金:2025年も、金を買う理由は多い|【Weekly Report】週間予定
2025年1月6日
週間展望(1/6~1/12)
このページで知れること(目次)
週間予定:経済三団体共催の新年会・日銀支店長会議・雇用統計
前週:日本休場中の海外市場は、落ち着いた動き
ドル円:投機的な過熱感は乏しい
金:2025年も、金を買う理由は多い
【主要国公定金利】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:経済三団体共催の新年会・日銀支店長会議・雇用統計
・経済三団体共催の新年会 (年初)
25年度の賃上げに対する経済団体の姿勢に注目
・日銀支店長会議 (9日)
日銀支店長が担当地区の中小企業の25年度賃上げ見通し等を報告する。
全国の中小企業を含めた賃上げ状況を点検する。
春闘に向け、賃上げの動きに勢いが増せば1月会合での利上げ判断を後押しする。
これを受けて14日には、氷見野日銀副総裁講演が控える 。
・米雇用統計
米連邦準備制度理事会(FRB)は2024年9月にフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げ、金融引き締めを緩和方向に転換。
その後も11月と12月に25bpの利下げが行われ、金融環境が緩和する中、2025年は、トランプ政権による政策の不確実性もあり、利下げペースの見通しが分かれてくる可能性。
まずは、堅調な経済が雇用統計で確認されるか否かに注目が集まる。
前週:日本休場中の海外市場は、落ち着いた動き
【日本休場中の値動き】
2025年は、昭和100年に当たる。
失われた30年を経て、若い力を背景に新たな発展を迎えるのか、それとも老いていく没落国として歯止めなく国力が落ちていくのかの分岐点の年になりそうだ。
本年は、干支九星では乙巳(きのとみ)二黒土星中宮の年。
乙は木星の陰であり、草花に例えられる。踏まれても踏まれても、立ち上がるような粘り強さがある。
巳は植物が完全に成長して種子が出来始めた状態を表し、季節では初夏に当たる。
前回の乙巳年である1965年は、国内ではいざなぎ景気が始まった。一方、戦後初の赤字国債が発行された年でもある。
日銀は12月26日、今後も利上げを続けた場合に日銀の収益にどのような影響が出るか試算した結果を発表。短期金利を2%まで引き上げるなど収益がもっとも厳しくなる条件下では2027~28年度ごろに最大2兆円規模の最終赤字が発生するが赤字は一時的にとどまるとした。
試算を公表したのは初めて。今回の試算では、年0.75%のペースで利上げして短期金利が2%になり、短期金利と長期金利の差が0.25%にとどまった場合に収益がもっとも厳しくなる。この場合、25~26年度は収益が生まれず、27~28年度に最大の赤字となる。29年度以降は赤字の額が縮小し、31年度ごろには黒字に転換する見通し。痛みを伴う改革ができるか否か、1月早々にも問われることになる。
ドル円:投機的な過熱感は乏しい
【今週見通し・戦略】
12月の日銀金融政策決定会合では、政策金利は据え置きとなった。今回の会合で0.25%の利上げに動くとの見方も一部で出ていた中、据え置きとなったことで、円売りが加速。植田日銀総裁の記者会見では、「賃金と物価の好循環の確認、もう少し情報が必要」「追加利上げの判断には、もうワンノッチ欲しい」などと述べ、追加利上げ観測が後退。利上げを見送ったことで、現行水準(155円水準)の容認と捉える向きもあり、円安が一段と加速した。これまでの「円安=日本株高」という構図も崩れ始めており、日本経済の柱である自動車関連業界なども見かけの売り上げが伸びても、原材料高で利益は減少している実態に焦点が集まり始めている。
投機玉に円売り余力
足元のCTFC建玉明細での大口投機玉は、円買いポジション(ほぼ売り買いフラット状態)となっており、投機的な円売り余力のある状況だ。新NISAの外国株買いに伴うドル買いや、いわゆる「デジタル赤字」が円売り要因で、日本の稼ぐ力が落ち込んでいる。更に、円安の根本原因は、日銀が長らく続けてきたゼロ金利政策や、異次元緩和と称し、日本円を刷り続けたのが主因だ。「痛みを伴う」金融正常化ができないなら、160円を明確に突破してくると、ドル円の歴史的な位相が大きく変化する(悪い円安開始)と、捉える向きも増えそうだ。過去の歴史が物語るように、財務上の問題を抱える国の通貨は、いずれ加速度的に売られる。ドル円のレンジが140-160円内でとどまるのか、150円水準が下値支持に変化してレンジアップしていくのかは、1月の日銀金融政策決定会合での姿勢と、トランプ新政権の通貨政策次第だ。1月早々に、本邦当局が止めれない円安が来るのか否か、大きな山場を迎える。米国が政権移行期にある中、介入は日米当局間の意思疎通が難しい状況。
一方、イエレン財務長官は、1月14~23日にも新たな債務上限に達すると米議会の与野党指導部に警告する書簡を送っている。雇用統計が強気となれば、ドル買いが強まりそうであるものの、トランプ新政権での通貨政策を見極めようとする動きも出てきそうだ。
欧州リスク
ユーロが崩れており、政治経済共に悪化傾向の強い欧州リスクにも注意したい。
金:2025年も、金を買う理由は多い
【今週見通し・戦略】
米連邦公開市場委員会(FOMC)で事前予想通り、0.25%の利下げが決定されたが、同時に公表した経済見通しは2025年の利下げ回数が2回となり、9月の前回見通しの半分になった。
インフレ見通しが上方修正され、米長期金利が5月下旬以来の高水準を付け、ドル高を受けNY金は調整継続なったが、米個人消費支出(PCE)価格指数の伸び鈍化で下げ一服。
年末年始のNY金相場は、トランプ次期政権による移民取り締まり強化や関税引き上げ、減税などがインフレ再燃と財政赤字拡大につながる可能性が意識され、米金利先高観が強まっている中、ポジション調整の売りが出たが、2024年11月14日の安値は維持された。2024年2月安値を起点とした上昇チャネルも継続している。
トランプ次期米大統領とイランの対立リスクは安全資産である金の買い手がかり。イランは核兵器の獲得に向けて核開発を続けているため、イスラエルや米国によるイラン攻撃が警戒されている。米アクシオスの報道によると、バイデン政権は、次期大統領の就任式までにイランが核兵器の保有に近づくなら、イランの核開発施設を攻撃する計画について協議した模様。
円建て金の優位性
トランプ政権への先行き不安、ロシアーウクライナ、イスラエルーハマスなどの地政学的リスク、日米欧の債務問題、G7以外の中央銀行の買いなど、金を買う材料は今年も多い。
トランプリスク
2024年は円安ドル高が進んだことで、円建て金は、2024年10月高値を起点とした下降トレンドを上抜いてきた。価格帯別出来高の厚い12500円水準が下値支持帯して意識されている。仮に、悪い円安が加速していった場合、円建て金を保有するメリットは大きい。内外共に押し目買いスタンスを継続したい。
【主要国公定金利】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。