金:内外共に史上最高値更新を試す流れ③|【Weekly Report】週間予定
2024年10月28日
週間展望(10/28~11/3)
このページで知れること(目次)
週間予定:米GDP、PCE価格指数、ISM製造業景気指数、雇用統計
前週:激戦州でトランプ氏優勢に
ドル円:200日移動平均線の攻防戦
金:内外共に史上最高値更新を試す流れ
【ミシガン大学消費者信頼感指数】
【独IFO景況感指数】
金ETF
週間予定:米GDP、PCE価格指数、ISM製造業景気指数、雇用統計
・米GDP速報値、PCE価格指数、ISM製造業景気指数、製造業PMI確報値 雇用統計
・日銀金融政策決定会合 展望リポートで近い将来の利上げ示唆されるか注目
・豪消費者物価指数 21年以降初めて中銀目標範囲に低下する
・ユーロ圏消費者物価指数とGDP速報値 ラガルドECB総裁はインフレ2%下回る減速「大変満足」とコメント
・中国製造業PMI、大型連休の影響で活動は縮小した可能性
・米雇用統計 前回は雇用者数の伸びが事前予想を上回り、失業率は予想外に低下 ドル円は急騰
・英国と欧州市場は冬時間に移行(※経済指標発表が1時間遅くなる)
・中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会開催予定(10月末)
・EUが中国電気自動車に最大45%関税発効予定(10月末)
前週:激戦州でトランプ氏優勢に
【トランプ氏優勢】
バイデン大統領が選挙戦を辞退し、カマラ・ハリスが民主党大会で選出され、トランプ候補とのTV討論会(ABCニュース)で優勢が伝えられてきたが、ここにきてハネムーン期間も終了し、NBCが実施した世論調査(10/4-8)では、48%のイーブンとなった。
これまで、リベラル派メディア報道は、トランプ不利が報じられる傾向があったが、今回のNBCの世論調査は、リベラル派にとっては衝撃だったかもしれない。世論調査よりも実態を表すと言われる大統領選挙の賭けオッズでは、既にトランプ優勢が顕著になっている。
第二回TV討論会直後は、ハリス銘柄が優勢であったものの、足元では、ハリス銘柄はマイナスサイド、トランプ銘柄はプラスサイドに振れている。マーケットでもトランプ勝利を織り込み始めている格好だ。
トランプ候補が勝利なら大きな波乱はないと見るが、このままトランプ候補優勢が伝えられる中、前回と同様に、接戦州での郵便投票の開票で一気に逆転のような事態となれば、どちらの陣営も「敗北宣言」を出さず、大混迷・大波乱となる可能性が残ったままだ。
どちらも過半数を獲得できない可能性も潜んでいる。過半数を獲得する候補者がいない場合、修正第12条が適用され、「臨時選挙」が行われる。大統領を下院が、副大統領を上院が決定する。下院が大統領を選出したのは、1824年大統領選挙の時で、200年振りの非常事態が適用される可能性もある状況だ。
ドル円:200日移動平均線の攻防戦
【今週見通し・戦略】
強気の米経済指標が相次ぎ米長期金利が上昇し、日米金利差の拡大観測から円売り・ドル買いが優勢になった。米リベラルメディアにおいても米大統領選激戦7州ではトランプ候補優位との報道が広がっており、トランプ氏再選となれば、輸入関税の強化などからインフレ圧力の高まりにつながるとの見方がドル高の一因となった。
一方、加藤勝信財務相は米東部時間23日夜、円安進行について「足元では一方的、急速な動きがみられる。投機的な動向を含め、緊張感をさらに高めて注視したい」と述べた。日銀の植田和男総裁は24日の記者会見で、追加利上げの判断において「一応、時間的な余裕はあると考えている」と述べるなど本邦当局の牽制もあり、ドル円の上値は抑えられた。
27日の衆院選で自公の過半数割れの可能性を示唆する報道が相次ぎ、政局リスクの行方を見極めようと、200日移動平均線を挟んだ様子見ムードとなっている。
まずは、週前半は衆院選挙の織り込み、後半は雇用統計を睨みながら、米大統領選挙待ちとなりそう。9月米雇用動態調査(JOLTS)求人件数の予想は、793.5万件と前回(804万件)から小幅低下。10月の米コンファレンスボード消費者信頼感指数の予想は、99.3と前回(98.7)から小幅改善見込み。30日発表のADP雇用者数の予想は前月比+11.0万人と前回の+14.3万人から伸びが鈍化する見込み。今回の非農業部門雇用者数の予想が+11.0万人と伸びが鈍化する見込み。失業率は4.1%で維持見通し。
グランビルの法則
200日移動平均線~2022年10月高値(介入直前に付けた151.94円)水準での本邦当局の介入姿勢に注意したい。
テクニカル的には、52週移動平均線や200日移動平均線を維持してくると、グランビルの買い法則が意識される一方、維持できずに割り込み、移動平均線が下向きに変化してくると、グランビルの売り法則が意識される。
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【今週見通し・戦略】
相次ぐ強気の米マクロ経済指標もあり、米金利上昇が続いているが、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しに変わりはなく、金の調整は限定的となっている。
これは、現在の金相場が金利面だけを見て、変動しているのではなく、米大統領選挙後を見据えて動いているからだろう。
米大統領選の投票日まで残り10日。政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RCP)」による各種世論調査の集計(25日正午時点)で、民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領の全米支持率が48.5%で並んだ。
激戦7州ではトランプ氏が僅差でリードしており、世論調査よりも実態を表すと言われる大統領選挙の賭けオッズでは、既にトランプ優勢が顕著になっている。
米債務悪化継続
トランプ候補が当選すれば、財政赤字拡大と物価上昇を招くとの見方からNY金の売り要因であるドル高が進んでいるが、いずれが大統領になっても財政赤字は歴史的な高水準になると予想されていることで、反対に金の買い材料となっている。
トランプ候補優勢が伝えられる中、前回の大統領選挙と同様に、接戦州での郵便投票の開票で一気に逆転のような事態となれば、どちらの陣営も「敗北宣言」を出さず、接戦州での再集計や、各州都での12月の選挙人投票、2025年1月の議会での確定が大荒れする可能性も高いままだ。選挙後の大統領の正統性にも疑問が付けられるだろう。国民の分断にも拍車がかかり、米国の覇権・ドルの基軸通貨体制は大きく揺らぐ。金の買いは続く。
【ミシガン大学消費者信頼感指数】
【独IFO景況感指数】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。