金:内外共に史上最高値更新を試す流れ②|【Weekly Report】週間予定 | 【公式】日産証券の金投資コラム

金:内外共に史上最高値更新を試す流れ②|【Weekly Report】週間予定

NSトレーディング 菊川弘之
2024年10月21日

週間展望(10/21~10/27)

週間予定:米雇用統計・米大統領選挙副大統領候補TV討論会

【週間スケジュール(10月21日~10月27日)】

・カナダ中銀 4会合連続利下げへ、50bp予想多数


・ECB当局者が相次いで講演、23日にラガルド総裁がIMF世銀年次総会で欧州経済について講演


・ベイリー英中銀総裁の講演 9月CPIは3年ぶりに2%下回った、金融政策について言及するかが注目


・FRBブラックアウト期間 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ローガン・ダラス連銀総裁、シュミッド・カンザスシティ連銀総裁、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁。ハマック・クリーブランド連銀総裁が発言予定。

・G20財務相会談 加藤財務大臣出席



前週:金価格急騰

【史上最高値更新】

JPX金(月足)

NY金(月足)

利下げ局面でのNY金

社会の分断・2極化が深刻化する米国崩壊を描いた映画「CIVIL WAR アメリカ最後の日」の中で、「What kind of American are you?(どういうアメリカ人だ?)」との詰問や、「ガソリンスタンドで米ドル支払いは断られ、カナダドルならOK」という場面は、米国の分断・ドルの先行きを暗示しているものだ。かつて、「自由と民主主義」の旗手であった米国は、世界の警察官の立場を自ら放棄し、覇権国・基軸通貨国の地位は、大きく揺らいでいる。

米金利引き下げ開始が金上昇のきっかけとなったが、大幅利下げ観測後退にも関わらず、内外共に史上最高値を更新しているのは、大きなテーマで、金が買われているためだ。米大統領選挙では、両候補のいずれが勝利しても、米財政赤字は拡大する見通しだ。第二次世界大戦時の債務を超える規模となり、米国覇権・基軸通貨ドルの揺らぎは確実に振幅が大きくなっていく。


過去、金価格が急騰した際、2年間で4倍(1972~74年と1978~80年)、3年間で2倍(2008~11年)に急騰した。2~3年保有するつもりなら、金価格がここから2倍の4000ドル以上に上昇を予測したとしても何ら不思議ではない。

バンク・オブ・アメリカは3000ドルになると予想しており、UBSは、4000ドルに達する可能性を指摘している。金の上昇は、始まったばかりだ。



ドル円:ブラックアウト期間入り

【今週見通し・戦略】

ドル円(日足)

先週は、9月の米小売売上高が市場予想を上回って個人消費の堅調さを示したことや10月のフィラデルフィア連銀景況指数が予想を大きく上回ったこと、さらに米新規失業保険申請件数が予想を下回るなど強い経済指標が相次いだことで心理的節目150円を超えてきたものの、三村財務官が為替相場に関して「足元ではやや一方向な、あるいは急速な動きもみられる」、「投機的な動きも含め為替市場の動向を高い緊張感を持って注視していきたい」などと発言。口先介入・円安けん制と受け止められ、上値が抑えられた。週末を控えて実質的な五・十日となり、仲値にかけては「国内輸出企業のドル売り・円買いが多かったことも一因。

200日移動平均線が上値抵抗

200日移動平均線~2022年10月高値(介入直前に付けた151.94円)が上値抵抗として機能している。同水準での本邦当局の介入姿勢にも注意したい。衆院選を控え、介入実施で円高に振れて株価が下落すると選挙戦に影響しかねず、動きづらい時間帯ではある。


ただし、日銀が追加利上げに踏み切り、FRBも利下げサイクルに入った中、日米金利差が徐々に縮小していくという流れは変わらず、ドル円の上値は限定的。日米ともに選挙(衆院選挙・大統領選挙)を控えて、徐々に上値も下値も限定的な様子見ムードが高まりそうだ。CME FEDウォッチによると、11月と12月のFOMCでの0.25%ずつの利下げが織り込まれている。26日から11月のFOMCを前にしたブラックアウト期間に入るため、今週の当局者発言が注目される。21日にカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ローガン・ダラス連銀総裁、シュミッド・カンザスシティ連銀総裁、22日にはハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、23日にバーキン・リッチモンド連銀総裁。24日にハマック・クリーブランド連銀総裁が発言予定となっている。


17日の欧州中央銀行(ECB)理事会では市場予想通りに0.25%の利下げを決定。ユーロ売り・ドル買いの動きが、止まるのか否かも、ドル円に影響を与える。



金:内外共に史上最高値更新を試す流れ/h2>

【今週見通し・戦略】

NY金(12月限)

JPX金(日足)

中国の不動産市場支援の記者会見で失望感が出たことや、欧州中央銀行(ECB)が17日、0.25%の追加利下げを決めたことによるユーロ売り・ドル買いから上げ一服となる場面もあったが、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しに変わりはなく、押し目を買われ史上最高値を更新。ゴールドマンサックスが4月に予想した2700ドルを上抜いてきた。CMEフェドウォッチでは、11月と12月の25ベーシスポイント(BP)利下げが見込まれている。


米輸入物価指数は2ヶ月続けて下落し、前月比の下落率は0.4%と市場予想(0.3%)以上だった。輸出物価も下げ、物価上昇圧力の減退を示したとの受け止めや、イスラエルがイランへの報復で石油施設を攻撃するとの警戒感が後退。イスラエルのネタニヤフ首相は、イランの軍事施設を標的に攻撃を実施し、核や石油関連施設は標的にしない意向を米国に伝達した。原油高による物価上昇リスクが薄れた事は、米金利低下要因・NY金の買い要因となった。

中央銀行の買い継続

「自由と民主主義」の旗手であった米国は、世界の警察官の立場を自ら放棄し、覇権国・基軸通貨国の地位は、大きく揺らいでいる。11月の米大統領選挙では、拮抗した2つの民主主義(左派・右派)が激突し、双方がすんなり「敗北宣言」を出さず、再集計や、各州都での12月の選挙人投票、2025年1月の議会での確定が大荒れする可能性も高い。


2024年上半期の中央銀行による金の純購入量は、2023年上半期の記録を上回り、過去最高を更新した。中東の地政学リスクの高まりや、米大統領選挙の不透明感などからG7以外各国中央銀行の買いは、続きそうだ。内外共に「買えない相場は高い」を地で行く展開だ。安易な値頃感は持たず、資産の何割かは値段に関係なく、金(現物)を保有する戦略を継続したい。



【米フィラデルフィア連銀景況感指数】

米国 フィラデルフィア連銀業況指数



【中国GDP】

中国 実質GDP成長率四半期推移(前年比)



金ETF

金ETF買い残高(SPDR GOLD SHARES)

この記事の監修者

菊川弘之

東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社

日産証券インベストメント株式会社

取締役 菊川 弘之

NY大学留学。その間GelberGroup社、FutureTruth社などでトレーニーを経験。
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。

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