金現物200日移動平均が2000ドルを突破
金や原油など国際商品の価格上昇が目立つ。ドル建ての金現物価格は今月9日、200日移動平均線が2000ドルを超えた。ドル建ての国際商品はドル安になると価格が上がりやすいが、ドル高の局面では上値が重くなると言われる。
しかし、今年に入っても外国為替市場でドルは堅調に推移している中、年初に1トロイオンス2050ドル台だった金現物価格は、直近で一時2400ドルを超えた。
200日移動平均は代表的な長期トレンドラインであるが、2010年に1000ドルの大台を超えた際には、その後上昇が加速しわずか2カ月~5カ月の期間を経て100ドル幅の節目を切り上げていった。
大手地金商が公表している金の海外相場と国内小売価格の、19年1月と24年3月の月間平均値を比較すると、海外は1.67倍、国内は2.28倍で、円建ての国内価格のほうがより大きく上昇している。1ドル=110円程度から150円台に変わった超円安の影響はここでも大きい。
この間に世界ではコロナパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナハマスの新たな中東危機が起きた。いずれも、ほとんどの人にとって想定外の出来事だ。中国などの中央銀行による準備資産としての金の購入がここ数年の金上昇の要因となっていたが、ここにきて何が起きるかわからない不安心理が個人による金の実需に結びついているようだ。
不動産バブルが崩壊して株価も下がった中国では、昨年から若者も含めた個人による金の「爆買い」が繰り返しニュースになる。
購入理由は「将来への不安」が多いという。米国でも倉庫型小売りチェーンの「コストコ」で金地金が販売されるようになり、その売り上げは2億ドルを超えるなど個人の金購入が増えており、こちらは「金利が上がったら、金利のつかない金は売れなくなる」という別の通説を否定する。
ここ1年は米実質金利と金価格は連動して上昇しており、米国の債権者(米国債保有者)がFRBはインフレを抑えることができないと見始めたのでは?とも受け取れる。
米国では24年3月の雇用統計を受けて、利下げに転じる時期が見通しにくくなった。
一方、欧州では物価高を背景に22年9月にマイナス金利を解除したスイスが今年3月に物価は抑制されたとして主要国にのなかで最初に利下げに転じ、またECBも6月に利下げが始まるとの見方が強い。4月中旬時点でスイスフラン建て金価格は年初来で25%高、ユーロ建ては同19%高と円建ての26%に次いで大きい上昇を見せている。
為替はドル高基調がなお続きそうだが、足元では中東情勢の緊迫という地政学リスクが金や原油の価格を支えている。ドル高即ちドル建て商品安とはならずに『法定通貨全体』対『実物資産』の様相となっている。