広がる金ETFが下値をささえる?
この記事は2021年5月27日に掲載されたものです。ご注意ください。
古代より富や権力を象徴するものとして存在感を示し続けてきた金。有史以来その価値を損なったことはなく、現在においても変わらぬ価値を保っています。いや、むしろ価値が上昇しているといった方が良いかもしれません。金の価格は右肩上がりで、1gの価格は7,000円を超えました。こうした状況において今、金ETFが注目されています。
金ETFとは
金投資には、純金積立や金地金(インゴット)、金貨といった現物を購入する方法のほか、金ETFという手段があります。ETFとは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など特定の指数に連動した運用成果を目指すもので、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託をいいます。ですから、金ETFは金価格に連動するETF(上場投資信託)となります。金価格は数十年にわたり上昇を続けており、2020年の平均価格は6,122 円となりました。2021年5月には7,000円を超えており、今後どこまで上昇するのかに関心が集まります。
金ETFは、証券会社で口座を開設して株式と同じように売買できます。上場会社の株式同様に日々価格が変動するので、数ある金投資の中でも最も投資していると実感できる商品かもしれません。
市場の不安に備える金
世界的に“カネ余り”といわれます。各国の大規模景気刺激策によって「じゃぶじゃぶ」にあふれ出たマネーが行き場を失い、金融市場に向かっているとされる中、新型コロナウイルス感染症が全世界を襲いました。FRBなどの中央銀行が過去最大級の量的緩和策をとり、著しく低い水準で金利が維持されておりますが、新型コロナウイルス感染症を背景とした危機的な状況においては、今後も引き続き量的緩和策がとられると思われます。
新型コロナウイルス感染症の猛威はいまだに収まりません。世界的に実体経済が悪化するとみられる中、金融市場に流れ込んだ「じゃぶじゃぶ」マネーがコロナ禍における株高を演出しているという声があります。最後は国が何とかしてくれるという期待や希望で支えられている側面もあるでしょう。こうしたことを鑑みると、現在の金融市場は健全ではないという見方もできます。アンバランスなものはいずれバランスをとるために大きく崩れることが予想されます。万が一に備え、資産運用におけるリスク分散の観点から、株式以外の資産にも目を向けたいところです。
そこで注目されるのが金。従来、株式に対するヘッジとして選択されていたのは債券です。株式に比べてリスクもリターンも低い商品ですが、安全性の面から選ばれてきました。しかし、すでに金利がこれ以上なく下がっており、満足できるリターンは見込めなくなりました。こうした状況になると、資金の逃避先として、金利のつかない金も同じステージに上がってきます。
金ETFは金への投資商品ですが、単に値上がり益を狙うだけでなく、リスク分散商品としてポートフォリオに組み入れるという意識が高まっています。不安定な社会経済環境においては、金は安全資産であるという認識は一段と強くなり、世界的な金投資の潮流がいまの金相場を支えているといえるでしょう。コロナ禍の収束はいまだ見えません。ポートフォリオの一部に金が組み込まれていることによるリスク低減効果への関心はさらに高まると思われます。金を保有しているという安心感が投資家の中にある限り、金価格が崩れる可能性は低いのではないでしょうか。
5月の連休明けには、金価格が7,000円を超えました。10年前と比べても2倍以上になっています。金の価値は歴史的に裏付けられたものです。先行き不透明だからこそ長期的な視点を持ち、ポートフォリオに金ETFを組み入れることを検討してみてはいかがでしょうか。