先物の値動きから金融政策を予想する「フェドウオッチ」によると、17日夕時点でFRBが12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で現在の政策金利水準を維持する確率は100%。


サンフランシスコ連銀のデイリー総裁も17日の講演で、経済見通しの不確実性を踏まえてFRBは「待つという大胆さ」が必要だと述べ、追加利上げに慎重な姿勢を示したこともあり、前週末のドル円は、150円割れまで急落している。


今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨があるが、米金利引き上げの打ち止め感が強まると、10月末の安値のネックライン割れから、テクニカル面からの売り圧力が高まる可能性も。


ドル円152円を超えてくると、政府・日銀によるドル売り円買い介入警戒感が高まりやすい中、米つなぎ予算の延長も決まり、債券売り(金利上昇)圧力も後退している。


一方、10月30日安値(148.76円)~ネックライン(11/3安値:149.13円)を割り込むと、ダブルボトム完成が意識され、テクニカル的な売り圧力が高まりやすい。10月30日安値(14876円)~11月高値(151.90円)のレンジ下放れた場合の目標値は、145.62円。



金:米利上げ打ち止め観測や、ユーロ高が支持要因

【今週見通し・戦略】

NY金(12月限)

NY金(月足)と米10年債利回り

NY金(12月限)とユーロドル(日足)

10月の米CPIは前年比3.2%上昇と前月(3.7%)から伸びが縮小し、事前予想(3.3%)も下回った。米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は、米インフレ率について、失業率の大幅上昇を伴わずに、少なくとも過去40年で最も速いペースで低下していると述べた。米PPIは同1.3%上昇と前月の2.2%から伸びが縮小、事前予想(1.9%)も下回った。


一方、米小売売上高は前月比0.1%減少したが、事前予想(0.3%減)ほど落ち込まなかった。米新規失業保険申請件数は1万3000件増の23万1000件と事前場予想(22万件)を上回り、労働市場が緩和していることを示唆した。


NY金は、米金利引き上げ打ち止め感を背景に200日移動平均線を回復。「フェドウオッチ」によると、17日夕時点でFRBが12月のFOMCで現在の政策金利水準を維持する確率は100%。


サンフランシスコ連銀のデイリー総裁も17日講演で、FRBは「待つという大胆さ」が必要だと述べ、追加利上げに慎重な姿勢を示した。一方、ドイツ連邦銀行(中央銀行)のナーゲル総裁が17日の講演で、インフレ圧力の根強さに言及するとともに「早すぎるタイミングで利下げを始めるのは賢明ではない」との考えを示したと伝わった。欧州中央銀行(ECB)の早期利下げ観測をけん制する内容だとして、ユーロ買い・ドル売りとなっている。

米中首脳会談

米中首脳会談でも、多くの人が感じたように、今後の国際秩序の再編のリーダーは中国であることが示されたことは、米国の覇権・基軸通貨ドルの揺らぎに繋がり、金にとっての長期的な下値支持要因となるだろう。



【米消費者物価指数】

米国 消費者物価指数(前年比)



【米小売売上高】

米 小売売上高(前年比)



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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