金:長期的な資金流入継続|【Weekly Report】週間予定
2024年12月9日
週間展望(12/9~12/15)
このページで知れること(目次)
週間予定:米CPI・PPI、ECB理事会
前週:OECD経済見通し
ドル円:日米金利差動向に市場の関心
金:長期的な資金流入継続
【米雇用統計】
【CME FED WATCH】
金ETF
週間予定:米CPI・PPI、ECB理事会
・中国米消費者物価指数(CPI)・中国・中央経済工作会議
11日から中央政治局会議も開催 大規模支援策に期待
・米消費者物価指数(CPI)・米卸売物価指数(PPI)
FRBの利下げペースの重要な判断材料。
前月比+0.3%、前年比+2.7%と10月の+0.2%、+2.6%から共に伸びが少し強まる見込み。
コア指数は前月比+0.3%、前年比+3.3%と10月と同水準の伸び予想。
・ECB理事会、カナダ中銀、スイス中銀 総じて追加利下げの見通し
・豪中銀政策金利 30年ぶり(パンデミック除く)低成長受けブロック総裁が「ハト派」に転じる可能性
・日銀短観 最もハト派の中村日銀委員「利上げ反対しているわけではない、短観などデータ見て政策判断」
・FRBブラックアウト期間入り(金融政策に関する発言自粛)(~19日)
前週:OECD経済見通し
【OECD経済見通し】
12月4日、OECD経済見通し(24年12月見通し)が公表された。
世界全体の成長率見通しは、24年は+3.2%で前回(9月)見通しから修正なし、25年は+3.3%と前回見通しから+0.1%pt上方修正された。米国については「最近の移民流入が経済の生産能力を拡大したことを一部反映。労働力人口の増加が鈍化するにつれ、個人消費のペースは緩やかになる見通し。」
日本は24年の成長率が下方修正されたが、25年は上方修正。日本については「実質賃金の増加、利益の急速な成長、および財政補助金が個人消費と投資を押し上げ、2025年には1.5%と急激な成長回復を遂げると予想。
ユーロ圏は24年の成長率が小幅に上方修正された。ユーロ圏経済については「政策金利の引き下げと復興・強靭化ファシリティ資金の継続的な支出が投資を支え、労働市場の逼迫とさらなるディスインフレが民間消費の成長を後押しする。しかし、より緊縮的な財政スタンスへの移行により、一部の加盟国では成長が鈍化する」とされた。
中国は25年の成長率が小幅に上方修正された。中国経済については「消費の伸びは安定するものの、依然として高い予防的貯蓄と不動産市場の低迷が続き、インフレは低水準にとどまるだろう」と予想。
ドル円:日米金利差動向に市場の関心
【今週見通し・戦略】
11月の東京都区部消費者物価指数が、前年比+2.2%となり、市場予想の+2.1%を上回ったことを受けて、12月の日銀金融政策決定会合での利上げ観測が高まり、ドル円は149円台半ばまで円高が進んだ。更に、仏政局不安でユーロ円が下落すると、ドル円も続落。韓国で大統領が非常戒厳が宣布され、リスク回避の円高となり、148.60台まで円高が進行した。独仏の政情不安から今週のECB理事会を巡り、大幅利下げに踏み切るとの観測も一部で浮上している。
4日には「日銀が年内の会合で利上げを見送る」との報道を受けて、90日移動平均線で下支えられた格好となり、151円台前半まで戻したものの、200日移動平均線が上値抵抗として機能中。
その後、11月の米ADP雇用報告や11月の米ISM非製造業景況指数が市場予想を下回ったことで、上値を抑えられた。その後、パウエルFRB議長が利下げを急ぐ必要がないとの認識を示したことで、下値を支えられ、狭いレンジ入り。
5日午前に中村日銀審議委員が「まだ賃上げの持続性に自信を持てていない」などと発言すると、円が売られる場面があったものの、午後に中村日銀審議委員が「利上げに反対しているわけではない」と発言すると円買いが入るなど、日米金利差の方向に関心が向いている状況。
雇用統計
11月の雇用統計では非農業部門の雇用者数が前月比22万7000人増と、市場予想(21万4000人増)以上に伸びた。平均時給も市場予想を小幅に上回った。一方、失業率は上昇。米短期金利先物市場では、12月FOMCで0.25%の利下げを決めるとの予想確率が8割超に上昇。一方、ミシガン大学米消費者態度指数速報値が市場予想を上回り、8カ月ぶりの高水準となった。11月の米消費者物価指数(CPI)と米卸売物価指数(PPI)など物価指標を見極めたい向きが多く、狭いレンジ相場が継続。日米欧の金融政策決定会合を睨みながら90日移動平均線~200日移動平均線のレンジ放れ待ち。
金:長期的な資金流入継続
【今週見通し・戦略】
金相場は調整入りとなっている。
地政学リスクの一服に加え、暗号資産ビットコインなど、トランプ政権下で、規制が大幅に緩和するとの思惑から、「資金が金からシフトする」との観測も金の上値を抑えている。ビットコインの価格が史上初めて10万ドルを突破した。昨年末から2.5倍になり、世界中のあらゆる資産のなかでも高いパフォーマンスを示している。
ただし、暗号資産の新高値更新は、規制緩和期待だけでなく、米国の膨張する政府債務に対する懸念も一因。米連邦債務は、この10年間で倍増している。超党派の「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」はトランプ氏が掲げる減税策が財政悪化を加速させると予測している。次期政権の下で、米財政の悪化が止まらないのであれば、米ドルの信認が揺らぐことになる。
トランプ次期米大統領は11月30日、自身のSNSに「BRICSの新通貨をつくらず、強大なドルに代わるほかの通貨を支持しないと約束するよう要求する。さもなくば100%の関税に直面し、素晴らしい米経済に別れを告げることになるだろう」と投稿した。トランプ次期大統領がここまで言わなければならないほど、基軸通貨としての地位が揺らいでいる証左で、これは金にとっては強気要因。暗号通貨と共に相関の高い動きが基本。いずれかの値動きに過熱感が高まれば、逆相関となるような展開が予想される。
WGCによると、7~9月の投資需要が364.1トンと前年64.1トンと前年同期比2.3倍に膨らんだ。歴史的高値が続く中、相場を牽引するのは長期マネーの流入。スポット価格は、1979年以来最も高い年間上昇率となった。
水星逆行期入り
マーケット・アストロロージ(占星術)では、今年最後の水星逆行サイクルが11月25日から始まっている(~12月15日)。15日が満月。メリマンの重要変化日(12月15日~18日)に向けて、テクニカル的な売りから押し目形成場面が出れば、買い場となりそうだ。各地での地政学リスクも燻っている。
【米雇用統計】
【CME FED WATCH】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。