金:リスク回避で売られるも、押し目買い強い②|【Weekly Report】週間予定
2024年8月13日
週間展望(8/12~8/18)
このページで知れること(目次)
週間予定:日本GDP・米消費者物価指数
前週:最大の下げ幅・最大の上げ幅
ドル円:円キャリートレードの巻き戻し、一服
金:リスク回避で売られるも、押し目買い強い
【中国CPI・PPI】
【米新規失業保険申請件数】
金ETF
週間予定:日本GDP・米消費者物価指数
・日本GDP 賃上げ・定額減税、自動車生産一部再開受けプラス成長転換へ
・米消費者物価指数・小売売上高 CPI前月比では再びプラスに、コア前年比は伸びがやや鈍化する見通し
・中国7月新築・中古住宅価格と不動産投資 相次ぐ支援策受けてもなお回復ペースは鈍い
・NZ政策金利 インフレ伸び鈍化に失業率上昇・賃金伸び低調受け一部で利下げ予想広がる
・豪雇用統計・賃金指数 強い内容となれば利下げますます遠のくか、豪中銀はタカ派姿勢堅持
・株価乱高下受け8月中に閉会中審査開催、植田日銀総裁や鈴木財務相出席する方向で調整中
・南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」受け、岸田首相の中央アジア訪問中止
前週:最大の下げ幅・最大の上げ幅
【ボラティリティ大】
8月5日の日経平均株価は急落し、前週末比4,451.28円(12.4%)安の31,458.42円で終了。売りが売りを呼ぶパニック的な動きとなった。下落幅は1987年10月20日の3,836.48円(ブラックマンデー翌日)を超え、過去最大となった。
一方、6日は、日経平均は前日比3,217.04円(10.2%)高34,675.46円となり、過去最大の上げ幅を記録した。
大阪取引所に上場する日経平均先物は大幅な値上がりを受け、午前8時45分の取引開始直後に「サーキットブレーカー」が実施された。比較可能な11年以降で、日経平均先物の上限でサーキットブレーカーが発動したのは今回が初めてとなる。
市場全体の売買代金合計額に占める海外投資家のシェアは、2023年通年で、現物取引(東京および名古屋証券取引所合計)のシェアは約60%、金額は約1199兆円。先物取引(日経225先物、日経225mini、日経225マイクロ先物、TOPIX先物、ミニTOPIX先物の合計)ではシェアが約75%で、金額は2887兆円に達している。
今回の歴史的な下げは海外投機筋が、まず225先物を売り、裁定買い取引の解消や、個人投資家の信用買い残高(7月下旬で約18年ぶりの高水準)の整理を巻き込み、現物売りを誘発。下げ幅が急拡大したと見られるが、相場格言「投げたら終い」通り、本日の急反発に繋がった。多くの投資家が現物を売った後のため、戻り売り圧力は鈍い中、海外投機筋の利益確定の買い戻しや押し目買い主導で、上昇幅の急拡大となった。
ドル円:円キャリートレードの巻き戻し、一服
【今週見通し・戦略】
7月の米雇用統計が市場予想を下回り、米景気後退懸念が更に強まり、200日移動平均線~支持線の152円割れから下げ加速。141円台までの大幅続落となった。年初からの上昇をほぼ全値戻した(往って来い)だけでなく、2023年安値を起点とした上昇トレンドも割り込んできた格好だ。足元での急落劇の背景は、円キャリートレードの巻き戻しと見られている。
円キャリー
今回の円キャリー取引(低金利の円を調達し、高金利のドルで運用して金利差収益を得ようとする取引)ブームは、ロシアのウクライナ侵略で、世界的なサプライチェーン(供給網)の混乱が生じ、米国を始めとする先進国のインフレ圧力が高まり、米利上げが長く続いたことが背景。
大きく膨れ上がった円売りポジションが、日米金融政策の転換をきっかけに巻き戻され、リスク資産全般売りに繋がった。
大口投機玉の円売りが今回とほぼ同水準にまで膨らんだ2007年時には、ドル円は124円台からポジション縮小で、107円台まで下落。その後、リーマン・ショックが起きた2008年には87円台まで円高が進んだ。1998年も、活発なキャリー取引を背景に、ドル円は147円台まで上昇していたが、LTCMショックを受けて、113円台まで下落。翌年には101円台を付けた。いずれも数ヶ月~1年ほどで3割程度の円高・ドル安が進んだ。
当時と異なり、直ちに金融ショックが起きる気配はないものの、中東の地政学リスクや米大統領選挙の行方次第で波乱は残る。イランが、ティシュアー・ベ・アーブ期間(8月12~13日)に総攻撃する可能性があるとの報道もある。米大統領選挙の支持率も拮抗しており、予断を許さない。
米金利は頭打ち
4月に米金利が頭打ちし下落していたにも関わらず、ドル円が上昇してのは、円キャリー取引が主因だったものの、これらが一巡したとなれば、米金利が4%割れだった頃の145円を中心とした値位置は、居心地が良い水準かもしれない。
金:リスク回避で売られるも、押し目買い強い
【今週見通し・戦略】
米雇用統計を受けて「サーム・ルール」が発動となり、景気後退局面に入ったのではとの観測がり、売りが売りを呼ぶリスク回避の動きが一気に高まり、金市場も株式市場などの損失補填的な売りに見舞われた。
ただし、既存レポートで『突発的なリスク回避が高まった場合、リスクオン商品と共に金は一時的に売られる場面もありそうだが、下値は限定的で、「安全資産」として再度、買い直されそうだ。~中略。価格帯別出来高の厚い2300~2400ドル台への調整があれば買い主体の戦略を考えたい。』と指摘したように、他のリスク資産と比べて、NY金相場の調整は限定的。心理的節目2400ドル水準で下支えられた。
リーマンショック時も、最初は損失補填売りに株式市場に連れ安となったものの、その後の切り返しは 株式市場と比較して、早く大きかった。今回も同様のパターンとなりそうだ。
9月FOMCでの0.5%利下げ観測に続き、緊急利下げを求める声(ペンシルベニア大学ウォートン校のジェレミー・シーゲル教授)も出る中、米利下げ局面での金相場の優位性(特に円建て金)は、過去の利下げ鏡面でも示されており、これまで通り、金の基本戦略は、「押し目買い」で良いだろう。
報押し目買い基調
一方、JPX金は、急速な円高ドル安にファーストアクションは急落で反応したものの、11000円割れはすかさず買われ、6日には長い下ヒゲを形成した。この下ヒゲ安値が当面の底値候補だ。
日経平均株価指数が、8月5日(月)に歴代最大の下落幅を記録、翌6日(火)には過去最大の上げ幅を記録するなど乱高したのは、円キャリー取引の急速な巻き戻しが一因と見られている。これが一巡したとなれば、円建て金も海外金高に反応しやすい地合いへ戻るだろう。中東の地政学リスクも上値波乱要因。
【中国CPI・PPI】
【米新規失業保険申請件数】
金ETF
この記事の監修者
東証スタンダード市場上場 日産証券グループ株式会社グループ会社
取締役 菊川 弘之
帰国後、商品投資顧問会社でのディーリング部長を経て日産証券主席アナリストに。
2023年4月NSトレーディング代表取締社長に就任。日経CNBC、ストックボイスTV、ラジオ日経はじめ多数のメディアに出演の他、日経新聞にマーケットコメント、時事通信、Yahooファイナンスなどに連載、寄稿中。近年では、中国、台湾、シンガポールなど現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。また、自身のブログ『菊川弘之の月月火水木金金』でも日々のマーケット情報を配合中。