金:米利下げ開始は、金本格上昇の始まり③|【Weekly Report】週間予定
2024年9月30日
週間展望(9/30~10/6)
このページで知れること(目次)
週間予定:米雇用統計・米大統領選挙副大統領候補TV討論会
前週:自民党総裁選挙
ドル円:石破ショック
金:米利下げ開始は、金本格上昇の始まり
【米新規失業保険申請件数】
【米GDP】
金ETF
週間予定:米雇用統計・米大統領選挙副大統領候補TV討論会
・パウエルFRB議長が全米企業エコノミスト協会(NABE)で講演
・ラガルドECB総裁が欧州議会に出席
・中国は国慶節大型連休
・9月中国製造業PMI
・副大統領候補同士のテレビ討論会(NY)(日本時間では翌10月2日午前10時から)
・日銀9月主な意見、同会合では植田日銀総裁が政策判断「時間的余裕ある」との見解示し円安が進んだ
・9月米雇用統計 FRBは政策の焦点をインフレから雇用に移す 内容次第で次回会合50bp観測高まるか
・野口日銀審議委員(最もハト派)の講演、7月会合では追加利上げに反対した1人(もう1人は中村氏)
前週:自民党総裁選挙
【自民党総裁選挙】
自民党総裁選は5度目の挑戦だった石破茂元幹事長が勝った。
衆院解散総選挙は、「10月15日公示、27日投開票」。予算委員会などの論戦に応じれば、「10月29日公示、11月10日投開票」などが想定されている。
石破氏が総裁選で打ち出した主な政策は以下の通り。
「地方創生」:日本経済の起爆剤とし、デジタル化により都市との情報格差を解消し、地方に人材を確保。
「外交・安全保障」:自衛権のあり方などを規定する「安全保障基本法」の制定。
「政治とカネ」:政治資金をチェックする第三者機関の立ち上げ。
「経済・財政」:デフレからの脱却。サプライチェーンの国内整備、スタートアップ企業への支援策や投資促進のための税制改革。
「社会保障・人口減少対策」:高齢者や女性、障害者や外国人の就労を促進。子育て支援策は「手当より無償化」。
「災害対策」:防災庁を創設し、専任の閣僚を置いた上で防災省への昇格。
「憲法改正」:9条への自衛隊明記を中心に憲法改正の議論を促進し、総理大臣在任中の発議を実現。
ドル円:石破ショック
【今週見通し・戦略】
米連邦公開市場委員会(FOMC)、英中銀金融政策会合(MPC)、日銀金融政策決定会合と、重要銀行によるイベントを通過した中、9月のフランス、ドイツ、ユーロ圏などの製造業やサービス業のPMI速報値が市場予想や前回値を下回る弱い結果となったことでユーロ売り・ドル買いとなった。
24日には日銀の植田総裁は講演して、「政策判断にあたり時間的な余裕がある」と早期の利上げに消極姿勢を示した。追加利上げに慎重姿勢を示したことに加え、25日から26日にかけては米長期金利の上昇などを背景にドル買いの動きとなってた。
高市トレードの巻き戻し
26日には米第2四半期GDP確報値、米新規失業保険申請件数が良好だったことや、27日には自民党総裁選で麻生派が一回目の投票から高市氏支持との報道もあり、いわゆる「高市トレード」から株高・ドル高が加速。
ただし、決選投票で、アベノミクスの大規模金融緩和に批判的なことで知られ、「金融所得課税の強化」を打ち出していた石破元幹事長が勝利したことを受けて、ドル円は146円台から142円近くまで急激な円高が進行し日経平均先物は時間外取引で2000円超の急落となるなど大荒れの動きとなった。
国内の債券市場では石破茂氏が新総裁に選出されたことで、日銀が年内に追加利上げに動くとの見方が強まり、翌日物金利スワップ(OIS)市場が織り込む年内の利上げ確率は、石破氏が選出される前の2割から足元で3割に上昇。
140円の攻防戦
週末には雇用統計が控えており、日米金利差縮小観測が高まれば、支持線の140円割れも要想定。その場合は、これまでの140-150円のレンジ相場が、5円程度切り下がる可能性。
金:米利下げ開始は、金本格上昇の始まり
【今週見通し・戦略】
8月のジャクソンホール会合でのFRB議長講演で、「政策を調整する時が来た。」発言を受けて、NY金(12月限)がレンジをブレイクしたことに続き、JPX金は、三角保合いを上放れ、上げ加速となった。
三角保合い上放れ
10連続陽線で短期的な買われ過ぎ感も出てくる中、自民党総裁選挙決選投票で、アベノミクスの大規模金融緩和に批判的なことで知られ、「金融所得課税の強化」を打ち出していた石破元幹事長が勝利したことを受けて、ドル円は146円台から142円近くまで急激な円高が進行したことで、時間外取引でJPX金は急反落となった。
ただし、石破政権も衆院選挙を控え、株安を招く施策を急ぐ可能性は低く、円高で反応した後は、時間差でマザーマーケットのNY金高に追随していく流れとなるだろう。石破氏は、「必要であれば財政出動することは当然だ」・「金融緩和基調は変えることはしない」とTV東京(WBS)で述べている。
今回の米利下げへの転換は、金相場本格上昇の「始まりの始まり」となるだろう。米利下げから3ヶ月後・半年後・1年後の期間で、いずれも円建て金はNYダウやドル建て金よりも大きく上昇している(8/5付レポート「雇用統計を受けた金相場見通し」参照)。
地政学リスク
イスラエル軍がレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの指導者ナスララ師の殺害を確認したことで、中東の地政学リスクが高まりそうなことも、金の支持要因。米大統領選挙の不透明感もあり、内外共に金の押し目買い基調に変化はない。円高でドル建て以上に円建て金が下がった局面は、良い買い場となるだろう。
【米新規失業保険申請件数】
【米GDP】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。