話題のデジタル通貨って?
日常生活において何か物を買ったり、サービスを受けたりした場合には対価を支払う必要があります。しかし、物理的な現金を使わずに1日を過ごすことも珍しくなくなりました。世界的にキャッシュレス化が加速しています。キャッシュレスとは、現金を使用しなくても活動できる状態のこと。キャッシュレス社会においては、物理的な現金の代わりにデジタル通貨が主役となります。今話題のデジタル通貨についてみてみましょう。
世界で進むキャッシュレス化
経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(平成30年)から、世界のキャッシュレス決済比率をみてみると、韓国の89.1%を筆頭に、中国60.0%、カナダ55.4%、イギリス54.9%、オーストラリア51.0%などとなっています。わが国のキャッシュレス決済比率は18.4%にとどまっていますが、コロナ禍において現金を扱うことに不安を感じる方もおり、今後、デジタル通貨によるキャッシュレス化が進むと思われます。ちなみに、日本では2027年までにキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目標に掲げています。
デジタル通貨とは?
デジタル通貨の明確な定義はありません。一般に、電子マネーや仮想通貨(暗号通貨)など、「デジタルデータに変換された、通貨的な価値のあるもの」がデジタル通貨といわれます。その他、国家の中央銀行が発行するCBDC(中央銀行発行デジタル通貨)も注目されています。
【デジタル通貨】
デジタル通貨の特徴は?
それぞれの違いや特徴をみてみましょう。
電子マネーと仮想通貨の大きな違いは、法定通貨を基準としているかどうかです。電子マネーは法定通貨の代替です。例えば、交通系のSuicaであれば、あらかじめ「チャージ」(入金)することで、切符や定期の代わりとしてだけでなくコンビニや飲食店などでも使うことができます。小銭を持ち歩かずにすみますし、支払いがスピーディーにできるなど、使い勝手がよいデジタル通貨といえます。なお、電子マネーは、あくまでも日本円をデジタル化したものですから、日本円を発行する日本銀行の信頼を担保にしています。
仮想通貨は、暗号技術を活用して開発されたデジタル通貨の一種です。国家によって価値を保証されているわけではありませんが、主にインターネット上で物品もしくはサービスの対価として使用することができます。国家や中央銀行のような管理組織が存在するわけではないので、ブロックチェーンという仕組みによって安全性を高め、国に依存しないシステムを構築しています。中央銀行の持つ信用が価値を担保する電子マネーに対し、仮想通貨は法定通貨とは異なる方法で価値を担保している点が特徴です。
CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)とは、日本銀行によると、①デジタル化されていること、②円などの法定通貨建てであること、③中央銀行の債務として発行されること、という3つを満たすものです。2020年10月、「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」が公表されました。その中で、「今後、中央銀行デジタル通貨に対する社会のニーズが急激に高まる可能性もある」としており、今後の動きが気になるところです。
ビットコインと金(ゴールド)の共通項は?
デジタル通貨の中でも特に話題となることが多いビットコイン。デジタルゴールドとも呼ばれるこの仮想通貨は、国家が管理する法定通貨ではなく、金(ゴールド)と似ている部分があります。どちらも取引価格が上下しますし、国家や発行体による政策的な管理を受けるわけではありません。希少性をみても、ビットコインには発行枚数の上限がありますし、金の埋蔵量も限られています。ビットコインも金も、希少で貴重な存在感を示しているといえるでしょう。
給与のデジタル払い!?
デジタル通貨に関しては、注目される動きがあります。それは、給与の「デジタル払い」が解禁されるのではないかということです。国全体のデジタル化が課題となっている中、生活資金の基盤である給与支払いのデジタル化を解禁することで、キャッシュレス化を進めようとする試みです。近い将来、PayPay(ペイペイ)やLINEペイなど、スマートフォンの決済アプリに給与が振り込まれる日がやってきそうです。
情報通信技術の急速な進歩を背景にしたデジタル化の動きは、ポストコロナの時代において、通貨の分野でも加速していくものと思われます。数年後には従来の常識が大きく塗り替えられているかもしれません。