金:内外共に史上最高値更中|【Weekly Report】週間予定
2024年11月5日
週間展望(11/4~11/10)
このページで知れること(目次)
週間予定:米大統領選挙、全人代、FOMC
前週:衆院選挙、15年振り与党過半数割れ
ドル円:米長期金利とドルに上昇圧力が掛かりやすい地合い
金:内外共に史上最高値更中
【米雇用統計】
【中国製造業PMI】
金ETF
週間予定:米大統領選挙、全人代、FOMC
・日銀9月議事録 同会合では植田日銀総裁が政策判断「時間的余裕ある」発言で円安が進んだ
・米大統領選挙 トランプ氏とハリス氏の支持率は拮抗
・FOMC 25bp利下げ観測高まるも一部で利下げ見送りを予想、
・英中銀政策金利 25bp利下げとの見方、インフレ伸び鈍化にベイリー総裁「もう少し積極的」発言
・日本9月実質賃金 前回は3カ月ぶりにマイナス、-0.6%から-0.8%に下方修正される
・中国全人代常務委員会開催 さらなる刺激策が期待される
FRBブラックアウト期間(金融政策に関する発言自粛)(~11月8日)
米国市場は冬時間に移行(※経済指標発表が1時間遅くなる)
前週:衆院選挙、15年振り与党過半数割れ
【衆院選挙】
衆院選挙は与党(自民、公明両党)が合わせて215議席にとどまり、定数165の過半数(233以上)に届かなかった。自公の過半数割れは旧民主党政権が誕生した2009年以来、15年ぶり。
日本国憲法は、総選挙から30日以内に国会を召集し、首班指名を行うと定めている。今回は11月26日までが期限で、特別国会の召集は11月11日予定。この特別国会で現在の石破内閣は総辞職し、新たに選ばれた議員で構成する衆院と参院が次の首相を指名する。
石破首相が再任されれば第2次石破内閣の発足となるが、指名されず交代になれば戦後最短になる。
今後の焦点は、日本維新の会や国民民主党が、自民党につくか、それとも立憲民主につくかである。両党の代表は、選挙前から、自民中心の連立政権に加わる可能性について否定しており、選挙後も同様の立場を示している。
一方、両党の代表は、立憲民主党との連立についても、政策の違いから否定的な立場を示しており、自公に部分的に協力するとの観測が有力。
いずれにしろ、基盤の弱い政権となるため、財政政策については、膨張圧力が強まることになると見られる。主要野党の中でも、最も積極財政を訴えている国民民主党が一定の協力をすることになると、補正予算の規模が一段と膨らむ可能性は高まる。
戦後の歴代首相の在任期間と日経平均の当落の関係を見ると、短命政権時には弱い相場付きが確認できる。
ドル円:米長期金利とドルに上昇圧力が掛かりやすい地合い
【今週見通し・戦略】
27日の衆院選で自公の過半数割れとなったことで、政局の不透明感から円売りの動きで始まり、米大統領選後にインフレや米財政悪化のリスクが高まることに備えた米国債売りに伴う米金利上昇・ドル買いが続いた。2年債や5年債の入札が低調だったことも米長期金利の先高観につながった。
10月のADP全米雇用リポートでは、非農業部門の雇用者数の前月比の増加幅が市場予想を上回った。米労働市場が底堅いとの見方が改めて広がり、米長期金利が上昇した。ただし、2024年7~9月期の米実質国内総生産(GDP)速報値は市場予想に届かず、上値が抑えられた。
日銀金融政策決定会合で日銀は政策金利の据え置きを決めた。会合後の記者会見で植田和男総裁が政策判断を巡り、これまでの「時間的な余裕がある」との表現を使わなかった。早期に追加利上げする可能性が意識され、幅広い通貨に対して円が買われ、ドル円は200日移動平均線を割り込んだ。
10月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数が前月比1万2000人増と、市場予想(10万人増)を大幅に下回り、ドル売りが強まったが、ハリケーンやストライキなどの一時的な影響が大きいとみなされ、雇用統計を手がかりとした円買い・ドル売りは続かなかった。
米長期金利は4.38%と約4ヶ月ぶりの高水準で終えた。米大統領・議会選で大統領と上下両院の多数派が共和党になり、米財政が大幅に悪化するリスクが意識され、米国債売りとドル買いを誘った。ハリス副大統領が選ばれた場合でも米財政赤字は拡大が見込まれており、米長期金利とドルに上昇圧力が掛かりやすい地合いとなっている。
米大統領選挙が焦点
大統領選は接戦が予想され、結果判明に時間がかかる事態も想定され、政治不透明感から幅広い通貨に対してドルを買う動きもあった。今週は、大統領選挙の結果がすんなり判明するか否かが焦点。
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【今週見通し・戦略】
内外共に金相場が高値更新となった。国内で小売価格が1グラム1万5000円を超え、NY金価格は、米金利上昇にもかかわらず、2800ドルの大台を突破した。今回の値位置を大きく変えて上昇している背景は、大きなテーマとして「米国の覇権・基軸通貨ドルの揺らぎ」が根底にある。
地政学リスクは燻っているものの、イラン・イスラエルの報復合戦は一服の兆しがある中、足元で金が大幅続伸を続けているのは、米大統領選挙後の波乱に備えての動きであろう。ただし、テクニカル的には、52週移動平均線との乖離率などを見る限り、いつ修正安となってもおかしくない状況で、短期的な過熱感は否めない。
今後の金相場のシナリオだが、米大統領選挙の結果如何で、利食いが先行するのか、踏み上げ相場へ突き進むかが決まりそうだ。
米大統領選挙次第
①米大統領選挙で、すんなり勝敗決定。
⇒金相場は、リスクプレミアムが剥げ落ちる格好で調整安。金安・株高。
②米大統領選挙で、すぐに決着付かず。
⇒再集計や下院投票へもつれ込み、金相場は高値圏で推移。株安・金高。
③トランプ敗北で、内乱。
⇒株価下落に追随して、金相場も株価の損失補填的に売られるが、短期間に押し目を買われて急騰。株安・金高。
新大統領が決まった段階で、「安全資産」としての上値は一旦、抑えられそうだが、米国の分断、国際秩序の再編過程において、金への資金シフトの流れは継続見通し。
【米雇用統計】
【中国製造業PMI】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。