金:短期的な買われ過ぎ感に対する調整局面|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:短期的な買われ過ぎ感に対する調整局面|【Weekly Report】週間予定

NSトレーディング 菊川弘之
2025年4月28日

週間展望(4/28~5/4)

週間予定:日米関税交渉(2回目)・トランプ大統領就任100日・雇用統計

【週間スケジュール(4月28日~5月4日)】

・米GDP速報値

 トランプ関税と季節外れの寒波大雪の影響で第1四半期は大幅減速する見通し


・トランプ米大統領が就任100日を記念してミシガン州で集会開催


・赤沢再生相が米国を再び訪問 ベッセント米財務長官らと2回目の関税交渉へ


・雇用統計・ISM製造業、信頼感


・ドイツとユーロ圏の第1四半期GDP速報値


・日銀金融政策決定会合

 利上げ見送り観測


・FRBブラックアウト期間(金融政策に関する発言自粛)(~5月8日)



前週:日米財務相会談

【日米関税協議】

日米財務相会談スケジュール

日米財務相会談で警戒されていたのが、1985年のプラザ合意のように主要国が協調してドル高是正に動く「第2プラザ合意」だったが、今回は、具体的なドル高是正策は打ち出されず、「為替レートは市場で決定されること」などを確認するにとどまった。


加藤勝信財務相は24日(日本時間25日)、米首都ワシントンでベッセント米財務長官と会談した。トランプ米大統領の関税政策を巡る交渉の一環として行われた日米財務相会談では、米国側が日本側に円安・ドル高を是正するよう要求するとの観測が市場で高まっていたが、加藤氏は会談後の記者会見で「米国から例えば為替水準の目標や、それに対する枠組みの話は全くなかった」と話した。細かなやり取りへの言及は避けながらも、足もとの市場動向について、ベッセント財務長官から特段の言及がなかったことを認め、過度な円安ドル高が修正されつつある現在の市場の動きを、双方が追認した事をにじませた。


ベッセント氏は23日、関税を巡る日米交渉で「特定の通貨目標を求める考えはない」と述べていた。「G7の合意を尊重するよう期待している」とも話していた。

超長期債への切り替え

加藤大臣は「現在行われている日米貿易交渉に関連して、為替について、引き続き緊密かつ建設的な協議を続けて行くことで一致した」と述べた。「日米貿易交渉に関連して」と使われたが、貿易交渉は通商分野の話で、通常、為替などマクロ政策は関係がない。敢えて、これに触れたのは、現在行われている日米貿易交渉の文脈、すなわちアメリカの貿易赤字削減という目的を踏まえて、為替について、今後も協議をしていくと言う意味合いを持たせたと見てよい。米国側は、トリプル安から金融不安に陥るような事態は避けたいものの、緩やかな円高ドル安誘導したい思惑は変わっていない。強いドルとドル高は、必ずしも一致しない点に注意。米国債の売却と超長期債への切り替えなどのスキームは、今後も意識されやすいだろう。



ドル円:米トリプル安懸念が後退

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)MAC(Moving Average Channel)

ドル円(日足)とDoller INDEX

先週のドル円は、トランプ米大統領によるパウエルFRB議長の解任発言騒動で、中央銀行への独立性を巡る懸念からドル安となった。更に、21日にはG20財務相・中央銀行総裁会議に合わせて、加藤財務相とベッセント米財務長官の会談を行う方向で調整が進む中、日本に対して円安是正を求めてくるとの観測がドル売り円買いにつながり、心理的節目140円割れまでの続落となった。その後、トランプ大統領がFRB議長解任報道を否定したことで米国売り(トリプル安)は一服。株高・ドル高で切り返した。ベッセント米財務長官の「関税を巡る中国との対立は長くは続かず、緩和していく 見通し」との発言なども、ドル買い要因となった。


23日には、トランプ政権は対中関税の大幅な引き下げを検討していると報じられたことで、143円台半ばまでドル高円安が進んだ。また、ベッセント財務長官が日本との通商交渉で具体的な通貨目標を追求するつもりはないと述べたこともドル円の支援材料となった。24日に実施された加藤財務相とベッセント米財務長官の会談では、「為替水準や目標などについての言及はなかった」と報じられており、市場は落ち着きを見せている。

日米関税協議

米国の関税措置を巡っては、交渉を担当する赤沢経済再生相が30日~5月2日の日程で訪米し、米側で交渉を担うベッセント氏らと2回目の協議を行う予定。自動車関税の見直しなどを求める日本に対し、米側は非関税障壁の解消や米国産農産物の輸出拡大などを要求するとみられている。


3月28日高値~4月22日安値までの下げ幅に対する38.2%戻し(144.2円)~半値戻し(145.5円)への戻りを試す流れ。一方、米雇用統計や米GDP、3月の米個人消費支出(PCE)物価指数の数字次第では、6月の米利下げ実施の可能性も意識されやすくなる。



金:短期的な買われ過ぎ感に対する調整局面

【今週見通し・戦略】

NY金(週足)52週移動平均線乖離率

JPX金(日足)MAC(Moving Average Channel)

トランプ政権が相互関税を部分凍結した背景にあったのは、「トリプル安(米株安・ドル安・米債安」の金融危機懸念の浮上で、ベッセント財務長官が主導し、トランプ大統領に関税上乗せの一時停止を説得したとされる。この急速な米金利上昇は、安全資産として米国債が買われていないことを表しており、トリプル安(株安・ドル安・債券安)に繋がりかねない悪い金利上昇と言う地合いの中で、史上最高値更新となった。心理的節目3500ドルを超えたものの、52週移動平均線の乖離率は、昨年に調整が入った水準を超え2020年以来、最大の過熱感を示していた中、トランプ大統領がFRB議長解任報道を否定したことで米国売り(トリプル安)が一服。ベッセント米財務長官の「関税を巡る中国との対立は長くは続かず、緩和していく 見通し」との発言なども、ドル買い・米株買い・金売り要因となり、短期的な買われ過ぎ感に対する調整入りとなった。

史上最高値更新

3000ドル~3200ドルが下値支持帯。金を取り囲むファンダメンタルズ同水準への押し目は、買い拾われそうだ。


国際通貨基金(IMF)は最新の「世界経済見通し」を公表し、 米関税の影響を理由に米国や中国など多くの国・地域の経済成長率予測を引き下げた。 貿易摩擦が悪化すればさらに低下すると警告した。世界経済の成長率予測について、2025年を2.8%、2026年を3.0%とし、1月時点の3.3%からそれぞれ0.5ポイント、0.3ポイント下方修正した。


日米財務相会談では、米国側が金融市場の安定を優先させていることが確認された。ドル円は緩やかな円高を取ると思われ、JPX金にとっては、急速に円高が進まなければ、調整は値幅調整は限定的で、日柄調整となる可能性も。



【海外投資家動向】

海外投資家動向と日経平均株価(週次)



【CME FED WATCH】

Fedウォッチが示すFOMCでの政策金利見通し



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

この記事を読んだ方にお勧めの記事

  • 日本消費者物価指数 食料品価格高騰により4%台に上昇か、植田日銀総裁「食品値上がり生活に強いマイナス」・田日銀審議委員発言(タカ派) 前回9月「当面は金融市場の動向を注視」思いのほか慎重発言で一時円売り

  • 東京消費者物価指数 伸び拡大すれば日銀年内追加利上げ観測高まるか「酷暑乗り切り緊急支援」の影響は9月以降・ユーロ圏消費者物価指数 サービスインフレが4.0%割り込むかどうか、インフレ鈍化なら9月追加利下げの可能性も

  • 日銀9月議事録 同会合では植田日銀総裁が政策判断「時間的余裕ある」発言で円安が進んだ・米大統領選挙 トランプ氏とハリス氏の支持率は拮抗

他ジャンルの最新はこちら

  • 金投資の基礎知識

    スポンジPGM先物の中国上場が示す白金市場の転換点

  • スペシャル

    日米関税交渉合意

    参議院選挙で自民・公明両党は過半数の議席を維持できず衆議院に続き参議院でも少数与党となった。

  • 動画

    金地金への関税導入の懸念から見る金価格の動向について



当サイトのコンテンツは情報提供を目的としており、当社取り扱い商品に関わる売買を勧誘するものではありません。内容は正確性、 完全性に万全を期してはおりますが、これを保証するものではありません。また、当資料により生じた、いかなる損失・ 損害についても当社は責任を負いません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。 当資料の一切の権利は日産証券株式会社に帰属しており、無断での複製、転送、転載を禁じます。

取引にあたっては、必ず日産証券ホームページに記載の重要事項リスク説明等をよくご確認ください。
重要な注意事項についてはこちら