金:米債務問題・ドルの基軸通貨の揺らぎ再燃|金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細|【Monthly Report】月間展望(6月)
2025年6月2日
~6月1日~6月30日 ~
このページで知れること(目次)
ドル円:三角保合い放れ待ち CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円(日足)
金:米債務問題・ドルの基軸通貨の揺らぎ再燃 金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細
6月注目スケジュール:G7(日米首脳会談)・東京都議会選挙・ECB理事会
ドル円:三角保合い放れ待ち
CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円(日足)
【今月見通し・戦略】
5月のドル円は、関税問題や、米国債格下げ(ムーディーズ)に左右される展開が継続した。
米英の貿易協定の合意に続き、米国と中国は12日、相互に発動した関税を引き下げることで合意したと発表。米国は14日までに累計145%の関税率を30%に、中国は125%を10%にそれぞれ下げる。引き下げた関税の一部を90日停止し、両国で協議を続ける。米中貿易摩擦が緩和に向かうとの期待が高まり、ドル円は148円台まで続伸したが、ムーディーズ・レーティングスが16日、米国債の長期信用格付けを引き下げたことで、戻りを売られた。
更に、米連邦議会下院が22日にトランプ減税の恒久化などを含む減税法案を可決した。穏健派の多い上院での協議では歳出削減案などが修正される可能性があり、財政赤字の一段の拡大が意識される中、21日に米財務省が実施した20年債入札は低調で、日米欧の超長期債の金利が上昇。
「悪い金利上昇」からのトリプル安懸念が、再浮上した。
国内では、超長期債の売買の主体は、かつての生損保から海外勢となっており、 国内投資家に比べて財政リスクにより敏感とされる。夏の参院選を前に消費税減税が議論される中、債務悪化を意識した売り仕掛けが入る可能性はある。
大口投機玉の円買い越し水準は高いものの、ネックラインと重なる140円水準を明確に割り込んでくると、三尊天井完成からの売り圧力が高まりやすいチャート形状になっている点には注意したい。
~CFTC建玉明細・ドル円(週足)・ドル円(日足)~
【CFTC建玉明細】
【ドル円(日足)52週移動平均線】
【ドル円(日足)200日度移動平均線】
金:米債務問題・ドルの基軸通貨の揺らぎ再燃
金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細
【今月見通し・戦略】
4月22日に史上最高値を長い上ヒゲ高値で付けて以降、金相場は緩やかな調整局面入りとなっている。金相場は5月に内外共にダブルトップを完成から、戻り売り優勢な状況だったが、内部要因からは大口投機玉の買い越し整理は進んでいた中、ネックライン割れから、一時的に下げ圧力が高まったものの、大口投機筋は安値を改めて買拾い積み上げる戦略を組んでいる。
今夏に向けて、相互関税の90日間猶予期間は7月上旬、8月には米中相互関税・報復関税上乗せ分の猶予期間や、米債務上限問題が再び浮上してくる。関税協議に対する期待先行でリスクオンの動きが強まったが、関税問題は解決した訳ではなく、先送りになったに過ぎない。
ゴールドマン・サックス・グループは米国への信認を巡る懸念の中で、長期ポートフォリオにおけるインフレヘッジとして金と原油の組み入れを推奨。28日のリポートで、株式と債券に分散投資するいわゆる60/40ポートフォリオ(株式60%・債券40%)においても、金と原油を長期的に組み入れることで平均的年間リターンを維持しリスクを軽減することがこれまでも可能だったと分析。ゴールドマンによれば、そうしたシナリオでは金の安全資産としての魅力が一段と高まるとともに、米国債と米国株の両方が持続的に売られる可能性がある。米国の財政状況とFRBの独立性への懸念が強まった場合、金への資金大量流入が起き、価格が2025年末に1オンス=3700ドル、26年半ばに4000ドルというゴールドマンの現在の予測を大きく上回る可能性があると指摘。
イランとの核開発協議、イスラエルのイラン攻撃リスクなど、金相場は地政学を含めた夏の波乱要因に備えるような押し目買いの流れへ戻っている。ネックラインを下値支持とした中段のもち合いを形成しながら放れ待ちとなりそうだ。
~金価格と米債務・NY金(日足)・CFTC建玉明細~
【金価格と米国政府債務】
【NY金(8月限)200日移動平均線】
【NY金(CFTC建玉明細)】
6月注目スケジュール:
G7(日米首脳会談)・東京都議会選挙・ECB理事会
・植田総裁が内外情勢調査会全国懇談会で講演
経済・物価の見通しについて説明する可能性。
・G7サミット(日米首脳会談)
関税交渉の合意を得たい方針。
7月9日が米国の相互関税の90日間の停止期限
・東京都議会選挙
参議院選挙の前哨戦。
・米雇用統計
非農業部門雇用者数が13万人増、失業率4.2%予想
・株主総会集中日
金融庁の指導を受けて、株主総会前に、どれほどの企業が有報を提出するかが注目
・ECB政策理事会
25bpの利下げ予想。経済見通しにおいて、3月時点からどの程度、経済・物価見通しが下方修正されるか注目。7月以降の利下げに対するスタンスも注目
この記事の監修者

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。