金の価格とドル相場は連動しているのか!その相関関係とは?
金価格と米ドルの相関関係について、理由や背景を解説します。金と米ドルはどちらも世界的な通用力があることから、ドルが強い時は金が売られ、ドルが弱い時は金が買われる傾向があります。しかし、相関関係は完全なものではなく、市場の動向によっては金と米ドルがともに値上がりしたり、値下がりしたりするケースもあります。
金価格と米ドルの逆相関関係とは
金の価格は、米ドル相場が値上がりすれば値下がりし、米ドルが値下がりすれば金が値上がりする傾向があります。このことから、金と米ドルには逆相関関係があるとされています。この相関関係を利用すれば、金の相場の動きをある程度予想でき、金が比較的安い時に買って、高い時に売ることも可能です。
金と米ドルが連動する理由は、一義的には、金の価格は米ドル建てで決定されることです。単純に、ドルが高いほど金が安く買え、ドルが安いほど金が高価になります。
金も米ドルも世界通貨としての機能を持っている
金と米ドルの相場が逆相関関係となる理由はほかにもあります。アメリカのドルは世界の基軸通貨であり、金もまた、世界共通の通貨のような機能があるためです。
金は希少価値のある金属で、最近は電子機器の部品にも利用されるなど実用性も兼ね備えています。そのため、株式のように価格が激しく下落して、紙くず同然になってしまうことはありません。また、金はかつて通貨として世界で幅広く通用していた経緯があり、現在も、無国籍のお金のような立場を持っています。
他方、現在、世界の基軸通貨はアメリカのドルです。世界経済が安定しており、アメリカの景気が良く、ドルの価格が高い時は、金利も高くなり、株式や債券を購入したほうが儲かります。金には利息が付かないため、ドルのほうが他の投資商品を購入し運用できるぶん魅力的となり、金が値下がりしてドルが値上がりします。
一転して、テロや感染症などで世界経済が不安定になると、アメリカの景気も低迷し、ドルが下落します。また、そのような事態においては各国の銀行が経済対策として低金利・ゼロ金利政策を打ち出します。すると、金には利息が付かないというデメリットが薄くなります。また、金は特定の国の状況に依存しないため、安全資産として買われ、値上がりするのです。
例えば、2001年にアメリカで同時多発テロが起きた際は、アメリカ経済の先行きに対する不安から、ドルやドル建ての他の資産が大きく値下がりました。他方、金の価格は高騰しました。リーマンショックや、コロナショックでも同様の動きが生じました。
金価格と米ドルが逆相関しないケースもある?
とはいえ、現実には、そう単純に金とドルが逆相関の関係で値動きするわけではありません。世界情勢が不安定になった時、先行きをどう読むかで市場の方向性が異なった動きを見せ、結果として金もドルも両方値上がりしたり、逆に両方値下がりしたりすることもあります。
例えば、2020年11月末には、新型コロナウイルスワクチンの効果の高さが発表され、将来的な景気回復への期待感が強まったことや、バイデン大統領に政権移行の手続きがなされる見込みとなり、大統領選をめぐる不透明感が払しょくされたことから、安全資産である金を売る動きが生じ、金価格が安くなりました。
しかしながら、この時期の米ドル価格は各国主要通貨に対して横ばいかやや下落となり、金も米ドルも両方安くなる現象が発生しています。
とはいえ、基本的には、有事の際には金が買われて値上がりし、ドルが売られて安くなる構図は変わりません。世界的なコロナ禍収束の道筋が見えるまでは、金が高値で取引される傾向は続きそうです。